■ 我ら立海レンジャー!

「こちら名前であります!仁王隊員!応答願う!」
「異常なし」
「よし!赤也隊員!一緒に赤髪肥満一歩手前怪人を成敗しにいくぞ!」
「おーー!」
「ちょいまち」
「いたっ!」


今いい感じに盛り上がっていたのにブンちゃんにチョップされた。


何が盛り上がってたかって、このヒーローごっこさ。今日は暑すぎて部活も休みになったし、マネージャーである私の提案で4人で遊ぶことになった。
でもヒーローごっこしようと言い出したのは他でもない、仁王である。謎だ。


「そもそも俺が怪人とかありえないだろい?こんなイケメンな敵がいてたまるかってーの」
「突っ込むべきはそこじゃないんじゃがな」
「なにを言うブンちゃん!赤髪肥満一歩手前怪人なんて、このメンバーの中でブンちゃん以外にできるわけないじゃない!」
「そういうのをいじめと言います。名前のネーミングセンスどうにかならないのかよ。赤也もすんなりうけいれてんじゃねえ」
「や、名前先輩はめちゃめちゃネーミングセンスありますって」


赤也がブンちゃんにバックドロップをかけられそうになっているのを尻目に私は考えた。
三人のヒーローって微妙だからここは四人でヒーローをしよう!
…そうなると怪人はどうなる?いっそ空想で怪人は補うか。いけるいける、私達ならいける。

「ねえ仁王。四人でヒーローしたらさ、レッドが赤也、ピンクが私、ブルーが仁王、黄色がブンちゃんだよね。キャラ的に」
「名前のキャラがピンク…じゃと?」
「それでさ、敵は真田でよくない?空想の真田」
「(聞こえないフリか)まあ、あいつならピッタリぜよ」

よし、じゃあ真田は帽子たるんどる怪人にしよう。あ、これだと帽子がたるんでるみたいな感じになるけど…ん?帽子がたるんでるってなに?やばい、混乱してきた。まあいいか。そういえばそんなに真剣に考えることでもないわ。


そして私は残りの2人にもこの旨を伝えた。


「おーいいッスね!何より俺がレッドでリーダーってのが最高ッス!」
「真田なら、想像でも迫力ありそうだよな」


よっしゃ、そうと決まれば早速ヒーローショーの開始だ!


ピロロロ〜♪ピヒョッピロロ〜♪
これはそう、ヒーローのテーマ。


「口笛とは経済的じゃな」
「しっ仁王!雰囲気でるぶんいいじゃない!」


ピロロロ〜♪


「キレたら見境なく襲いかかる!赤レンジャー!」

「戦うより食うほうが得意!黄レンジャー!」

「暑いから本当はもう帰りたい青レンジャー」

「華やか可憐な紅一点!桃レンジャー!」


ズドーーーーーン!
これはそう、ヒーローがポーズを決めた後よく後ろの方で燃え盛っているあの謎の爆発の音。



「…お前たち何してるんだ」
「本当に帽子たるんどる怪人がでたわよ!!」
「え、やばい!副部長の幻がみえる!名前先輩俺暑すぎて今幻見てるっス!」
「落ち着け赤也、あれは本物じゃ」
「…この辺りをジョギングしていたんだ。俺個人の感想だが、おまえたちのヒーロー戦隊はなにも守れずに終わると思うぞ。そしてなにより、そんなことするくらいなら勉強をしろ…」

登場のときのポージングのまま帽子たるんどる怪人に呆れながらダメ出しをくらい、なんだか自分たちがやっていることはとてつもなく馬鹿らしいんじゃないかと気づかされ、このポーズも妙に恥ずかしくなった。

驚くべきことに帽子たるんどる怪人は物理的ではなく、精神的に攻めてくる怪人だったのだ。


すっかり意気消沈した私たちは真っ昼間の公園を後にした。


でもこれが、怪人夏でも長ジャージ計算細目男や怪人常に不適な笑み浮かべ魔王じゃなくてよかったと思ったのは私たち立海レンジャー全員に当てはまることだっただろうよ。



我ら立海れんじゃー!
夏休みは大体みんなテンションあがるものだもんね


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中学生な彼らもまたよし