酒は恐怖
都会の食べ物はお洒落で旨いものばかり、そして合コンなのでただ飯にこの上ない幸福感を味わっていた。私は食べることもお酒を飲むこともこの大学デビューにより達成しそしてその楽しさの虜となっていた。
「びびちゃんこの後まだいける?カラオケ行こうかって言ってるんだけど」
「行く行く!」
仲良くなった友達の凛子ちゃんにそう誘われてほろ酔いの私はノリに合わせ了解した。その途端に肩を叩かれ顔を向けると先程まで話が合うことからよく話していた山田君がいた。
「びびちゃん、」
「ん?何ぃ山田君」
「俺少し酔ったから二人で休憩してくれない?」
「んー?えぇよ。」
カラオケも捨てがたいが山田君ともう少し吉本の今後について話し合わなくてはならない!と凛子ちゃんに謝りを入れて山田君と二人で二件目に向かおうとした矢先に前方からものすごい勢いで何かが走ってきた。
「おい!」
肩を捕まれて私はふと我に帰るが目の前にいた勝己君がいた。おかしい高校生がこんな時間にこんなところにいるだなんて、これはキットまやかしだ。そう思い私は強気だった。
「…勝己君の生き霊かな?とうとう見えてしもうたか。あかんなー、恐喝されるんかなー。」
「恐喝なんてしてねぇよ!」
「あ、え?」
いつものように怒鳴られたことにより私は彼がまやかしではなく本物の勝己君だと認識し、ヘタレモード発動となる。
「テメェ、帰るぞ」
「…」
「でも山田君が」
「ちょっと君!?」
「あぁ?爆破されてぇのか?!」
「勝己君、人を脅したりしたらあかんよ。ヒーローになるんやろ?」
「ぐっ」
「山田君、ごめんな。この子近所の高校生でこないな所に付いてきてしもうてるから送っていくわ」
「子供扱いすんなや!ブス!」
「君の彼氏、ではないよね?連絡先を」
「ちゃうちゃう、連絡先やったら「帰るぞびび!」
「えっちょっと!」
止めようとする山田君を肩で押し倒した勝己君は私を引きずるかのようにアパートまで送ってくれた。あの勝己君がである。そうなれば横暴だが勝己君は以外に優しいのかもしれない。こうして合コンとか飲み会で私がへましないように心配して来てくれたのだろうか。あまりに目付きとか口が悪いので真意は不明だ。
「勝己君、」
「ありがとな」
「はぁ?」
「上京したての私の事心配で迎えにきてくれなんやろ?」
「たまたま通りすがっただけだ」
嘘つけや!ふむふむ、照れている様子だ。酒が入っているおかけで勝己君への恐怖がなくなった私はどうしょうもなく可愛いポメラニアンに見えてきた勝己君の頭を撫でてみた。
「ふふ、」
予想以上の剛毛に私は笑った。
「子供扱いすんな!」
「さようか、すまんなぁ」
「糞、」
そう言って大人しく頭を撫でられる勝己君。酒の力とは恐ろしい。
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