b f m
.
世間が浮き足立つこんな季節に合わせるかの様に、偶には外で会うのも良いねなんて話になって、フォーシーズンズに部屋を取った。
どうせやる事なんて決まってるのに少し可愛こぶってみる僕達は案外純粋なのかも、なんて。
そんな言葉には到底似つかわしくないキスを仕掛けてきた[FN:名前]に応える様に腰に手を回すと、あっさりと離れたと思えば部屋のライトを落とした。
覗き込んできた[FN:名前]の瞳の中に映るは僕は自分で思っていたより飢えた顔をしていて、そんな僕を見た[FN:名前]は可笑しそうに笑った。
『ふふ、ジス』
その顔は無邪気で愛らしくて、僕の腰辺りに跨る身体も子どもみたいに軽い。
そんな彼女とただキスをして名前を呼ばれただけで僕はもうダメなのに、君ばっかりそんなに綺麗で、そんなのあんまりなんじゃない?ねえ[FN:名前]。
「[FN:名前]、」
形勢逆転を文字通りにする様にくるりと[FN:名前]を押し倒してその顔を見下ろすと、それどころか余計に滾って。首に腕を回されるだけで結局敵わない事を思い知らされる。
[FN:名前]の思い通りで良いからさ、何でも。だけどこれは遊びじゃないんだから、そんな顔で笑わないでよ。
そんな気持ちをぶつける様に、食べ尽くすみたいにその唇を奪う。
『、じす…っ』
「は、その目、」
自分のどんな表情が男の理性を奪うのか、きっと彼女は分かってる。分かっててその綺麗な瞳を潤ませて、例に漏れずそれに弱い僕の名前呼ぶ。
そうやって、何人の男を君以外じゃ満足出来なくさせちゃったんだろうね。僕だけじゃないのなんて聞かなくたって分かる。本当、ムカつくよ。
『あ、…っねえ、』
「何?良いでしょ別に。」
片手で簡単に折れそうなくらい細い白い首筋に舌を這わせて噛み付く様に吸い上げる。
僕の方がのめり込んでるんだろうけど、まあ[FN:名前]だってそれなりには僕が好きでしょう?少なくとも、僕が他の女と会ってこんな事してるんじゃないかなんて、夢でも有り得ないような事を勝手に想像して泣いて喚いて連絡してくる事があるくらいには、さ。
だからちゃんと目に見える形で残してあげるね。僕だってそれでこの幼稚な独占欲がほんの少しは満たされるんだから、ウィンウィンって事で。
下着越しでも暖かさが分かるそこをなぞると、強請る様に僕の手を握る。
どんなに沢山の人からの声援を貰っても、大きな賞を獲っても、都合の良い相手と身体を重ねても、どうにも満たされなかったもの。それを簡単に満たして尚且つこんなに執着させるなんてさ、本当に。
「…なんなんだろう、[FN:名前]って」
『っあ、ん…、ね、ジス…っ』
何かを失うリスクや賭けに出ないと手に入らないなんて、殆どヤバいクスリか悪魔みたいなもんなのに。全然離れる気になれない。そんな事、僕が死にでもしない限り出来そうもない。
僕がそうだって、知ってるんだろうな、彼女は。
知ってて偶にご褒美みたいに僕を欲しがるんだ。そしてそれがフリでも嬉しいんだから、僕も大概頭が悪い。
まあ、[FN:名前]と過ごせるなら別に何でもいいけど。
『あぁ…っ、まって、』
「、は…ごめん、聞いてあげられないかな」
頭の後ろが溶けていくみたいで、熱くて暑くて。他の事が何も考えられなくなるのと同時に、感覚だけが鋭くなる。
なってもっと僕の名前を呼んで、僕だけ見つめて、そして僕だけ欲しがってよ。
肌を食んでも奥を抉っても、もっともっとと思うだけで全然足りない。
本当に、なんなんだろう。こんなに全部で僕を刺激してくるのに、当たり前みたいに振る舞われて。
「ねえ[FN:名前]…っ、」
キスでその唇を塞いで、奥の奥まで貫いて、そのままひとつになっちゃえばいいのに。ドロドロに溶け合って、もう二度と離れられないように。
「好きだよ、凄く好き」
『ん、っ私も…』
君が僕以外に愛してるって言う日が来るのかな、ううん、そんな日が来たら、君ごと壊しちゃえばいいだけの話だね。
そんな事しないで良いように、そうやって可愛く鳴くのは僕の腕の中だけにしてね?
Bad For Me
(君は僕にとって毒でしかないのに、こんなにも、)
.