鐘がなったらお家に帰りましょう




まだ私が高校生をやっていた頃。
初めて友人と呼べる存在を知り、実にくだらない理由で突き放し、そのまま学校を辞めた。

一年ぶりに聞いた声も、目にした姿も、伝う感情も何一つとして変わってはいなかった。

「お、俺はぁ!!」
「お前と…お前と一緒にいれるならなんだって良かった!」
「だから親父が怖くても頑張れたんだ!」
「なのに、なのに、お前はっひぐ、勝手にどっか行っちゃって、俺の知らないとこで傷ついて強くなって、ぐす、なんでお前はいつも俺から離れてっちゃうんだよぉ!!」

体を丸めて、おもちゃを買ってもらえなかった子どもみたいに泣きじゃくる友人の声はいやに耳に響いた。

「自分が馬鹿だとかお前に全然、全く、及ばないことぐらい、ずび、そんなの、分かってる!」
「でも、でも……」
「それでも、お前と一緒に居たかった…」

自ら孤立する私に無邪気にも話しかけてきて、やれ尊敬する父親が、自分は選ばれた検事でと鼻高々に昼食を食べながら語っていた友人。
嫌いとかそういうのはなかった。

ただ、この法曹界は腐っていた。

事実を捻じ曲げ、嘘を突き通す。白を黒く塗りつぶして、黒を白く覆い被す。
ただひたすらに前だけを向いてキラキラと自分の夢を語る正義に満ちた目ですら濁され、踏みにじられる。いつか残酷な現実に涙を滲ませ目を伏せてしまうのかと思うと私は見ていられなかった。

「………」
「弱かったから、何でも一生懸命になれる弓彦くんを見ていられなかったんだ」
「ごめんね」

屈んで猫みたいに柔らかい髪の毛を撫でると彼の手が空を切って私を突き放した。嗚咽がより酷くなって、鼓膜を通り過ぎ、心にズキズキと突き刺さって仕方がない。
突き放したのは自分なのに、こんな顔をさせてしまったのも自分なのに何故か泣きそうになった。






全部を知っちゃった弓彦ぐらいの話
後から万才の裁判でバーーーン!!と登場して弓彦くんを助ける夢主の演出欲しい