娯楽部〜罰ゲーム編〜



「弓彦くん!」

「ん?どうした相棒」

君が幸せであればそれでいいなんて、そんなことを思っておきながらなんて傲慢なのだろう。

「んーっと…私と、付き合ってください!」

ふと、私の気持ちがどんな形であれ伝わってしまえばと思ってしまうときがある。
異様なくらい緊張してて、自分の願いとは反対に期待が膨らんで、こんな状況を生み出した彼らを恨む他ない。

「……おう、いいぞ」

「え………」

「それで……どこに付き合えばいいんだ?」

「………」
「ゴミ捨て場かな。掃除当番押し付けられてゴミ重いんだよね」

「仕方ないなあ。どこのクラスよりも一早く終わらてやろうぜ!」

走って教室に戻っていく背中に胸を撫で下ろして一安心。思わず頬が緩んで、大きくため息を吐いてしまう。
なに、ちょっとした懸けであり、勝負のようなものだったんだ。落ち込む必要は、ない。

いやあ、本当に弓彦くんが弓彦くんで良かった。

なんて至って彼らしい。うまく濁して正解だったとあははなんて嘲笑しながらも彼の後を追う。


♢♢♢


「あ、おかえり。成功したかな?」

「どう思う?」

「ふん、お前のことだから変に濁したんだろう」

「普通に言ったよ。付き合ってくださいって」

夕暮れの教室。扉を閉めて声のした方に笑顔で向けると顔馴染みの男子生徒二人。

静矢くんと牙琉くん。最近、何故かこの謎のメンバーで放課後、誰もいなくなった教室でトランプゲームをずっと興じている。

「彼のことだ、なんとなく想像はつくけど……なんて返ってきたんだい?」

「どこに付き合えばいいんだーって。ついでに当番のゴミ捨てについてきてもらっちゃった。想像はついてたけど」

「そういうのを濁すと云うんだ。想像はついてたが」

「あはは!ほら、ぼくの言ったとおりだったろメガネくん」

意外と楽しいのだが、ただやっているだけではつまらない、ではどうするか。そうやって決まったのが罰ゲームありのトランプゲームだ。
1位がビリに罰ゲームを指名するものだが、だいたいは静矢くんがビリになるので1位か2位にいれば安牌だったものを、運悪く私がビリっけつに静矢くんが1位をもぎ取るという自体が発生した。

牙琉くんが1位なら簡単にジュースを買ってきて欲しいとかなのに、よりにもよって静矢くんが出した罰ゲームは一柳に告白してこいの一言だった。

「オレは相棒ならなんだって付き合ってやるぜ!って笑顔で元気に帰ってったよ」
「いやー、ホント弓彦くんが弓彦くんで良かった!さ、続き続き!」

「次は何をしようか?ポーカー?ダウト?それともまたセブンブリッジ?」

「大富豪はもうしないのか」

「静矢くんが何回もコンビニに走りに行ってる間に話にならないからやめようってなったんだよ」

「なっ」

「ははは、なら相棒ちゃんは運がないね。初手の引きがあまり良くないことが多い。駆け引きは舌を巻くほど上手いけどね」

「牙琉くんは逆に引きが良すぎるよ」

どこかの誰かが言っていたけれど、配られたカードで勝負するっきゃないっていうのはつくづく、そのとおりだ。
今回は難なくこなせたはいいけど、もう罰ゲームなんて受けるもんじゃないなあ、心臓に悪い。

バラバラとデキるカジノのディーラーのように手早くカードを切っては配る学園一のモテ男に、姿勢良くそれを待つ弓道男児。

次は負けまいと、幾分か先程よりも気合を入れて配られたカードを手に取る。
そして此度も個性溢れる秀才たちと勝負に興じては、勝負という場数を乗り越えていくのだ。



「配られたカードで勝負するっきゃないのさ、それがどういう意味であれ」
スヌーピーの名言集の一つです。