それぞれの想い出



ズキンッと胸が痛むのには慣れっこだ。
生まれつきこんなだから、苦しくもなんともない。

そう言って誤魔化した。
そうやって遠ざけた。

本当は寄りかかりたい。助けてって泣き叫びたい。
だけど、弱い私を見せればもっと皆よってこなくなるから。

だから私はこの痛みごと気持ちを隠した。


「そんなことする必要ない」


そうやって痛みを取り払ってくれた王子様に、私は全部捧げようと誓った。


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幼いリュンヌ

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「お前嫌いなものある?」

なんですか急に?と眉を潜める弟に俺は続ける。

「俺にはあるぞ?まずかったるい勉強だろ?あと苦味の強い唐瓜とか、ネバっちぃ納豆も嫌いだし、渋い柿も嫌だ。あとうねうねした蛭とか百足も見てたくないし、くせぇ亀虫も嫌いだし……」

「何が言いたいんですか?」

たんたんと言い募る俺を弟が睨んでくる。

「だから俺はお前に嫌いなものはないのか?って聞いてんの」

「ありませんよ。そんなの」

「本当にか?」

追及する俺に呆れた視線を向け、弟は立ち上がりどこかへ言ってしまう。

ほら、そんなだからお前はいつまでも此処から抜け出せないんだよ。


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秋葉と春花

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おれの友達は二人いる。

一人はドジでノロマな馬鹿。
根性なしで、いっつもぽえぽえして、ヘラヘラ笑ってる馬鹿。
抜けたような声で名前を呼ばれると力が抜けてしまう。
そんな馬鹿。

もう一人は可憐なお嬢様。
こんなド田舎でもちゃんと習い事して頭のいい、だけど嫌味のない珍しい人種。
ぽえぽえしてるとこは馬鹿と似てる。
二人並ぶとまるで兄妹みたいだ。


おれだけ、異質。
そんな可愛らしい二人と違って乱暴なおれは異質。
皆おれが嫌いだった。
野暮で行儀の悪い、大馬鹿者。


「そんなことないよ」

そんなことあるよ。

だってそう言った馬鹿とお嬢様はもうおれの隣にいない。

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幼い曙斗

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「ボクね、ママに会うために生まれてきたんだよ」

そんな言葉が本に書かれてた。赤ちゃんは皆ママが好き。ママに甘えて、ママに抱き締められながらすくすく育つ。

「じゃあ俺は?」

母親のいない俺は?母親に抱き締められることすら叶わなかった俺は?血の繋がった家族すらいない俺は?

「俺は誰に会いたくて生まれてきたんだ」

嘲るように無数の葉が俺を取り囲んで揺れた。

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ルーノ

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赤いものが見えた。

大嫌いな色を見て泣いた。


怒鳴り声が聞こえた。

とても怖くて泣いた。


ぐちゃぐちゃで訳のわからない何かが見えて、聞こえて、いくつもいくつも通りすぎて。

悲しくて、怖くて、大嫌いで、近づくなって言いたい。でも言葉の出し方を忘れてしまったように、ぼくの口から言葉は出ない。
だから泣いた。
泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて泣いて、涙がでなくなって、声が枯れてしまっても足りない。足りなくて、泣いて。


「もう、いいんだよ」

温かさが優しく包んでくれた。

でも、怖いものはまだ消えないから、ぼくは泣き続けて。泣き続けて。頭が空っぽになっても、涙が止まらなくなった。

出せるはずの「助けて」の声も、もう忘れてしまった。


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綾廻

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「もっと強くなりたい」

そうだなってオレは言う。
そうだねってボクは言う。

臆病なまま世界を学び出したオレと、
ガチガチに仕来たりで固められたボクと、
生まれながらにして価値観が違っていた。

けれど、

オレは受け継がれたものの強さを知った。
ボクは何者にも縛られない強さを知った。

二人はまだまだ歩み出したばかりで、弱くてちっぽけな存在でしかない。けれど、


「一緒に行こう」

互いの手を取り合えば、きっとどんな未来も前を向いて歩けるはずだから。

一緒に行こう

+++

唯と狗縲

++++++
書きたいことを浮かんだ順に。秋春双子とか綾廻はよく似たようなのが浮かびます。
でも一番書きやすいのはやはり唯と狗縲。


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