.





『あっ…ぅ、はぁっ、あぁ、や…っ』


「っは、…ユリ、」



後ろからされるのはどうしても苦手だ。

気持ち良すぎるのに、ハニの顔が見えない。ハニの顔が見えないのに気持ち良すぎる。
不安で、怖いのに、意識が飛びそうになる程の快感を叩きつけられて、どうしたらいいのか分からなくなる。



『あぁ、ぁっ、や、ハニ、やだ、っだめ』


「んは、かわい」



ぐっと奥に当てられながら背中に強く歯が立てられる。痛くて、痛くて、普段はひたすらに優しくて甘いハニが私にこんな事するなんて信じられなくて。なのに、ハニからだと思うとどんな事でも嬉しくて、ハニしか知らないこの身体は悦んでしまう。



『おく、っ…あ、だめ、』


「奥当たってるね、…っ、分かる?気持ちくて子宮降りてきてんの。ユリの身体、俺とセックスすんの気持ちいって。」



気持ち良い、気持ち良いよ。気持ち良くて、幸せで、ハニと繋がれるこの行為が好き。



『はぁ、ぅっ…はにと、だからっ』


「っん?」


『っあぁ…っ!あ、ぁ、はにとだからっぁ!きもちくて、すきなの…っ』



言葉を紡ごうとしても、まるで全てが喘ぎ声だ。端なくて嫌になる。だけど、頭はもうほとんど何も考えられなくて。



「…あー、ユリお前、本当だめ。」



時に柔く時に強く肌を食んでいた口が離れて、腰にハニの両手が添えられるのが分かった。



「絶対、この先だって俺しか受け入れちゃだめだよ?受け入れさせない、から。」


『ん、うんっ、分かって、ああぁっ!!』


「っ…、」



お腹の奥をハニのもので叩かれているような、そんな感覚。同時に、脳が溶けていく感覚。恐怖にまで似た快感。

自分の中ではそれまで何処か、ずっと変わらないままのハニだった。男とか、女とか、そんなんじゃなくて、ハニはハニ。
当時は髪の毛も自分と同じくらいに伸ばしていて、見た目だけで言えば妹の私から見たって女の子にしか見えなかった。
そんなハニと初めてこの行為をした時、初めてハニに明確な''男''を感じた。

いや、違う。
ほんとはその少し前から。
気持ちを伝え合って、それまでと違うキスをするようになって。ハニの目が、雰囲気が、どんどん知らないものになっていった。
知らないハニが居るのが嫌だった。ハニの全部を知りたかった。
あの頃はよく分からなかった感覚も、今考えたらシンプルなものだ。

''男''が垣間見えていたハニを''女''として欲した。
彼の目に、合わさる唇から伝わる息遣いに、添えられる手に、欲情した。

だから、ハニに強請った。



『はに、っあぁ、ぅ…!はに、はに、ぃ…っ』


「うん、ユリ」



好きで好きで堪らなくて、この男の人を、自分のものにしたいと思った。
優しさも、甘さも、ハニからなら切なさや怖さだって、全部全部私が欲しかった。



『も、っ…あぁっ、はあっ、あっ!も、むり、はに…っ』


「大丈夫。」



ハニが身体を倒して、背中にぴたりと温もりを感じる。もうその先なんてないはずなのにさらに奥にハニが入ってくるのは苦しいけど、気持ちよくて、何より、ハニが近くに居る事に泣きたくなるくらいに安心する。

おかしくなりそうで怖くてシーツを掻き乱していた手が包まれて、耳にキスを落とされる。



「大丈夫だよ、ユリ。」



手を絡めて、横を向いてキスをする。
出来る全ての手段を使ってハニに触れて、繋がりたい。そう思っているのが伝わってるかのように、少しの間緩やかだった腰の動きがまた深くなった。



『あ、あぅっ…あぁっ、あ、は、っあぁ!っん、はに、っもう、むりっ…あぁ!』


「いいよ、っ…、おかしくなってみせて、ユリ、っ」


『はに、はにっ、あぁっ!あ、っああ、ああぁ…っだめ、いく、いっちゃ…っ、っあぁ…っ!!』



ハニが居る、気持ちいい、ハニと繋がってる、気持ちいい、ハニが好き、ハニとずっとこうしてたい

繋いだ手を握りしめて、頭の中も、身体も、中まで全部、ハニでいっぱいなのを感じて。
到底受け止められないような強い快感の波が来て、押し流される。

意識がふわっと浮いて、そんな中でも感じるハニの、香水じゃない、ハニの匂いと、温度。



『っひ、ぁ…っ!う…っ』


「まだトばないで、ユリ」



肩口に深くハニの歯が突き立てられて、その痛みに意識が急上昇する。



「もうちょっと頑張れる?まだ足んない、」



そう言われると、中からハニが居なくなる。
やだ。さみしい。居なくならないで、やだよ。
そう言いたいのに上手く言葉にならなくて、必死に首を振る。

ころんと身体ごと上を向かされて、やっとちゃんとハニの姿が見えて嬉しくなって、だけどとてつもなく寂しくて手を伸ばす。



『っや…はに、』


「うん、っほら…っ」


『、っあ…あぁ…』



正面からハニが入ってきて、そのまま私の腕に収まったハニは首の裏に腕を回して、もう片方の手で私の髪を撫でる。



「ごめんね、寂しかったね。」


『っん…はに、はに…』


「ふ、かわいい」



慈しむような目で見られると、この世で1番幸せなのは私だと確信できる。
いつからか溢れていたらしい涙を拭って、おでこを合わせて、かわいいかわいいと言いながら私を見つめるハニ。

自分の事を特別可愛いと思った事はない。だけど、別に嫌いじゃない。だってハニに似てるから。

確かに、私達はそっくりだから。

この特別は、私以外の女の子は誰も持ってない。どんなに望んでも持つ事はできない。私とハニの、私達ふたりだけの特別なもの。だから、褒められると素直に嬉しい。