え、援軍だと?
「いらっしゃいませー、げ」
「げっ」
申し遅れましたが私は学業の合間をアルバイトをして生活をしている。両親からの仕送りのみで生活をできないことはないのだが娯楽費や物欲を賄うほどの余裕はない故に行っている。内容は喫茶店での接客業である。チェーン店であるため少しヤバめの客も来たりするが勝己君のお陰である程度は臆せずに行えている。そんな中で事件は起きた。偶然にも私が接客している所に友達?を連れてきたのだ。互いに顔を見合わせて静止した。
「どうしたんだよ爆豪」
勝己君の友達であろう赤髪の友達が勝己君に対して心配そうに声をかけた。
「なんでもねぇよ」
そう言って勝己君はそっぽを向いた。きっと私みたいな田舎者が知り合いだなんて友達には知られたくないのだろうか、と少し寂しい気持ちになった。
「そうか?すみません二人です。空いてますか?」
「はい、こちらの席になります」
「ありがとうございます!」
「………チッ」
「(怖っ!)」
勝己君がしらを切るつもりならば私にできることはそれに合わせること。ご近所さんなのでいいようにしないと恐ろしいことになりかねない。私は大人しく二人を席に案内をして、そそくさとその場を去ることにした。勝己君の視線が痛い。二人は軽食を注文して何をするのかと思ったらどうやら勉強しにきたらしい。なるほどヤンキーな勝己君は勉強を教えられているのだろうだからそれが悔しくて仕方ないのだろう。ましてやいつも苛める私が見ている中では彼の自尊心が傷つけられる。私はそう解釈してそれ以降の接客は先輩にお願いすることにした。
それから数時間が経ち本日の業務時間が終わったが彼らはまだ勉強をしていた。
少しだけあの勝己君の恥ずかしい姿を見たい、しかし今後の私の生活との天秤にかけたときにこっそりと逃げることにした。二人から見えないように店から出ようとした時に勝己君の友達の言葉に足が止まった。
「おい、爆豪。さっきから店員さんに殺意に近い視線を送っているけど何かあったか?」
あ、それ私だわ。
「あぁ?知るかよっ」
機嫌悪っ
「…お前、分かりやすいけどドンマイな」
「何がだよ!」
「ほらそういう所だって、あの人お前に結構脅えてるじゃん?やるなら優しくしてやらねぇと」
「糞みたいに優しくしてやってるわ!」
勝己君、君が私にしてきた事を思い出せ。携帯は勝手に見るわ家で寛ぐわ怒鳴るわ…やべ涙出てくるわ。
「そらすぐ怒鳴る」
「ぐ、うるせぇ」
勝己君が押されている、赤髪君頑張れ
「お前も男ならガツンと一発行ってこいよ」
何を?!
「まだしねぇよ、てかできねぇ」
まだ?!
「…そうか、そうだな。しかし大学生だったか?呑気にしてたら取られるぞ」
「お前に言われなくてもその前に蹴りをつける予定だ」
「流石爆豪!男だな!」
「…」
私はその場から立ち去った。アイツらなんか私に対して恐ろしく怖いこと言ってなかった?!ガツンと一発?蹴りをつける?もしかして勝己君、君は私の友好度を高め自分の奴隷にしそしてサンドバックにするつもり?!世末恐ろしい子供達だ!こんなのがヒーローになってもいいものなのか?!
「おい、」
「かかか勝己君っ」
どうして君はそうやって私の前に現れるんだっ!さっきまで友達と勉強してただろう?!珍しく息を切らしているじゃないか…しかし君の魂胆はわかっているよ!フハハハ!怖いから言葉にはしないけどね!!!!逃げてやるさ!!!
「俺は怖いかよ」
「え」
いじけた子供のような反応に私は変な声が出てしまった。それが気にくわなかったのだろう勝己君はいつものように怒鳴った。
「チッ」
「ヒィイ!」
それだよ!すぐに顔に出るの!私があからさまに怯えた顔をすると勝己君は頭をかいてめんどくせぇ!と何処かに怒鳴った。やめてくれ近所迷惑だよ。
「お前、日曜暇か?!」
「バババイトが」
「ああ?」
「ヒィイ!」
「…脅えんなや鬱陶しい!」
「ごごごめん!」
「…何時から何時だよ」
「…え?」
「早く言えや」
「えっと10時から4時までやよ」
「そうか、残業すんなよ」
「えっ、ちょっと?!」
その後勝己君がバイト先の常連となり一緒に帰ることが多くなった。そんな私のバイト先でのあだ名はヤンキーキラー。な、なんて不名誉な!。
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