正しさに花まるを一生懸命さには



うーん、とシャーペンを唇に当て時が経てば経つほど、頭のそれはより丸っこく不可思議な形に成ってゆく。
もう少しで解けるんじゃ?と眺めてると、時間はあっという間に過ぎていて西日が暑いくらいに射し込んできている。
そろそろ助け舟を出してあげなければ。ずっと分からないままになってしまう。
そう思うには充分なほどなのに、何故、私はすぐ隣にあるそんな横顔に何度も開いた口を噤んでしまうのだろうか。

「弓彦くんってさ、青春に恋してるよね」

「なんだよそれ」

「キラキラしてていいなぁって思って。そこ、使う式間違ってるよ」

やっと開けた口から出てきた言葉はそんなものだった。
課題も、授業も、お世辞にも良くできたものとは言えない。だけど、その横顔は何事にも一生懸命だった。

「………?でもこれ、この前同じような応用問題が出てその時はまるだったぞ!」

「それはこの前の応用問題の式がこれと違うか、先生が問題を間違えただけだよ」

「そ、そうなのか…」

「そう。だから使う式は絶対こっちね。あと少しだから、頑張れ」

この誤魔化しもいつまで通用するだろうか。
いつかその一生懸命さにちゃんとした報いがあることを信じたい。






間違えるという環境を与えられなかった頑張り屋さんに、私は全ての間違えを指摘してあげることができるだろうか