片想いするノボリ






「指差し確認!」
「準備オッケー!」
「めざすは勝利!」
「しゅっ・・・・・・」
「しゅ?」
「・・・・・・・」



 ボクらの日課、朝の声だし確認中にノボリが急に口ごもった。
これを終わらせないと一日が始まらない決まりになってる。決めたのはノボリなのに!ノボリにつぎを催促するけれど・・・ノボリは黙り込んで視線をシビビールみたいにあちこちに泳がせたまま、ぴくりとも動かない!(ついでに顔も真っ赤でちょっと気持ち悪い)このままじゃ埒が明かないからノボリの様子を伺ってボク、びっくりした!



「・・・・こほん、失礼致しました、出発し」
「まったー!」
「? クダリ?」
「いまのこ!なあに?」
「な、なんのことでございましょう」



 あ!ノボリ制帽なおした!うそつくときとか、都合わるいときのノボリのわるい癖!だってたしかにボク、みた!



「さっきの、ボクたちのそばを通った赤いスカートの子!」
「はて、なんのことや・・・」
「そのこの姿をみつけたノボリ、すごくへん!」
「ら・・・・」
「熱っぽい気持ち悪い顔してた!」



 ちょっと言い過ぎたかもしれないけど、でも大体あってる!だって事実、ノボリったらすっごい早口でいいわけばっかり捲し立てながらボクから目をそらそうとしてる!怪しい怪しい怪しい!いいわけなんか全部聞こえないふりをしてノボリの視線を追いかける。だってノボリぜったいぜったいへんなんだもん!ボク、バトルと電車のこと以外であんなかおするノボリはじめてみちゃった!




「あ、それにその子すっごくかわいかった!」
「なっ・・・!?いくらクダリであってもあの方だけはお譲り出来ません!!」
「やっぱりそうなんだ」
「っ!!?くっクダリ!!はかりましたね!!?」
「ノボリが勝手に喋っただけ!ねえノボリあのこがすきなの?すきだよね?すきなんでしょ!」
「ご、誤解です!わた、わたくしが恋なんてそんな・・・そんな・・・・・そんなわけ、」



 ほら、やっぱりそんな顔!恋のことはボクにだってわからないけどノボリのことならなんだってわかる!ノボリがたまにすごくおばかなことだって、だからこうしてボロがでちゃうってことも!あと、じつはすごく純情ってことも知ってる!あは、ダゲキみたいに真っ赤な顔のノボリ、おもしろい!だからボク、とまらなくて・・・つい言っちゃった!



「やっぱり好きなんだ!」
「なっ!」
「ねえねえどういう関係?なまえは?としは?どこに住んでるの?なにしてるこ?」



ぷしゅう、って音をたてるノボリ。おかしくって、だけどそれよりあのこのことが気になるから笑うよりもさきにノボリに詰め寄る。するとノボリ、なんだかぷるぷると震えて、かたく瞼とじて、なんだか変になっちゃった!だけどボク、まだまだとまらない!あのこのこといろいろいっぱいいっぱい聞いてたらノボリ、急にかっ!って目を開くからボクびっくり!



「しゅ、出発進行ーーー!!」
「あっノボリ!ねえまっておしえてってばーーーー!!」
「はなしてくださいまし!!お答えしかねます!」



 確認の口上を叫びながら逃げ出そうとするノボリよりもはやくにボクも駆け出した。おかげでノボリの腰つかんで引き止めることに成功!ノボリはそんなボクを振り払おうとするけれどボク負けない。



「どうしてなの、ノボリ!ボクたちの間に秘密なんてひどい!」
「・・・・・お、お答えできないのです!」
「だからどうして!ノボリのばかばかあのこにノボリのないことないこといいふらしてやる」
「・・・く、クダリ!」



 ノボリを解放して、くるりと踵をかえしたボクの肩を今度はノボリがよわよわしい力でつかんだ。簡単に引き剥がせそうだったけどさすがにかわいそうだからやめておいてあげる。ボクやさしい。ノボリ話してくれるのかな!


「そ、その・・・・・」


 きた!そう叫びそうになったのを必死にこらえて押し黙った。しどろもどろになってもじもじするノボリが煩わしい。はやく!ノボリがんばって!






「・・・・・・・・な、なにも知らないからお答えしかねるのです・・・・」
「・・・・・・・・・・なにも、知らない?」
「・・・・ええ」
「えっと、つまり」



 なにそれ
ボクがそう呟くのとノボリが項垂れるのはほぼ同時だった


(ノボリのはじめての恋のおはなし、)


前サイトより!
20140211

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