■ 3月5日


「幸村先輩!読書中突然すみません!その、今日天気いいですね!ベンチでの読書には最適な日ですね!」

「え?ああ、うん、そうだね。日が当たってとても気持ちいいよ。…ところで君は?」

「あ、私2年の名前っていいます!赤也と同じクラスで…」

「君が名前さんか。ようやく会えたね。赤也がよく話してるよ」

「え!?赤也が!?その、どんなこと話してますか…?」

「んー…君がテニス部を応援してくれてることとか、勉強教えてくれることとか…」

「なんだ、そんな話か…」

「俺のこと、好きなこととか」

「!!?!?」

「あはは、そんな顔しないで。驚きすぎだよ」

「こ、これが驚かずにいられますか…!」

「あれ?赤也に俺に言うように頼んでたんじゃないの?」

「そんなこと頼みません!私は自分の口で幸村先輩に……!」

「俺に?」

「あ、えっと…」

「うん」

「自分の口で、先輩に好きって言いたいって…」

「名前さん、足震えてるよ」

「震えないわけ、ないです。私、ずっと先輩のこと…その、すみませんこんな情けない姿で…!」

「ああ違うよ。なにもバカにしてるわけじゃない。名前さん、隣に座ったら?」

「いいんですか?」

「もちろん」

「それじゃ…失礼します。幸村先輩の隣に座るなんて恐れ多いです…」

「これくらいで恐れ多いって、キミ赤也にきいてた通り面白い子だね」

「赤也、そんなに私のこと話してたんですか…?」

「うん、やけに不自然なくらいね。最初はどうしてキミの話ばかりするんだろうって思ってたよ」

「赤也め…」

「でも話をきくうちにキミのこと魅力的な子だなって思い始めたんだ」

「え…?」

「誰もしたがらない役を進んで引き受けたり、赤也の面倒を根気よく見てくれたり。赤也から聞くキミの話はいつも良い内容ばかりだった」

「…」

「次第に俺から話を振るようになったんだ。名前さん、今日はどうだった?って」

「えっ、と…」

「そして、俺は段々とキミに惹かれていった。顔も知らないのに、おかしいよね」

「幸村先輩…!私そんなこと言われたら勘違いしちゃいます…」

「勘違いじゃないよ。名前さん、キミに会えて確信したよ。俺キミのこと好きみたい」

「先輩……でも、赤也は私の良い部分しか話さなかったんだと思います…。私のことちゃんと知れば先輩は…」

「ううん、聞いていた通り、キミは本当に優しい子だと思ったよ」

「どうしてですか?」

「だって、その手に持ってるダリアの花束、俺へのプレゼントでしょ?」

「…先輩、今日お誕生日だから」

「うん、しかも俺の大好きな花だ。蓮二に教えてもらったんだよね」

「…全部バレてたんですね。赤也が幸村先輩のこと知りたいなら柳先輩に聞くのが1番って紹介してくれたんです」

「赤也が言ってた。泣きそうになりながら蓮二に一生懸命俺のこと質問してたって。赤也も悪気があってバラしたんじゃないと思うから叱らないであげてね」

「…赤也のおかげでこうやって勇気出して話せてるんです。感謝しかないですよ」

「ふふ、キミは本当にやさしいね。心配なんてしなくていい。俺やっぱりキミのことちゃんと好きだよ」

「先輩…」

「ダリアにはね、いくつか花言葉があって。その中には裏切り、なんて悪い意味もあるんだけど」

「え!私そんなこと知らなくて…ごめんなさい!」

「ううん、責めてるんじゃないんだ。たしかに悪い意味もある。でもキミが選んでくれたその白いダリアは豊かな愛情っていう意味もある。俺は良い意味のほうでこの花束を受け取るよ」

「…先輩は、私が思ってた以上に優しい方みたいです。今日勇気を出してよかった」

「ありがとう。本当は俺からいくべきだったよね」

「いいえ、自分から言えてよかったです!先輩、大好きです」

「うん、俺もだよ」

「夢みたいです。先輩とこうやって話せて…」

「フフ、これからは赤也を通してじゃなくて、たくさん話そうね」

「はい!…あ」

「どうしたの?」

「幸村先輩、お誕生日おめでとうございます!」




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3月5日 幸村精市誕!
お誕生日おめでとう!