事件file〜一流VS一流〜

「それでは、これより開廷いたします。検察側、弁護側ともに準備は出来ておりますか?」

「フッ!準備が出来てないのは二流…いや、三流以下だぜ」

「…………」

「弁護側、準備はよろしいですか?」

「(ま、まさか……こんなことになるなんてなあ)」



♢♢♢♢


「な、何言ってるんですか?!」

「あれ、聞いてなかった?もう一回、一から説明す……」

「いや、事件の概要は理解しましたけど!弁護席に立ってほしいって……」

「いやね、ぼくらがお世話になってる商店街の肉屋の店主が事件の被告人でさ。あのオジさん、過去にちょっと暴力団関係で色々ありすぎて弁護、引き受けてくれる人いなくて困ってるんだ。でも絶対無実だから。だから君に」

「できるわけないじゃないですか!!私、弁護士資格持ってないですけれど!」

「ふふふ、大丈夫。それなら……マヨイちゃん」

「じゃじゃーん、事務所から持ってきた弁護士バッジ!」
「……よぉーし、これでオッケー!よく似合うよ、さすがあたしの血筋なだけあるね!」

「…………」
「これ、誰の弁護士バッジなんですか……?成歩堂さんのは1年前に取り上げられてるから……ま、まさか……」

「…………えへ」

「……あの人も喜んでるよ。弁護士バッジを付けた君の姿を見れる日が来るなんて、って。じゃ、ぼくはみぬきの授業参観に行ってくるから。あとよろしくね、頑張って」

「…え、い、いてくれないんですか?!え!?ていうか無資格でどうやって」

「ぼくは、って言っただろ。最強の血筋で必ず無罪を勝ち取ってくれよ。あそこの肉屋が潰れたら、成歩堂家は肉が食べれなくなるからさ」
「大丈夫、大丈夫。御剣はぼくの弁護士バッジで弁護席立ってもバレなかったから」

「(なにも大丈夫じゃないでしょそれ!!)」


♢♢♢♢


「__綾里弁護士、綾里千宵美!」

「呼ばれてるよ、綾里弁護士」

「……え、う、あ、ハイ!……あ、綾里ち、チヨミ…?」

「弁護引き受けの名前の登録が前日までに必要だったから、昨日、テキトウに考えた名前であたしが提出しちゃった」
「旧姓にお姉ちゃんの"チ"にあたしの"ヨ"にはみちゃんの"ミ"で綾里千宵美ちゃん!どう?」

「ど、どうって……」
「(血筋ながら、無理やりすぎる……)」

「……それで、綾里弁護士。準備の方は」

「あ、ハ、ハイ!もちろん!弁護側、じゅ、準備完了しておりますとも!」

「よろしい。今回、弁護人は初めて法廷に立たれるそうですね。検察側も弁護側も同じく20歳の若手。双方、まだお若いのに大変優秀ですな」

「……オレはいつしか、このときが来るのを待っていたのかもしれないな」
「この一皮剥けた一流であるオレが、今日は初めて法廷に立つとかいうそこのあいぼ……んん゙、弁護士をべちょんべちょんにしてやるさ!」

「(できればけちょんけちょんでお願いしたいなあ……勝つけど)」
「真宵さま、担当検事は亜内さんだと先ほど仰ってませんでしたか?」

「インフルエンザだって」
「ナルホドくんがミツルギ検事にいい人いないかって昨日の夕方に掛け合ったら、今日突発的にイチヤナギ検事が出てきたって感じだね」

「………なるほど」
「なれば、一柳検事」

「んおおお!机叩きながら睨むなよ!!……なんだ!あ、あい…い、いち、三流弁護士!」

「……たとえ相手が貴方であろうと全力で戦う一心であります。弁護側は、被告人の完全無罪を必ずや立証してみせましょう!」

「…………」
「う、ううう、なんかその目と手ぇ……カルマ検事みたいでヤだ………」

「一柳検事!なんですかその恋人に向ける泣き虫駄々っ子のようなそれは!!冒頭弁論すらまだなのですぞ!!早くなさい!!」

「………なんか、この裁判…思いの外長引きそうだね……」

「(……突発的に検事席に立った弓彦くんが事件の概要を理解してるかが今回の"カギ"だね)」
「(このバッジでここに立つからには……容赦なく突っ込んでいかなきゃ。被告人のためにも)」




記念すべき"101話"です。
ずっとやりたかったお話でした。