女の夢と最後


「貴方達って、本当に未来からきたの?」

「あぁ、そうだ」

「…、そう。じゃあ私のこともわかるのね」

「しかし僕達の目的は貴様の素性を公開することではない。歴史を元に戻すためだ。」

「そう、信じがたいけど死ぬのね、私もあの人も…」

「…お前」

「ねぇ、最後に、いいかしら?」

「…」












「おきたか」

「どうして、」

「言っておくがここはちゃんとした地上だ」

「ミクトラン様は?!」

「地上軍が勝利し、ミクトランは死んだ」

「そう、なぜ私は生きてしまってるのだろう。どうして私だけ…私は、ミクトラン様を裏切り、ハロルド達も、」

「…お前を治療したのはそのハロルドだぞ」

「もともと、彼女は気づいていたそうだ。お前の葛藤を」

「でも、それでも、私は自分が許せないっ」

「やめろ!」

「貴方には関係ないでしょう?!それに私は天上軍幹部として責任を取らなくてはならないのよ!!」

「やめろと、言っているだろう!!」

「お前が死ぬのは勝手だ。ただそれはお前が天上軍としての意思を捨てられないのならばの話だ!!お前は死んで償おうとしているのだろう?!そんなこと誰も望んでいないっ 」

「貴方に何がわかるのよ!」

「何もわからないさ。僕にはただお前が罪から逃れようとしているようにしか見えない。誰も死なんてことを望んでいないのにだ」

「っ」

「あいつらが好きだから地上軍に情報を漏らしたのだろう?だから僕に伝言を頼んだのだろう?」

「それは。…でもっ」

「でも、それでもお前はミクトランを裏切ることができなかった。だからそれが腹立たしいのだろう?」

「…私は、あの方が好きだった。裏切るなんてできなかった。例えどんな悪行をしてきたとしてもどんなことをされたとしても。止めなくてはならないことなんて知っていた!でもできなかった!!」

「…」

「地上軍は好きだった。最初こそはスパイだったのだけれどいつしか彼らに混みこまれていた。だから辛いのよ!!」

「やっと、吐き出したな」

「え、」

「それを奴らにぶつければいい。辛いなら辛いと言えばいい。馬鹿馬鹿しいが溜め込むより幾分ましだ。」

「…」

「嘗て僕もお前のように仲間を裏切り、絶望を味わった。」

「貴方、」

「だから見逃せなかった。生きているのに、まだ機会があるというのにそれを溝にすてようとするお前が」

「生憎、お前の仲間とやらはまだお前を心配している。それでいいじゃないか」

「貴方は、」

「僕はできなかった。」

「そう、」

「貴方名前は?」

「ジューダスだ」

「違うわ、本名よ。」

「エミリオ」

「綺麗な名前ね、覚えておくわ」

「間違っても千年後に行こうだなんて考えてないだろうな?」

「本当に貴方は私のことお見通しな訳ね」

「…あぁ、」
















「お別れね」

「そうだな」

「貴方はどこに帰るのかしら」

「さぁ、また会えるだろう」

「またって、会えるとでも思ってるの?」

「お前がそう願えば、な。運命なんていくらでも変わるさ」

「そう、なら私の名前覚えておいてよ。ちゃんと会いに行くから」

「なら忘れない内に頼む」

「貴方が頼むだなんて雨でも降るかしら」

「ただ、お前が泣くだろ。」

「泣かないわよ。ただ本かなにかで殴るけど」

「どうだか」

「ふふふ」

「…」

「あらどうしたのかしら」

「やはり、お前は笑った方がいいな」

「な、」

「ふ」

「え、」





彼は彼がつけてくれた私の名前を最後に呼んでくれた。嗚呼、貴方は私の気持ちなんて気付かずにあの時と同じ事を言うのね。
笑えるようにしてくれたのは紛れもない貴方だというのに。
結局私は貴方を助けることができなかった上に、貴方は私を思い出してはくれなかったけど、最後にこんな幸せなのは最後に貴方が近くにいてくれるからね。あれだけこの千年足掻いたというのに結局私は最後まで女を捨てられなかった。全て水の泡。それでも貴方と逝きたいなんて本当に馬鹿らしい。



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