ヤブレター
「一柳は一体どうしたんだ」
「なにが」
「次の模擬裁判について話したいからわざわざ出向いてやったのに邪魔をするなと言われた。何故あんなに考え込んでいるんだ」
「裁判官クラスの子にラブレター貰ったらしいよ。返事考えてるんじゃない?」
「なるほど。それでいつになく不機嫌なんだな」
「別にー不機嫌じゃないよ」
「(無自覚なのか……不機嫌オーラが全開だぞ)」
「そもそも、たかが落ちた大量のノートを拾ってもらった程度で好きになるなんてありえない。絶対ヤバい。夢見てる」
「(特に理由もなくゾッコンになってるお前には死んでも言われたくないな)」
「一柳、何をそんなに考えている。付き合うならさっさと言ってしまえ。もどかしい」
「ん?違うぞ。オレは相棒がいるから付き合えませんって言うぜ」
「でも上手い断り方が思いつかないんだ。なんてったって、一流のオレも流石にラブレターを貰ったのは初めてだからな!」
「………」
「あ、あはは、そっか。弓彦くんらしいね。そうだよね、一流検事になるには恋人なんて作ってられないもんね」
「当然だ!オレと相棒で警視庁ファイルの歴史にも刻み込めるよう日夜励んでいるオレには彼女よりも事件!」
「それに一流の相棒と過ごす時間が減っちまうのは嫌だからな!」
「そっかそっか、じゃあ早いとこ断ってこないとね」
「おう!紙とは言わず、今から伝えてくる!」
「………」
「………」
「だそうだ。良かっ……おい、どうした!し、死ぬな!!お前、今教室のど真ん中で公開告白されたんだぞ!死ぬな!!起きろ!!おい!!!」