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「あ、リオン君久しぶりだね」
久々に奴の顔を見た。周りには桜が舞い冷たい風が吹いた。しばらく見ない間に痩せた気がする。僕はストレイライズ神殿から盗まれた神の眼を追い世界各地を転々としていた。その先で神の眼を盗んだ主犯と思われるグレバムという男の腹心であるバティスタを捕え拷問にかけたがグレバムの居場所を吐かず気絶したためバティスタに探知機の着いたティアラを付けたままにしたので明日にはバティスタは目が覚め時牢の鍵があいていることに気づき逃亡しその先がグレバム居場所であろう。拷問の後はなかなか寝付けず僕は夜風に当たろうと外に出た。その矢先に奴がいた。


「お前っ」
なんで、ここにと言う前に奴はその答えを口から放った。

「任務だよ。神の眼の監視」
奴の言葉に僕はこの事件の真相を悟った。何故グレバムは急に神の眼を盗んだのか、神の眼の操作方法を知っていたのか、何故奴がグレバム側にいるのか、全てはヒューゴが影で操っていたのだ。ヒューゴがグレバムを唆し、神の眼を盗ませ、奴をスパイとして送り込ませ監視させ、そして僕らが神の眼を取り返すことで手柄を手に入れるということか。だが、、

「全部ヒューゴの思惑通りか」

「そーらしいねー」

「だがやり方がまわりくどい気がするな」

「レンズは日光によって力を蓄積する傾向があるみたいでその蓄積のために各地に回ってるんだってー」
神の眼の力を蓄えるのが目的?ヒューゴは何を企んでいるんだ?と思考が働いたが奴はそこまで知ってはいなそうだったため追求をやめた。


「お前は何故ここにいるんだ?神の眼はどうした」

「君の顔からしてグレバムの居場所吐かなかったぽいからどうせバティスタ逃がすんでしょ?この護衛」

「お見通しか。今気絶したところだから時間が掛かるぞ」

「…そ」

「…」

「…」

「…あの時は、すまなかった。言い過ぎた、」

「え、リオン君謝れたの?」

『坊ちゃん、成長しましたね、僕はっ僕はぁっ』
シャル、うるさいぞ

「おまえ、ら」

「いやーん、ごめんねー」

『ずみまぜんっ、歓喜余って、うぅ』
奴は少々疲労の溜まった笑顔を見せ、僕は何故か安堵した。決して今まで奴の心配なんかしていなかったからな。あとシャル泣くなっ!


「あとね…知ってるよ、あの人にとって僕は駒でしかないって。全部知ってる」
奴はそう言って笑った。

「なら何故っ」

「昔さ、唯一の肉親が死んで、死のうとした。でもそれは逃げだって教えてくれた人がいるんだ。残された人がどんな気持ちか考えたことはあるのかって怒鳴っちゃってさ。」
奴はどこか遠くを見ていた。ずっと遠くを見ていた。そしてその会話ではヒューゴは奴の大事な人ではないだろうことが感じられた。また、それに安堵すると同時に奴の言う人が気になって仕方がなかった。その怒鳴られたという人間の事を思い出しているのだろうか、奴の表情はいつもと違い更に穏やかであり、いかにそいつが奴の守りたいものか、大事なものなのかを物語っていた。

「そいつが、守りたいものか」

「実際は、約束なんだけど」

「約束?」

「そ、でも僕の一方的なんだけどね。必ず会いに行く。そして怒鳴られた仕返しするって」

「まだ会えてないのか」
奴の約束とやらは僕には違和感を感じた。僕と長い付き合いになるが奴はそいつを探そうとする仕草をしていない。となると奴は対象の人間を既に見つけたのではないか。それなら仕返しとやらが終わったなら、奴は、どうなるんだ。というか奴は何をしようもしている?

「…」
奴は珍しく言葉を詰まらせた。そして今まで目を合わせなかった奴の瞳が僕を捉えた。そしてまたヘラっとした表情をするのだ。

「会えた、よ。たぶん」

「たぶん?」

「…忘れてるのかな、…殴るに殴れなかったよ」
殴る気だったのか

「記憶喪失か」

「うーん、」
また奴は言葉を濁した。こんなに発言に困っている奴は初めてだ。どういうことだ。奴は既に守りたい存在とやらを見つけていて、その近くにいない。しかも口風じをされているかのように。そこで僕はふと思い当たることがあった。つまりは奴も僕と一緒なのではないだろうか。それも僕よりも最悪な状況。


「…」

「おい」
風が吹き視界を桜な花びらが遮り僕はまた見た。まただ、またデジャブのような感覚だ。そして奴と重なって見えたのは黒い長い髪をした女だった。同時に頭痛と目眩が僕を襲い、フェードアウトした。最後に見た視界はあの女。
あの後僕は目を覚ましたところは仲間たちのいるベッドだった。きっと奴が引きずってきたのだろう、マントの一部が擦り切れている。同時に僕は確信していた。奴と僕はやはり会ったことがあるのではないかと。でもどうしても思い出せない。あの黒い髪の女が、その何か握っているのだ。傍らでシャルが心配そうに僕に声をかけた。だがすぐに地下牢あたりが悲鳴が聞こえたので僕はそこに向かった。



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