ヤンキーの再来
ヤンキーに家に押しかけられてから数日がたったが、なんともまぁ平和な日常が続いていた。きっとヤンキーも私の事を忘れてまた新しいパシリを見つけたのだろう、そういうことにしておこう。と私は今日に限って夕方にスーパーで買い物をし、家に帰ろうと歩いていた。今日は魚が安かったから和食だわー、なんて平和ボケした事を考えながら歩いていた。その時に私に再びあの悲劇が訪れた。後方から肩を捕まれたのでふと振り向くといつぞやのヤンキーが不機嫌そうに立っていた。
「おいびび」
「ヒィイイイイイ!!!出たぁあ!!!!」
「テメェ何人の事幽霊みたいに驚いてやがる!!」
「急に現れないでください」
「敬語」
「あ、すみません!勝己様!爆破しないでください!何でもしますから」
やべ、何でもっていってしまった。
「んで勝己様なんだよ」
「前に君付けしたら怒ってたじゃ、ない?」
「怒ってねぇ!前みたいにしろや!!」
「(嘘だ)…か、勝己君」
怒ってるじゃん
「ん、」
でも前回のような動揺は勝己君には見られずただ名前を呼ぶとそっぽを向かれた。
「というか私の名前知ってた、のね」
「家の電気代の請求書ん中に書いてあったからな」
夢がなかった。もしかしたら前借り昔会ったことあるけど女の子は忘れてて男の子は覚えていて思い出させようと葛藤する話があったからこれはフラグなのではなかった。ヤンキーにはトクンクなんてしないわよ。
「そうで、あったか」
「お前、敬語しか喋れねぇの?言葉可笑しいだろ」
「私元々生まれはこの辺りだったんだけど、関西に引っ越したから、敬語抜くと関西弁になるのさよ。恥ずかしいからね」
「なら関西弁でいいんじゃねぇ」
「せやかて…あ」
「はは!バリバリじゃねぇか」
勝己君は私の言葉がツボに入ったようで私の前で初めて年相応らしい笑いをした。あ、
「勝己君…笑ったらかわええね」
「っテメェ調子のんなや!」
「ごめんごめん!」
「そういえば、さっき何でもしますからって言ったよな?」
「覚えてたんか」
「許してやっから飯作れや」
なんでやねん!作るかよ!なんてツッコミを関西人であれば入れるだろう。しかし!私は違う!!見ていてマミー!私は都会で強くなるわ!!!
「粗末なものですが、」
「本当にな」
「くっ」
と思ってはいたが二つ返事で屈した。私の乙。そして私の本日のディナーになる予定であった鰤が勝己君に食べられていく。二十パーセントOFFなめんなよ!
「まぁ、いいや。てかお前、何処の大学だよ」
「某医療系大学やけど」
「は?お前、頭いいの?」
呆気にとられたように勝己君は言った
「失礼やなぁ、これでも主席やからね?」
「…そうかよ」
「勝己君は?」
「雄英」
「はは!あそこ受かるの大変やって聞いたけどよく入れたね」
「俺はヒーローになるんだから当たり前だろ」
「勝己君が…ヒーロー科、やて」
世も末だ。ヒャッハー!なんてバイクをブイブイ言わしている様子が想像した。ケンシロウ助けてくれ。
「何か文句あるのかよ?!」
「ああらへん!全くああらへん!」
キレそうな勝己君を止めるために私は折れた。何か不服だったようで鰤と白米やら味噌汁やらをやたらに丁寧に平らげていく勝己君。ヤンキーの癖してマナーはしっかりしてるんかい!ここでギャップにトクンクって…ってならへんわ!なんか期限悪そうに携帯見てるもん。てかそれテーブルに置いていた私の携帯じゃない?
「おい」
「何」
「合コンって何だよ」
いつの間に私の携帯を漁っていた勝己君は友達とのラインの内容を私に見せつけてきた。確かに明日大学で合コンに来てくれと言われていた。ただ飯とのことで承諾して恐らくその詳細が送られてきたのだろう。…うんとりあえず携帯にパスワード付けよう。
「ええええっと、友達に誘われてな、ただ飯やて言ってたし」
「よく行くのかよ」
「、ただ飯やしね」
勝己君から携帯を返してもらいその内容を把握し御意と返信した。
「お前のその食い意地なんだよ」
携帯の一件から明らかに不機嫌そうな勝己君。やめてくれ飯が不味くなる。
「独り暮らしをやりくりするのはなかなか大変なんや、しゃーないよ」
「…何処でやるんだよそれ」
「駅前の居酒屋やけど」
「何時までだ」
「一次会は8時まで」
「ふーん」
「(急な興味なし?!)」
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