■ さあ手を合わせて

『男って狼なんだよ』
誰かが言っていた。


「総悟いらっしゃい!お疲れ様」


1日の仕事を終え、今日は真選組の屯所に戻らず大事な女の元へ行く。


「ホント、あんな上司疲れるぜィ。いっそのこと副長の座譲っていなくなってくれねぇかなー」
「総悟ったらまたそんなこと言って。ホントは土方さんのこと好きなくせに」
「鳥肌立つようなこと言うもんじゃねぇよ。誰が誰を好きだって?」
「総悟が土方さんを好き」
「……押し倒すぞてめぇ」
「あはは!照れ隠しー!」


ケタケタと笑ってみせる名前。こいつと喋っていると調子が狂う。
大体俺が土方さんを好きなわけがない。


むしろ敵だ、敵。


「なんだかんだ言ってずっと一緒にいるじゃない」
「あれは昔からの腐れ縁」
「はいはい、腐れ縁ね。でも私は近藤さん、土方さん、総悟が一緒に江戸を護る姿が凄く好き。これからもその縁を大切に皆で頑張ってね」
「……」



俺達3人が好き
なんか納得いかない



名前が見るのは俺だけでいいのに。


「名前」

こいこいと手招きをする。


「なに?ひゃっ!」
「いい匂い…甘い匂い…」
「そ、総悟?いきなり甘えるなんて珍しいね。なんかあった?」
「あった」
「どーしたの?」
「名前が…俺以外の奴を好きって」
「え、あ、さっきのこと?あれは護る姿が、だよ」
「どんな形でも名前が見るのは俺だけでいい」
「総悟…」


我ながら子供くさい。
名前を後ろから抱きしめる。顔をみせられない。柄にもないことを言ってしまってどうしようもなく気恥ずかしい。
こいつと居るとこういうことが多々ある。


「ほんとおバカね!私はいつも総悟しかみてないよ。大好きなんだもん」


振りかえって言った名前。
あぁ、だから俺はこいつが好きなんだ。

恥ずかしいだろう台詞をはっきりと聴かせてくれる。顔には羞恥の色が残ってるけど、それがまたそそる。


こんな時まで出ちまう、S心ってやつかね。

「……安心した?総悟」
「全然」
「えぇっ!じゃあどうしたら…」
「キス」
「はい?」
「名前からキスして、俺に」
「な、なななっ!」
「はやく」


唸ったり顔をそらしたりして照れる名前。
俺は別に最初から心配なんてしてない。ただの幼い嫉妬心を抱いただけだ。
なのに名前が真剣に俺を見つめるもんだから、少しからかいたくもなる。


「あーもうっ!」


覚悟を決めたのかそう言うと、小さなリップ音が聞こえた。
顔を真っ赤にする名前。

だけどまだだ。
こんなんじゃ満足できない。

「はぁ…誰が頬っぺたにしろって言った?キスってなぁこうやるもんだ」
「え、ちょっとまっ…!ん…そう、ご…っ」
「ごちそうさま」
「〜〜っ」



唇ついでに首筋にもう一つ。
こいつは俺のもんだっていう証。


『男って狼なんだよ』
あながち間違っちゃいねぇかも。どんな時でも欲は沸き起こるし、うまくコントロールできねぇ。


「名前、俺我慢できない。続き」
「つ、続きって…きゃあ!」

俺も狼だから、いただきます。