音也がメール交換をするだけ


 結崎を好きになってから、そろそろ1年。中学校の時に知り合って、同じ委員会になって、頑張り屋の結崎に惚れた。なんとか、卒業する前に、連絡先を交換することに成功し、告白まではいかなかったけど、メールのやりとりは毎日のように続いていた。結崎との会話は、俺の貴重な日課になっていた。

「はあ……」

 なぜ、ため息をついているのかって、俺がこの早乙女学園にきていることを知っている彼女がトキヤのことを聞くからだ。寮が決まって、トキヤと知り合って、その後に"同室のトキヤがHAYATOにすごいそっくりなんだーまあ、双子の弟だからなんだけどさ"というメールを送ったら、いつもより早い返信の一番最初の行には"私、HAYATO様のファンなの!!"と書かれていた。結崎は、HAYATOのファンだったのだ。それから、メールで度々、トキヤのことを聞いてくる。もちろん俺は、質問に答えるけど、やっぱり気持ちは進まない。

「なんで、俺じゃないんだろ」

 HAYATOが好きだったのは、いつから?とか、どこが好きなの?聞きたいことは沢山あったけど、聞くのが怖かった。今、結崎が俺とメールする理由が、トキヤのことを聞きたいためだとか、そんなものだとは思いたくなかった。トキヤの話をする前に、何度もメールのやりとりをしているのに。


 そんなある日だった。珍しく、結崎の方からメールがきた。俺、まだ昨日のメール返してないのになって思いながら、開くとHAYATOの文字が並んでいた。嫌気がさして、見るのをやめようかと思ったけど、とりあえず読むことにした。
"HAYATO様のライブに行ってきたよ〜!途中で雨が降って、最後まで見られなかったけど、やっぱHAYATO様元気でるね!"
 結崎の笑顔がふと頭に横切る。最後に見たのは数ヶ月前の話なのに、鮮明に思い出せるんだから、やっぱ好きだと思ってしまう。でも、その笑顔を向けてる先が自分でないことが、悔しい……。
 他にも、ライブの前に友達と買い物に行った話が書いてあったけど、さらっと流して、最後までスクロールする。最後にあった自分の名前を見て、手が止まった。

"音也も、アイドルになるため頑張って欲しいな。デビューしたら、絶対応援しにいくからね!"

 そんな言葉が嬉しくて、三回読み返して、言葉にならない言葉を口にしながら、枕に顔を押しつけた。


20141022
音也練習。その3。
実は、トキヤのメールのネタ書く前にこれ考えていた。んですけど。
落ちなどない。

気が向いたら、ワンクリック>




ALICE+