一流の誘拐犯

※弓彦が幼い夢主を誘拐する


「あの……お兄さん」

「!……ど、どうした?!寒いか?!……あ!お腹が減ったとかか?!」

「ううん。とっても温かいから大丈夫。ご飯は12時頃に食べたし、デザートも貰えたからお腹いっぱいだよ」

「そっか……良かった……」
「で、なんかあったのか?オレが仕事してる間に辛いことでもあったか?あ、暇だったとか……」

「ううん。お兄さんの本、全部面白くて……いま半分読み終えたくらいかな。全然暇じゃないよ」
「辛いこと……っていうか、その」

「も、もう半分も終わったのか……さすがだな…なら明日、新しいの買ってきてやるからな!」
「ん……なんでも言っていいぞ?」

「えっと……私は何もしなくていいの?」

「………ん?」

「私は誘拐してもお金にならないですって謝ったらそうじゃないって昨日、ものすごく怒ってたから……」
「じゃ、じゃあ、そのそういう……その……や、やらしいことするのかなって」

「ぶっっっっっっ」

「わあ、汚い」

「げほっ、げへっ、うぇ、げほっど、どっから、うぇっ、そんなこと覚えてくるんだ!!お前まだ中学生だろ!!す、するわけ無いだろ!!」

「あ、あう……お茶、ひっくり返ってるよ…」
「え、えっと、お兄さんが用意してくれたミステリー小説にそういうのが………」

「今すぐ寄越せ!!それはもう読んじゃダメだ!!これだからミステリーオタクはよぉ!!」

「ぁ、あう……ごめんなさい……」
「そう、だよね。お兄さん、ロリコンには見えないし……私、その、ロリコンっていうには身長が高いし、そもそもそこまで可愛くな」

「お前は世界で一番、いや宇宙のお星さまの中でも一等一番可愛いからそんなことぜっっっっっったいに言うな!!!」

「………」

「(真っ赤になりながらドン引いてる…………)」

「………じゃ、じゃあなんで、誘拐したの……?」

「………」
「お前…家にいても辛いだけだろ。………だ、だか、ら……」

「……!」
「え、あ…お、お兄さんなんで知ってるの……?泣いてるの……?な、なんで、あ、ぇ……わたし、悪いこと言っ、た…?」

「う、な、泣いてねえよ!お、お前が、たくさん辛い目に合う前にオレは、ぐす、お前にたくさん笑ってほしかったの!それだけだよ!」

「………」
「お兄さん、何歳?」

「ずっ……じゅ、19」

「……私のお家、男の人全く居ないんだ」

「知ってる」

「…どのくらい私のこと知ってるの?」

「血液型も誕生日も、好きな食べ物とか、ぐす、好きな本とか、好きな人のこととか……家族も、将来の夢も、嫌なことや怖いものも……全部、ぜんぶ、知ってるよ。うっ、ひっぐ…世界で一番、お前の家族よりも、おまえのこと、知ってる自信が、っあるもん……」

「………」
「ごめんね。お兄さん、もう聞かない。ごめんね」

「ぅ、うう、なんでお前がオレを抱きしめるんだよ……普通、逆なんだぞ…ぐす、ひっ、うう……」

「……私、今全然辛くないよ。お兄さんに昨日初めて会ったはずなのに…そんな気がしないから。ご飯も温かくて美味しいし、部屋も暖かいし、本も私の好きなものばっかで誰にも邪魔されず、ずっと好きなだけ読んでられて…とっても楽しい」
「……え、えっと、だから、もう泣かないで。お兄さんが泣いてると、なんだかとっても…辛いの」