ワンナイトラブ事件から数日が経ち、案の定男と再会なんて運命的な事はなく何一つ変わりない日常を生きていた。今日だって仕事でとあるヒーロー事務所に訪問に来ていた。ちなみにいうと私の仕事というのは、こんな性格ではありますが正義のヒーローのキャラクターグッズやサポートアイテムの作製に携わっているため、新しいアイテムのセールスや発注などなどで今回のように皆が夢見るヒーロー事務所に訪問することが多い。私は自分でいうのも何だが仕事と口はできる方であるため職場ではなかなか言い地位を獲得しているためこういったセールス業務は行わない。しかしどうやら前回部下がこの爆殺ヒーロー事務所のオーナーである爆殺卿に泣かされて帰ってきた事から、前回の謝罪(本当は泣かされた部下を連れて来るのが筋だが怯えてしまい、連れて来れなかったため)に菓子織りを握り締め、独りでこの場に赴いたのだった。部下曰く会社の名前を聞いた途端に態度が急変し、俺を口説くなら平社員じゃ話になんねぇよ!上司を呼べ!!なんて理不尽な事を言われたらしい。それならばいってやろうじゃないかと私が重い尻を上げた事で今に至る。
受付嬢に事情を説明し、今丁度オーナーがいるとの事で応接室に案内された。爆殺卿とはこの時代で爆殺ヒーローと物騒な名前に恥じない程に極悪人で目付きも悪いし暴言暴力などは当たり前、派手好きでメディア露出も良く行っているが視聴者を煽ったり毒舌なややアンチヒーロー的な立ち位置で常に騒動を起こせばネットで叩かれるが本人は謝罪や悪びれる様子もないとのこと。うん、ダメンズだわ。


「ちっ」
待ち時間があったため、こっそりネットで爆殺卿の事を調べていると、本人写真らしきものがチラチラと出てきた。爆発金髪に目付きが悪い、口が悪い、体つきがいい…前のワンナイトラブした相手と何か似ている…うん、きっとそっくりさんね、そうに違いない!と自分に言い聞かせた直後いいタイミングで応接室の扉が荒々しく開き、爆殺卿が姿を表した。そして私の事を見た途端に自分の事務所の室内というのに関わらず舌打ちをして唾を吐いた。

「初めまして、お初目にかかります。私は{emj_ip_0856}{emj_ip_0856}社サポートアイテム科部長の」

「駄目田 乙女、だろ」

「は、い」
気のせいという事でセールスモードのままで事を終わらせようとしたのだが爆殺卿に先手を取られ、名前を言われた。というかっ

「何で私の名」

「barで勝手に名刺渡してきたの何処のどいつだよ」

「あああああああああ!!!」

「隠し通そうって思ってたのか知らねぇが残念だったなぁ!」
とりあえず過去の私いっぺん死んでくれ!よりにもよってクライアントとワンナイトラブしちゃったの私?!よりにもよって爆殺卿と?!!親友よ私は結婚という当たり前の幸せ経験値ではなく着実にダメンズウォーカーとしての経験値を会得している。きっと今回でレベル3は上がっているよ!?
しかも私爆殺卿に対して結構酷いことを言った気がする。というか名刺持ってるという事は、部下に上司を連れてこいと言ったのって私が来ること分かっててやったのか?!

「やっぱりテメェ、あの時はこの俺様に楯突いた奴だな。まさか本当にここで会えるとは思わなかったぜ」
会いたかったと普通ならば嬉しい言葉とは裏腹にニヤリと物凄い形相な男に私は冷や汗が止まらない。やはり私が来ることを狙ってやがった。確信犯め!

「な、」

「あの時に俺が機嫌を損なわなかったら、前に来た女は泣かずにすんだだろうな。それにこのままだったらお前の会社との契約も全て破棄してしまうかもなぁ」
#名前#ちゃん?と優しい声だが目付きは笑っておらず、私が選択肢を誤れば私の息の根も止めてやると言わんばかりの恐ろしい顔だ。この男は自分に刃向かったこの気にくわない女が自分の指示1つで破滅に追い込む事ができるんだぞと遠回しにいっている。この男が我が社の契約破棄の理由が私だと社に知れたら私はここまで蓄積してきた地位も名誉も全て失う事になるだろう。

「何が、望みです、か」

「あ?話がはえぇな、」
そう言って、爆殺卿は私を応接室の大きなテーブルに座れと指示してきたので大人しくそれに従うと、後方から体をまさぐってきた。

「ちょっと待ってよっ」

「溜まってんだよ。お前で妥協してやってんだ。付き合えよ」

「な、」
普通の少女漫画ならばそこで男にビンタをして逃げて、その矢先に本当の王子様に出会えたりするのだろう。そういうことを考えるということは私もまだ乙女だということだがそんな事あるはずがないと諦めるほど大人になってしまった。つい最近男に騙され別れた私にとって仕事というのは頑張れば頑張るほど成果が出て人に認められる唯一の方法だった。故にそれをこの男のために捨てる事ができないのが現実だった。私には爆殺卿を受け入れる事しか出来なかった。きっと枕営業に成功した私は会社に戻り英雄扱いされるのだろう。はぁ、泣きたい。



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