■ 真っ白な

「帰りたーい…。」


放課後、吹奏楽部の奏でる楽器の音が聴こえる。トランペットかな、この音が聴こえてくると夕方って感じがする。
教室は薄暗い。席に着いている生徒はわたしだけ。


まぁようするに、居残り組。



「こっちだって面倒いんや。はよ終わらせろ。」



言い忘れていたけど、この教室にはもう1人、教師であるオサムちゃんがいる。
わたしを居残りさせてる張本人。


「面倒ならさ、逃がしてよ。」
「逃がすわけないやろ。お前、何回テスト白紙で出すねん。」
「解らないものはしょうがないでしょ。」
「限度っつーもんを考えろ。」


だってこの時期といったら青春でしょ?
わたしには勉強してる暇なんてないの。

って言ったら軽く叩かれた。



「お前なぁ…親御さんの気持ち考えたことあるか?」
「…ないけど。」
「悲しんではるで。」
「……」
「だからせめて白紙は止めて下さい。」
「はーい。」



心のこもっていない返事。これからもオサムちゃんのテストに解答する気はないから。
オサムちゃんはわかってない。
わたし、他の教科はばっちり解答してる。中々良い点とってる。

ねぇ気付いてよ。
白紙のテストは貴方と二人になるための材料。


「逃して」


なんて思ってないよ。
オサムちゃん、貴方が


「逃がさん」


って言ってくれるのを待ってるだけなんだ。


そんな一言にキュンとくる。
大好きだから。



「オサムちゃーん」

「ん?」

「早く気付いてね。」

「……は?」




真っ白な

臆病者のラブレター