同じ穴の狢

※裁判3-1パロ



「確かに、その小瓶の中身は毒です。目的があって、それを薬品の棚から盗りました」
「調べれば…確実に毒が出てくると思います。もちろん、使おうなんて思ってもいませんでした。それが、その、いつの間にか瓶がなくなっていて…でもこれだけは言えます。私はやっていません」

「…ほ、ほら相棒はやってないんだ!!無実は確実さ!」

「イチヤナギくん、彼女を信じたいのは分かる。私も信じたい。だからこそ、謎があるのならばそれを私達は解明しなければならない。それが大事な人ならば尚更、な」

「……!」
「う、ぅぅう……ぐす、うっうっ、なんで、なんでだよミツルギ検事ィ…!相棒は、相棒はやってないって…このままじゃ……相棒は殺人者になっちまうのにぃ!みんな相棒のことなんて、ほんとうは…本当は信じてないじゃないかぁ!!うう、ぐす、うわぁああぁぁぁあん!!」

「う、うおおおお!な、い、イチヤナギくんやめたまえ!」

「あ!イ、イチヤナギさんが証拠品を持って…!」

「弓彦くん!!」



♢♢♢



「こらアンタっ!ダメじゃないッスか!これが裁判だったら重罪ッス!」

「う、うう……すみません…」

「刑事、イチヤナギくんの気持ちも理解できなくはない。証拠品は戻ってきたんだ。良しとしよう」

「……」
「そ、それが御剣検事。一つだけ、戻ってきてないッス…」

「……なんだと?」

「まだ調べていないガラス製の小さい小瓶ッス。あれに毒が見つかれば確実に…」

「イチヤナギくん」

「う、う、だって、だって、アレがあるから相棒は……」

「ゆ、弓彦くん…」

「これでもまだ話す気になれないかね」

「う、す、すみません…それは…ちょっと」

「……分かった。ならばこちらで解き明かそう」
「イチヤナギくん。持っていった瓶を返したまえ。安心してほしい、彼女が何故、毒薬を盗むに至ったか…こちらはそれを証明する準備が」

「………ました」

「……?」

「た、食べちゃいました…あの瓶」

「え」

「た、食べたってどういうことですか…?」

「え、たべ?え、ゆ、ゆみ、ひこくん…?」

「な、なんスとぉぉぉぉおおおおお?!?!!」

「イチヤナギくん!!き、君はな、なんてことを……!と、というよりも」

「弓彦くん!!!」

「ウギャァッ、ちが、あ、相棒うう……お、ぉ、おれぇ…」

「だ、大丈夫なの?!体は!?気持ち悪くない?!?!あ、あれは…あれは少量でも摂取したら死んじゃう、即効性の猛毒なんだよ!?…っ、どう、しよう……っぁ、は…あ、きゅ、きゅうきゅうしゃ、わ、私、ど、うしよ、は、っ、ゆ、ゆみひこくんが」

「わー!た、大変です!ミツルギさん!パニック起こしちゃってます!!」

「お、落ち着きたまえ!!イチヤナギくん、何とも無いのか?!」

「え、え……お、おれ、だって小さい瓶だったから夢中で噛み砕いて…で、でも!さっき毒は甘いって、あれ何にも味もしなければ水も入ってなかったぞ!!」

「え……」

「あ、あれ、だってその小瓶に毒が入ってたから怪しまれてたんですよね?じゃあ…」

「それに!オレは走りながら瓶を噛んで飲み込んだから、デカ刑事がオレを引きずって来てる頃にはとっくのとうに死んでるぜ!」

「ム、ム…それはおかしいな……」

「ワ、ワハハハハ!!どうだ!やっぱり、相棒は無実なのさ!そうじゃなきゃ、オレはさっさと死んでたんだからな!」

「…………」

「……息を整えながら、見たこともないこの世の終わりみたいな顔で睨んでますね」

「……そりゃそッス。あわよくば好きなコが死んでたんスから」

「う、ご、ごめんなさい……」

「(もう一度、考え直してみるか……)」



君は今の弓彦と同じことをやってたんだよってことを知らしめたいなと思って書きました。