セーターの余り糸



「ぶえっくしょぉん!!」

「うわあ、きたない」

「ううぅ、ごめん……」

「学ランだけじゃさすがに今日は寒いよ」
「マフラー使う?私、ダウン着てるからそんなに寒くないし、あるだけでも違うと思うよ」

「あ、ありがとう……うう、あったけ〜……ん、なんか解れてんなこれ」

「だってそれ、私が小学生のときに初めて編んだやつだし」

「すげぇ長く使ってんだな。新しいの買わないのか?」

「んー、お姉ちゃんに教えてもらったやつだから…なかなか、変えようとは思えないんだよね」

「ム、お前に姉がいるなんて初耳だぞ」

「本当のじゃなくて遠縁っていうか、また親戚なんだけどね。なかなか会えない人なんだ」

「お前ん家、親戚多いんだなー。オレは見たこともないぞ自分の親戚」

「まぁ、山中の里だから…出ていかない限りはだいたいが身内だよ」

「それなのにその姉には中々会えないんだな」

「そうそう、遠くに住んでてね」
「小さい頃から、毎日家のこと怠けてぐーたらしてたら叔母さまにね」
「ぁあぁ〜たのような忌み子、いっぺん極寒の滝にでも打たれてその愚かさを流してもらいなさいな!!って超寒い真冬の中、超遠い山奥に着物1枚で放りだされたことがあってさ」

「ええ、死んじまうだろ!酷いな!……っていうか、ずっと思ってたけど、お前のオバサマってホントにその喋り方なのか?」

「ホント、ホント。クセあるでしょ?でね、そこの山奥の道場に住んでたのがそのお姉さんと住職さんなんだ」
「すごく優しくてさ、嫌なら滝に打たれなくていいって言うし、ノロノロしててもペースを合わせてくれるし、部屋も温かくて心地良いし、物の教え方も優しくてもうその山奥にいる間は天国だったんだよね」

「……お前一体どんな家に住んでんだ?」

「んー血筋と才能と性別によって格差が生まれる家?」

「へ、へー……じゃ、じゃあ家の親戚の人たちもそういう格差があったのかよ!」

「家の親戚の方たちは雲の上の人たちだからさ。私とは扱いが全然違うよ。才能があるから」
「まぁ、そんなお姉さんが私のこと、本当の妹みたいに接してくれてね。その人に逢いたくて、バスの乗り方も覚えたし、ひねくれずに済んだし、編み物もその人に教えて貰ったから」

「へー!じゃあ、いずれ相棒を良い子に育ててくれてありがとうございますって挨拶に行かなきゃだな!」

「うん!お姉ちゃんもビキニさんもきっと喜んでくれるよ」

「ビキニ????????????」