事件file〜竹取物語の影〜



「いってぇーな!離せよッ!!」
「なぁ、ミツルギィ!信じてくれよ!オレじゃねぇんだってばぁ!!オレはただ、愛しいかぐや姫ちゃんに月の石をあげたかっただけなんだって!」

「それでこの館に侵入してキサマは今、強盗殺人事件の容疑者として捕らえられているのだ。そのくらい分かるだろう」

「だーかーらー、かぐや姫ちゃんがこの館に入ってくのを見たんだよオレは!」
「きっとカワイソウなかぐや姫ちゃんは月の石が欲しくてここに入ったんだよ!そんで帰っちまったんだよあの月に!」

「じゃあ、ヤハリさんはそのかぐや姫ちゃんが強盗殺人の犯人だって言いたいんですか?」

「んなワケねぇだろミクモちゃん!あんなミニスカ着物を身に纏った地球も慄く清廉な美少女が強盗殺人なんか犯すワケ」

「……ミニスカ着物?」

「……ヤハリ、その裾の短い着物を纏った女性とやらどこで出会ったんだ」

「え?聞いちゃう?やっぱ可愛い子ってなるとミツルギも気になるよなぁ〜!」
「しっかたねぇなぁ!オレと彼女の竹取物語、聞かせちゃおっかな〜!!」

「御託はいい、早く言え」

「ちぇっ、つまんねーヤツ。2時間くらい前だったかな。この月の館の閉館直前ぐらいの時間に人気のない道を歩いてたら、ぶつかっちまったんだよかぐや姫ちゃんに!」
「大丈夫ですか?ってめちゃくちゃ心配してくれてよォー、もう運命かと思っちまったよ!」

「(だいたいの人が心配するだろうな、ぶつかったら)」

「もうそれはそれは美しくってよ〜!睫毛が長くて肌が白くて、困り眉とぷるっぷるの唇が可愛くて、今にも消えちまいそうな儚げな子だったな…葉櫻院のあやめちゃんにも負けてねえって、あれは!」

「(むしろ君の中で誰かに負ける女性がいるのか……?)」

「真っ暗な路地だったのに月の光が彼女を照らしててよ…オレ、元カノのサキが忘れられなかったのに、もうあの子に出会ったその時、今、ここでこのかぐや姫ちゃんと結婚して月に帰ろう!って思ったんだよ」
「そんで声かけようとしたら、いきなりハッとして急いでるんで!すみません!って可愛い声で空高くなんと月に向かって飛んだわけ!!それを追いかけてったら…」

「この月の館に着いた訳か」

「そういうことだ!いやぁ、話が早くて助かるなミツルギはぁ!」
「きっとあの子、ここで月の石を探してたんだな。あれを持って月に帰ろうとしたんだぜ!」

「……ついでに紹介してやろう。そのキサマのかぐや姫とやらを」

「御剣検事!事情聴取終わりました。私の次に館長さんが…」

「ああああああ!!!」
「か、かぐや姫ちゃん!!!!」

「………………………あ!さっきぶつかった…」

「やっぱりそうだったんだ…」

「ミクモちゃん、もしかしてかぐや姫ちゃんのお友達?!いやぁー、運命だなまさに!運命!こんなとこで再会できるなんて……やっぱり、オレはかぐや姫に月の石を献上する竹取物語の王子様だったってワケだな!」

「(献上されたものが偽物ばかりで結局、かぐや姫は誰とも結婚せずに月に帰ったがな)」

「御剣検事とミクモちゃんのお知り合いですか?」

「……矢張政志、といえばキミもわかるのでは」

「…え!この方があの噂のヤッパリさんなんですか?わあ、お会い出来て嬉しいです!」

「ええええ!なんだよ、ミツルギ!知り合いなのかよかぐや姫ちゃん…いや、かぐやちゃんと!!いやあ…オレのこと知ってるなんて…ってオレ、ヤハリなんだけど……まぁいいや、へへ、また会えて嬉し」

「こらああああああ、お前えええええええええ!!!!」

「(…ついにややこしくなってきたな)」

「……あ!あの時のバカ検事!なんだよ!王子とかぐや姫ちゃんの間に入るなよな!!」

「誰が王子で誰がかぐや姫ちゃんだ!!相棒にヤラシイ笑みを浮かべるな!手を離せ!!」

「「「(バカは否定しないのか……)」」」

「うるせぇ!!お前、オレのかぐやちゃんの肩なんか抱きやがってよぉ!なんなんだよ!おい、ミツルギィ!!!アイツはかぐやちゃんのなんなの!!」

「紹介してやろう。彼はかぐや姫の今カレだ」

「…………」
「な、なんだとおおおおおおおおおおお!!」

「わっはっはっはっ!今だけじゃねぇからな!ずっと彼氏なんだからズッ彼だぜ!!履き違えるなよなオッサン!!」

「……男の人ってなんか変なこだわりありますよね、ソコ?!みたいな」

「私、なんで勝手にかぐや姫になってるんだろ」

「気にすることはない。彼らは放っておいて、館の調査を続けるとしよう」


やっとヤハリ出せました