三ツ谷隆



あっ、やばい。
そう思ったのは数学の授業が始まってそう時間の経たないうちだった。女の子の日2日目の私は、お腹をぎゅっと抑えた。
そういえば朝飲んだ痛み止めはそろそろ切れる時間だった。朝を越えれば何とかなるだろうなんて淡い期待を持って準備を怠ってしまった私のミスだ。
先生の声も今は集中できない。とりあえず変に思われないようにと意識を集中させた。


その後のことはあまり覚えていない。気づいた時にはチャイムがなり、先生が教室から出ていく所だった。生徒たちもガヤガヤと動き始める。ふうと息を整えてゆっくりと鞄の中から痛み止めを探す。

「苗字さん大丈夫か?痛み止めある?」
『え?』

突然上から声がして顔を上げれば目の前には三ツ谷くんが立っていた。手に持っているペットボトルを私の机に置いて前の席に座る。

「汗、ちゃんと拭けよ?で、薬ある?水はこれ新しいから飲んで構わねぇから。」
『えっと…うん大丈夫。あった…って…なんで?』

首を傾げながら見つめれば、はぁと一つ息を吐き、私のお腹の方を指さす。

「俺2人妹居っからさ。痛いんだろ?大変だな。前から酷ぇの?」

成程。それで私が何で痛がってたのか予測したのか。手の中に錠剤をぷちりと押し出す。私の動作に合わせて今度は水のキャップまで開けて手渡してくれた。
なんだか、色々としてくれたり心配してくれる三ツ谷くんに申し訳なくなる。

「ん?…保健室行くか?」
『あ、いや色々と心配かけちゃって申し訳ないなぁと』
「?…はは、そんな気にしなくて良いんだぜ。俺が好きでしてんだから。」

だから大丈夫と頭をわしゃわしゃと撫でられる。まさか頭まで撫でられるとは思っていなかったので固まって目を見開く。

「あ、悪ぃ。つい頭撫でちまった」
『あ、いや…妹居るんだもんね。妹さんたちと間違っちゃったかな?あはは…』
「……。」

私の言葉に、黙り込んでしまった三ツ谷くん。え、なんだろうと私も口を紡いでしまった。そんな彼と目が合うと、またふわりと笑う。

「まぁ、確かに誰よりも心配になるし苗字さんの事気にしてる。…けど、苗字さんを妹と思ったことは一度もねぇよ。苗字さんだから気にしてんだ。」

わかった?ってニコニコ笑う彼に私はぱくぱくと口を閉じたり開けたりとすることしか出来ない。え、つまり??どう言う事だ。脳の中でサーバーが落ちたかのように考えることができない。そんな私を楽しそうに見ている三ツ谷くん。ちらりと時計を確認してゆっくりと席を立つ。

「そろそろ次の授業始まるし、痛みましにならねぇなら言えよ?保健室連れていくからな。」

じゃあ、と席に戻った三ツ谷くんに何も言葉をかけることができなかった。
お腹の痛みはマシになったものの、次の授業も集中することができなかった。





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三ツ谷くんは誰よりも早く察知して色々としてくれると思う。

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