| 凛十は悩んでいた。 スマホのメール送信を押せばいいだけの話なのに、それを躊躇っていた。 恋人の顔を浮かぶと、何だか送りたくなくなるのはおかしいだろうか。まぁ、アイツは普通の人よりおかしいのは確かだ。 失礼だと思うが、事実は事実なのだ。 凛十はじっとスマホを見る。 スマホの画面の右上に時間が表示されていて、新しい1日の始まりになろうとしていた。 後数分で新年になる。だから、もう既にフライイングメールが来ている。「明けましておめでとうございます」だの「今年はよろしくお願いします」だのありきりな文章が並べられていた。いちいち返事するのも面倒だったので、朝になったら送ることに決めている。 あ、12時ぴったりだ と思った瞬間に、ブブブとスマホのバイブが沢山鳴る。うるせー! とか思いつつ、メール一覧を見るとバンドのメンバーのメールが来ていた。 その中にあいつからのメールはなかった。まぁ、あいつの性格を考えると来るはずがない。 「もう送るのやめようかな……というか、恋人だからっていつか別れるかもしれねぇし。今年もよろしくとか言ったら、グチグチ言われるのが嫌だし。あれ、本当に恋人か?」 自分で言っておいて、少し悲しくなった。恋人らしいことをしたといえば、恋人の好きな遊園地に一緒に行ってやったことだ。恋人は本当に遊園地が好きで、特にメリーゴーランドを好んでいた。何回も乗る周を見て、俺はつい笑みをこぼしていた。周はこんな顔が出来るんだなと新しい1面を見られるのが嬉しかった。 とまぁ、彼は通常はツンツンしているので、俺も若いし。いつもぶつかる事が多かった。ぶつかる事も多くて、すれ違いも多かった。俺は別れたいと言ったし、ぶっ殺すも言った。しかし、周は1度もそういう話題を出してこなかった。あの周が。本当に好かれていると気づくには時間がかかったもので、先程俺が言った暴言を思い出すと後悔した。 今でも彼のことは分からない。分からないことが多過ぎる。これからもっと知っていけたらいいなと思うのだが、時間が必要だ。 今までの時の流れを噛み締めていると、スマホが鳴る。 スマホの画面に恋人の名前が出てきて、思わずスマホを投げるところだったがなんとか耐えておそるおそる見る。 「アンタのことだから、ギリギリまでボクにメールを送ろうか悩んでいたでしょ?そんなのお見通し。馬鹿じゃないの?そんなことで悩んで。まぁ、送ったとしても、ボクは絶対に返信しなかっただろうね」 ……何とも可愛げのない文章なんだろう。本当に恋人なのか……? 怒りを通り越して、先行きの不安を覚え始めた凛十は「悩んで悪かったな。明けましておめでとう。今年はどこか行こうな」と簡単な文章で送った。 その数秒後にバイブが鳴り、メールを見ると、凛十はニンマリと笑った。 |