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ユリが韓国に戻る前日。
俺らの立場で、俺らの関係値で、何がどこまで許されるのかなんて、考えても考えても分からない。
ただ、あの頃見たことがなかったたまに心を無くしたような瞳をする彼女を見ると、何もしないなんて選択肢は無くて。
結局、俺が踏み込むしかない。俺が怖がってちゃダメだ。
何となくだけど、気まずくなったり、嫌われたり、そんな事にはならないだろうなという自信だけはあるから。
「お、」
『あ、お疲れ。』
「ん、お疲れ。もう帰る?」
『うん〜』
「ほんっとすっぴんでも変わらんよな」
『洸人こそ。』
クレンジングシートで擦っているのが心配になるくらい薄い肌は、それでも驚くほどに真っ白で綺麗で。毛並みの整った薄い眉毛がまるでこどもみたいで好きだったな、と思い出せば、過去形じゃない事に気付いて自分でも呆れてしまう。
ユリへの気持ちだけで生きてきたわけじゃなかった。だけど、心から居なくなる事はなかった。俺がもっと大人だったら、男らしく腹を括っていれば、ずっとずっとそう考えては恋しくなっていた。
「なあ、」
『ん〜?』
荷物を纏めて結んでいた髪を解けば、綺麗な金髪が揺れた。
「…俺が昔言った事、まだ覚えてる?」
『……忘れないよ』
優しい言い方だな、と思った。
わざとなのか無意識なのか、彼女の場合は分からない。
「…今言う事じゃないの分かってるけどさ、応えて欲しいとかじゃなくて、俺、気持ち変わってないから。」
『……』
「ごめん、困らせたい訳でもなくて。ただ、なんていうか、…ユリが心の中で想ってる人が居ても、傍に居させて欲しいくらいには、好きだよ。…ごめん、」
言うはずなかった事まで言ってしまって、ああ、だから俺は俺が馬鹿な事が嫌いだ、大嫌いだ。困らせたい訳じゃなかったという何よりの本音は、言葉にしてしまったらただの独りよがりに過ぎない。
『…謝らないでよ。なんて言ったらいいのか、分かんないけど、…ありがとう。』
「…っ」
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