無知



「オレ、相棒となら何だって出来るぜ!」


「……あんまりそういうこと言うもんじゃないと思うよ」
「何だって?出来ないでしょ?」

「ふ、ふぇ……ん、な、お前」

壁に追い詰められ混乱する顔。
純粋無垢で無知で人のことをなーんにも考えていない無神経さに、何故か無性に腹が立った。
ぐっと顔を近づけ、ボタンがいくつか開いた学ランとシャツの間に手を差し入れて首から鎖骨を撫で上げると、目を見開いて顔を紅潮させる。

「なんにも知らないくせに」

「ぁ、そ、んなとこ、ひうっ、んぁ……」

彼の間に置いた足を少し上げ、太ももを彼のソレに擦り合わせると、体を震わせ涙目になりながらも力弱く私の肩を押してくる。
彼の頭が更に私の肩の上に置かれて、水滴がポロポロと垂れてくる。空いた手で耳を指で擽ると体はビクビクと面白いくらい跳ねる。

「気持ちいいんだ?」

「ぁ、ち、ちが……!ふ、ふぁ、だめ、だ、ん、はぁ…っあ」

「…………」
「はぁ、ごめんね弓彦くん。辛かったよね」

「ん、っはぁ…へ、ぇ…?お、わり……?」

「うん、終わり。さすがに好きでもない相棒とはえっちなこと出来ないでしょ?」

軽く溜息を吐いて、頭を撫でるとうるうるとした目にだらしなく開いた口。期待してるようにも見えて、そんな表情にまたしても腹が立ってくる。
これから気まずいなぁと、一瞬でも気が触れた自分の行いに後悔する。
早くこの場を去ろうと踵を返そうとすると、腕を掴まれ先程までの立場とは完全に真逆になったかの形で壁に体を押さえつけられる。

「いった……」

「………んだよ」

「な、なに……?」

「な、なんなんだよ!中途半端で終わってぇ!ぐす、オレの気も知らないでぇっ…!」

「はぁ…?ちょ、ぇ、ひゃっ……」

驚くほど熱を持った手は制服をたくし上げて、直接肌に触れ腰回りを行ったり来たりする。耳はカプカプと噛じられながらも、興奮しているのかいやに篭った吐息が、ぐずと鼻を啜る音と一緒に鼓膜に響いて仕方がない。

「お、お前は、ん、そんなつもりないかもしれないけど!ぐす、はぁ、オレは、ひぐ、んちゅ、お前のこと」

「っあ……弓彦く、ん、落ち着いて、ね、はぁ」

「ん、好きだ、はぁ…っ、ん」
「はぁ、オレ、最初に言ったから、な。ダメだって、ん……好きなコに、あんなことされたら、止められない、よ………」

好き、すき、スキ、と名前を何度も呼ばれながら、散々なくらい耳元で囁く彼は今まで見たことがないくらい艶があって頭がクラクラした。







彼の性格上と家柄的に、気まずい雰囲気にはならないがまぁ逃げられないですよね。