模擬捜査〜人魚姫編〜

「これ、なんで足跡が海に続いてるんだ?」

「写真だと分かりにくいけど、犯人がそのまま海の藻屑になったか、海を泳いで逃げたかのどちらかだよね」

「犯人は人魚姫の可能性があるってことか!この事件が起きた島にもや、やお…ヤオベカニの伝説があるしな!」

「八百比丘尼。人魚の肉を食べて長寿を手に入れた伝説上の人物だね」
「こういう伝説を擬えて行う殺人ってなんかモヤモヤしない?童話の人魚姫、けっこう好きだからそう思うのかな」

「あれか王子に恋をして、美しい声を失ってもなお人間にしてもらうって話か。お前もロマンチストなんだな」

「そう、最後は泡になって消えちゃうやつね」

「え………」
「オレが読んだことのあるやつはちゃんと最後に王子と結婚したよ!おかしいぞお前の読んだ人魚姫!!」

「それは子ども向けの絵本の話ね。ハンス・クリスチャン・アンデルセンが書いた原作は結局、王子と結ばれなくて尾びれを取り戻すために愛する王子を刺し殺そうとするんだけど、それが出来なくて人魚姫は海に身を投げるんだ」
「それで泡になって消えちゃうっていうか、泡になったあとに全く別の存在に生まれ変わるって話」

「それのどこがいいんだよ!」

「うーん、好きな人を想って死ねるとことか?」

「趣味悪いぞ!!」

「そうかなぁ。ほら、最初は溺れかけた王子を助けるとこからだから」
「愛する人の命を救えて、少しだけでもそんな愛する人と幸せな時間を過ごせたんだから、人魚姫も十分だと思うけどなあ。異種族愛って結ばれない方が多いし。別に死んだわけじゃないし」

「ぅ、うう、シビアだなお前…なんでずっと二人で幸せになれないんだよ……絵本では結婚してハッピーエンドだろ……」

「王子が意識取り戻して、最初に見た全く別のお姫様が自分を救ってくれたって勘違いして後からその子と再会して速攻結婚したからかな」

「やっぱ趣味悪いぞ!!!!」


管理人は異種族愛が世界でイチ番好きです