「高杉、神様いると思うか?」

「いないね。てめぇは?」

恋人らしくない恋人は神様について語り合う。
お互い、
闇を見えて、
光を見えて、
一人はただ破壊を求め、憎しみを晴らすことを望んだ。
もう一人は破壊を求め、自分の魂を護ることを望んだ。
似ていないところもあって、似ているところもある恋人は、すり寄っていた。


「んー、いない、かな?よく分かんないや。」

「…………」


真夜中のなか、二人はただ空を見上げていた。
ゆうゆうと流れてゆく雲は、月の明かりのせいで綺麗に映えていた。


「銀時、自分を見失ったらどうする。」


神様をはなから信じなかった子は、神様を見たかった。神様がいるかいないかはどうでも良かった。ただ、俺から大切なものを奪われた憎しみをどうかして欲しかった。
神様って何なんだよ…

神様を理解できない子は、神様を見たくなかった。神様がいるんなら、どうせ、俺達の大切なものを奪わないで欲しかった。憎しみを通り越して、もうどうしたら、分からない。
結局、神様って何なの?


「自分を見失ったら、お前が引き戻してくれるんだろ?」

「はっ、過度な信頼だな。」

「その言葉、ひっくり返すよ。」

「…………だな。俺も銀時と同じ言葉を返していたかもしれねぇ。」


現実はうまく事を運べない。それは当たり前だ。
現実を見くびると痛い目を合う。それは当たり前だ。
神様はいつだって、大事なとこで何にもしてくれない。それは当たり前…?



いつか、俺達の大切な人が言っていた。

『神様は、すぐ近くにいますよ。』

意味不明な言葉に、
神様を信じない子は顔をしかめる。見たいのに、いないじゃないかと。
神様を理解できない子は、目をそらす。神様って結局何者なの?と。

『ふふ、分からないみたいですね。神様と言うとは――――』

途切れた言葉
途切れた笑顔
途切れた記憶
途切れた、何を?
何もかも途切れて、思い出せない。ああ、思い出せないんじゃなくて、思い出せたくないんだ。
だって、俺達は信じていない神様に裏切られたんだから。

「なぁ、苦しくないの?高杉は。」

恋人から問いかけられた問題
戦争で苦しい?
憎しみだらけで苦しい?
心で苦しい?
どんな苦しい?
とっくに苦しんで、慣れてしまった?


「慣れた。」


慣れた?
と俺がオウム返ししたとたんに、涙が出てしまった。
意味不明
緩和涙腺なんてもんじゃない。
涙腺崩壊と言った方がしっくり来る。
ああ、この苦しみを慣れてしまうことがどれだけ残酷なのか分からない。可哀想とは思わない。
ただ、グチャグチャな感情しか出てこなかった。


「どうしたんだ、いきなり、涙まみれになっちまって。」

「俺さー…悔しい…」

「何かだ。」

「俺にも悔しい…苦しみに慣れてしまうことが一番嫌なんだ…」

怖い、怖い、怖い、
狂気に飲まれるな
何の狂気?
そんなの知らない
全て断ち切れ
何もかも

「苦しいことが続けば、何が何なのか分からなくなって自分を見失っていないかはたまにある。」

苦しい?悲しい?憎い?
はて?俺は何を思って、ここにいる?

「いや、俺の中にもう一人の俺がいそうで吐き気する。もう一人の俺が俺を殺そうとしていて、俺がこの世から消えることを恐れている。」

『アンタなんか死んじゃえばいいのに』と俺は俺の首を絞める。窒息寸前、窒息死の目の前。
俺は、ただひたすら耐えていた。
俺は憎たらしい笑いをしながら、ただ俺は俺を見ていた。だって…

「でもさ、あいつはいつも泣いている。どうして、泣いているのが分からなかった。」

何で泣いている?俺はアンタなのに、皆目理解出来ない。俺は俺で俺は俺が俺に俺って見失っていないのかなぁ?
あいつは俺なのに、『神様××××』と呟きやがった。
信じない信じない信じない信じない信じない信じない神様なんて信じていないから
神様なんて理解不能。
理解されないあやふやな存在自体が×××。


「俺はあいつで、あいつは俺で、今の俺は…俺?アレ………?」

銀時自身の自信消滅な言葉に高杉は言葉が出てこない。否、共感した。


俺のなかの黒い獣がうごめく。黒い獣がもう一人の俺みたいに。
やかましいやかましいやかましい負け組の勝ち犬の遠吠えをする。
俺達が、侍が、人間が、負け犬なんて認めない俺がいる。
けたたましい声を上げる黒い獣は現実を認めたくなかった。
黒い獣は『神様が×××』と言いやがった。
信じない信じない信じない信じない信じない信じない神様なんて信じていないから。
神様なんてはなからいない人物。あやふやな存在そのものの神様が×××。



戦争に参加したのはどんな理由なのかは、分からない。ただ、俺たちはいてもいられずにいられなかったんだと思いたい。

『神様と言うとは―――――』

ああ、続かない言葉
俺たちに届かなかった言葉
記憶から抹消された言葉
思い出したいのに思い出したくない感情を誰かが教えてくれ。

『神様と言うとは―――――』

いいから、止めてくれ。
頭に自制をかけてかけても、止まらない連呼される言葉。

『神様と言うとは―――――』

『神様と言うとは―――――』

『神様と言うとは―――――』

『神様と言うとは―――――』

『神様と言うとは―――――』

無意味な連呼が続く。
頭の中が鳴り響く言葉。


黒い獣が、『××××××』
もう一人の俺が『××××××』
口ごもる高杉が「〜〜〜っ」
口ごもる銀時が「―――っ」


重ねることを望んだ声
重ねることを恐れた声
重なってはいけない声
重なってしまった声





『「『「神様が憎い」』」』




ああ、神様が憎いってことは信じていたじゃん。
俺たちの心のどこかで神様を信じていたかもしれない。
せめて、神様がいたら