キミクダクココロスコープ



「被害者の執務室に入ったとき、後ろから誰かに殴られて気を失いました」
「その後、何か温かいものが顔に触れて目が覚めたんです。目の前には、倒れる被害者と大量の血が広がっていました」
「押収されたキーケースは思わず、ポケットに入れてきてしまったのかと…。まさか、凶器である小型ナイフが入っているなんて思いませんでした」

「うーん……」
「希月さん、本当にイチヤナギ捜査官は感情が暴走してるんだよね?」

「はい!もうガッサガサのバッリバリです!」

「ぜ、全然そんなふうに見えないけど……」

「そうですね…顔を見ても分からないと思いますが、感情と意志がどんどん、グチャグチャのバラバラになってますね」
「先ほどから上手くツギハギに誤魔化して証言してますが、これ以上無理をさせると精神が解離して崩壊する恐れがあります!」

「え、えええ!た、確かに、さっきから誰かをかばうみたいに証言をしてるけど…」

「イチヤナギさんが誰かをかばうなんて、私、世界で一人しかいないんじゃないかと思います」

「でもイチヤナギ捜査官の記憶…違うと思うんだよな。あの人の証拠と食い違ってる。それをどうにか…」

「なら先に、より大きい感情の波を指摘してあげてください。どうしてそんな感情に至ったのか、証言の前後やその時の感情の爆発を見ればアキラカだと思うので!そこから、記憶のムジュンを証拠で叩きつけちゃってください!」
「でもまさかイチヤナギさんの証言を砕くのが、かばってる本人が出してきた証拠なんてイチヤナギさん、思いもしないでしょうね……これは一体どういうことなんでしょう…」

「それはこれから分かるさ。ありがとう希月さん」
「(さすがはイチヤナギ捜査官。カンペキな証言だ…。でも確実に少しずつだけど、証言が綻びはじめてる)」
「(感情のムジュンから記憶のムジュンを見つける…。そして、イチヤナギ捜査官を早く解放してあげるんだ!)」