パキパキ、という微かな音が聞こえて、閉ざされていた意識が起きる。

起きていたのか、眠っていたのか、それとも気を失っていたのか。睡眠に落ちるほんの1秒前のような不思議な感覚が、長く続いていた。

眩しい。陽の光だ。
ぎゅっと目を瞑って、またゆっくりと開く。



「儚、」



聞こえた落ち着いた優しい声。

そう。私はずっと待ち望んでいた。彼の声を、彼の姿を。



『…せん、くう…』





いつもと変わらない日だった。
大樹が杠に告白すると決意した以外、本当に何も特別な事なんてなかった。

部活に所属していない私は、放課後科学部の活動する科学室に居座るのがお決まりで、あの日も千空の実験を少しだけ手伝いながら千空や他の部員達と他愛もない話をしていた。

大樹が、杠に想いを伝える。5年越しにその結論に至った彼が、千空と私の名を呼びながら化学室の扉を開けて。
口では棒読みだったけれど心底応援していた私達は、その勇姿を見る為に校庭を眺めていた。目下のところ、結果は分かりきっていたのだけど。

いよいよ、あの2人が自分の気持ちを伝え合う。
いつも擬かしく感じでいた、待ち望んでいた瞬間だった。

強い光が私達を襲って、動く事も、話す事も、何も出来なくなってしまった。





『……』


「あれから3700年と少しが経ってる。」


『3000…?』



長い、なんて表現じゃ足りないその時間。
あっという間のような気もするし、だけどそれ相応の時間を過ごしたような気もする。









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