敵軍が!
「案外普通だな」
ヤンキー君の私の部屋を見たときの第一声がこれである。こいつヤンキーじゃなかったらどついてやりたい。私だって女の子の部屋みたいにぬいぐるみとか可愛い家具だとか置きたいが下宿している身分として悠長な事は言ってられない。学生の性分は勉学である…何言ってるのだろうか私は。とりあえず早々にご帰宅頂くために母上より送られてきた食パンを段ボールから取り出して献上したが時は既に遅いのかこやつこたつで寛いでやがる!
「くっ…はい、これが食パンです。」
「茶」
「は?」
出来るだけ笑顔でヤンキー君に献上物を渡そうとした途端にお茶を所望された。帰ってくれるなら何杯でもやろう、しかしこの感じはここでたむろする気満々じゃないか。
「客が来たら茶くらい出せや」
「ええええ!!」
「文句あっかよ?」
「それはもう」
あるわボケ!
「あぁ?」
「ないです。はいどうぞ!」
私は自分のヘタレ加減に半泣きになりながらペットボトルをテーブルに力強く置いた。
「ペットボトルとかねぇだろ普通」
く、言わせておけばっ
「独り暮らしだから、ペットボトルを大量買いした方が安いんですよ」
「ふーん」
興味ないんかい!
「…」
「…」
「…」
「あの、」
「んだよ」
「何故寛いでいらっしゃるのですか?」
こたつで私の家にある漫画を読み漁り始めたヤンキーに私は即座に精一杯の制止をさせた。
「そんなの俺の勝手だろ」
「左様でございまするか」
だがもう一押しできない私の馬鹿。私は成す統べなくその場に膝を折った。くっ!ヤンキーめ!こうやって私を召し使いにする気ね!屈しない!…ようにしたいわ!!
「…お前、俺より年上な癖に何で敬語なんだよ」
少ししてヤンキーはそう言って私の方を見た。怖いわとても不機嫌そう。
「ヤンキーには敬語がいいとネットで」
「次敬語使ったら爆破する、俺の事ヤンキーって言っても爆破する」
ヒィイイイイイ!!!
「あの、」
「口答えかよ?」
「私、貴方の名前知らない、ですが」
「はぁ?」
「ごめんなさいごめんなさい」
てかなんという理不尽なのだろう!初対面なのだから知らないのは当たり前だろ?!
「…勝己」
「え、珍しい名字で、すね」
「名前が勝己だよ」
「名字は、」
「別にいいだろ、」
名前で呼べと?!都会のヤンキーは名字で呼ぶなんてことはしないのか?!呼んでみろよ、と無言の威圧をかけてくるヤンキーにびびりながらも口を開けた。
「…勝己、君?」
「っ!」
「(ヒィ!!!顔が赤くなった!君付けは流石に怒った?様がよかったのか?!)」
「帰る!」
「え、ちょ」
なにやら焦った様子で家から出ていったヤンキー。かくして私はヤンキーの名前を唱えたことにより危機から脱却することができた。母上、都会はとても恐ろしい所のようです。てかあのヤンキーは近所の高校生なのだろうか?ということは今後も遭遇するやもしらないということだ。あぁおそろしやー。極力見つからないように細く小さく生活を心掛けよう。うん。
あ、ヤンキーよ、パン忘れてんじゃん。
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