宣言くらいさせてください


「何これ沖田くんどうしたのこれ」
「旦那、とりあえず死んでくだせェ」

銀時が入ってくるや否や沖田は銀時をねじ伏せその上にまたがり、彼の首元に刀を当てた。
あまりに突然の出来事に銀時は冷や汗を浮かべるしかない。

「はぁ…おいやめろ総悟。俺たちが罪もねぇ民間人を切ったとなりゃ流石にまずい」
「何言ってんですかィ土方さん。罪ならあるでしょ、ましろさんに変な感情抱いたって罪が」
「お前がなに言ってるアルか。恋愛は自由ネ。そんなこと言ったらこの世の中の大半が罪人さ、フッ」
「グラさんだ、急にグラさん出てきたよ」


新八がツッコんだところでようやくましろが沖田を止めに入った。
大人しく刀を鞘に納めた沖田はムッとした顔をしてましろに尋ねる。

「それにしてもましろさん何で俺に言ってくれなかったんですかィ?」
「え、なにを?」
「なにをって…旦那に好かれて困ってるってこと」

ましろはきょとんとした顔からみるみるうちに頬を赤く染めた。

「こ、ここ困ってる、わけでは、なくてねそのっ!銀さんが普段通り接するから私もそうしてたってだけで、その!」

沖田は余程ショックをを受けたのか、目を見開きましろを激しく揺さぶった。

「それじゃあ何だ、ましろさんも旦那を好きって言うんですかィ!?」
「え!?いや、それもまた違うんだけど…ってうえええええ…総悟やめて!酔う!酔うから!」


見かねた近藤がましろから沖田を引き離し、完全に放置されている銀時を席に座らせた。
銀時は明らかに不機嫌そうな顔をしている。それもそうだ、呼ばれて来ただけなのに殺されかけるわましろも自分を好きなのか?と期待したら瞬時にしてそれを否定されるわ、散々である。

「いやーましろも万事屋もすまんすまん!ましろのことになるとこいつは中々手に負えんくてな!」

近藤がガハハ!と豪快に笑うが、場の空気は非常に悪い。
土方は俺たちは帰った方がいいんじゃねぇの?と言うように近藤の脇腹を肘でつついた。それに気付いたのか近藤も小さく頷き、沖田の襟首を掴み店の出入り口に向かう。


「そ、それじゃましろ!俺たちは巡回にもどる!今日仕事後にまたくるから代金はツケといてくれ!」
「え、ああ、私が誘ったんだからお支払いは必要ないですよ。でもいらっしゃるのは待ってます、また後で」
「まだ帰りやせんぜ」


沖田は珍しく近藤に逆らい、パンッと制服を正した。
そしてカウンター席に座っている銀時の正面で肘をつきニヤリと睨みつける。


「旦那ァ、はっきりさせときやしょーや。あんた、本気でましろさんのこと好きなんですかィ?」
「…なんだなんだ沖田くん。お前はましろの親衛隊かなんかですか?」
「まぁ似たようなもんでさァ。で、どうなんです」

新八や神楽、土方や近藤でさえ沖田を制止せず銀時の発言を待った。
ましろは照れ臭いやら困るやらで1人で百面相しているが、誰にもつっこまれることなく放っておかれている。

「お、俺は…」
「俺は?」
「俺は、ましろの事が好き、だ。自分でも気持ち悪りぃが…」

はっきりと言われたましろはボンっと顔を赤くし倒れた。が、その後に続いた気持ち悪りぃと言う言葉にムキーっと怒りすぐに立ち上がった。

「どうしてそう素直じゃないの!私という美少女に惚れるのは仕方ないにしても、気持ち悪いは余計だ!」
「そうでさァ。気持ち悪いたぁどういう了見だ」
「や、総悟くん?美少女にツッコんでいいんだよ?受け入れられると私途端に恥ずかしいよ?」


そんなやりとりに周りの面々はハァ、と呆れ返っている。
結局2人がどうしたいのかわからない。


「で、ましろも銀ちゃんも今後どうするアルか」

神楽が核心を突く。ましろはチラっと銀時を見ると、申し訳なさそうに小声で呟いた。

「その…嬉しくは、あった。でもやっぱり今までがただの喧嘩相手だったし、急に付き合うとかは…わからない」

新八が気まずそうに銀時を見る。しかし彼は予想外に平気そうな顔をしていた。

「ま、そうなるのも当たり前だ。俺自身自分の気持ちに気付きはしても、今すぐ付き合うってなるとどうもしっくりこねぇ」

結局そんな曖昧な事を言う2人に神楽はイラッとしたが本人たちがそれでいいならば仕方ない。
神楽はやり場のない苛立ちを新八の肩を殴る事で落ち着ける。

「だが…」

痛がる新八をよそに神楽は銀時を見上げる。

「だが、まあ、好きは好きなんで。たぶんこれは膨らむ一方なんで…。いつかお前のこと射抜いてやんよ。そん時は、ましろ、素直に俺と付き合え」

ヘラっと言い放つ銀時の頭をましろはバシンッと思い切り叩いた。

「いってぇ!なんだお前!急に暴力振るうんじゃねーよ!」
「うううううるさい!いきなりそんなこと言う銀さんが悪いんじゃないの!」

慌てて後ろを向いたましろを見て、銀時は確信した。

あ、こいついずれ俺に落ちるな、と。




(耳真っ赤にして強がってんじゃねーよ)

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