14







彼女、美雲・ギンヌメールとは全く掴めないミステリアス美女だ。

ケイオスの通路ですれ違ってから数日後彼女がワルキューレに入った事を知った。
始めての清掃業務で寮へと続く廊下の掃除中のことだった。

それは風の便りにというわけでもなく、何を隠そう彼女が報告しにやって来たのだった


「貴女ここの寮の清掃員なのね。私はてっきりワルキューレのメンバー候補だとばかり思っていたのに」

「えっと、ここで働かせてもらってます・・。お久しぶりです。ギンヌメールさん」

「ギンヌメールだなんて・・・美雲って呼んで」

「み、美雲さん」

「ふふ・・・それでいいわ。私はワルキューレに入ったの。貴女の事も少し聞いたわ。貴女の歌が早く聞きたい・・・楽しみにしているわ。じゃあね、もちこ」

「は、はいぃ」


艶やかな髪を翻し、長くしなやかな足に光るピンヒールが音を立てて彼女を運んでいく。その姿さえ美しく、まさしく女神のようである。

思わず自分の身体を見るが、やはり貧相この上なかった。どう頑張っても日本人にはあの長い足や肌の白さ、顔の凹凸は手に入りっこないのだ。

彼女はどうやらワルキューレ内でも期待株のようで、抜きん出て成績も良いようだ
そんな凄そうな人がなぜ一般人である私を気にするのか

謎だ

「と言うことが昼間あったんだけどね」
「そんなことより、もちこさん、まさか男子寮の各部屋内の清掃まで仕事内容に含まれてないですよね?」

「いや含まれてますけど」

「・・・・・・」
ちょっとやめてよ
メッサー君の真顔こわ

「えっ、えっ、だってシーツ洗ったり床磨いたりしなくちゃ。お仕事だもん」

「・・・男の部屋ですよ。俺はともかく・・・気をつけて下さいね」

「・・・気をつける・・・?まぁ、空き部屋が多いしシーツ洗濯とかしなくてみべつにいいかなーとは思うけどね。急に入寮する人いるかもだし。お仕事任されてるからには頑張りますよ。ほらほらっシーツもお布団も洗いたて干したてだからフワッフワだよ」

現在居るのが彼、メッサー・イーレフェルトの部屋であり、椅子とベッドに腰かけた状態だ。少し何か考えたような顔だったが、困ったようなため息と共に手元のシーツをひと撫でして「よく眠れそうですね」と言ってくれた。


「褒めていいよ」

「もちこさんすごい。さすが俺の姉さんだ」

「ふっふっふ。いいねこれ。毎日言って」

「いいですよ。特別にタダで引き受けましょう」

「ひゅうひゅう太っ腹・・・って違う違う。話がずれてますよ。」

「そうですか?・・・俺はその美雲さんとはまだ面識が無いんでよくわかりません。」

「そうでしたか」

「そうなんです。何故彼女がもちこさんを気にかけるのか、でしたね。彼女とは面識はありませんが資料データ上では確認しています。ですが名前以外の年齢や身長体重、経歴などを含めほぼ不明です。こんな世の中珍しくも無いのでしょうが。しかしケイオス内部の人間、しかもワルキューレのメンバーなので警戒する必要はないかと思いますが・・・」

「・・・そ。メッサー君が言うならそうなんだろうなぁ。」

なんだかなぁ。
彼女は初めて会った時も、2回目の時もえらく私に興味を持っていたような気がする。私が言うのも悲しくなるが、別にこれといって飛び抜けて素晴らしい何かを持っているわけではない。美貌、身長、体重、それ以外の何か。どれを取っても平凡かつ平均であり、超超超平々凡々なのだ。
裏を返せば何故そんな一般人がここに居るのかと言うことで注目した可能性もあるが。
まさかの珍獣的ポジションなの・・・?

「そんなに気にしなくていいと思います。一般市民がここに滞在して居るのが珍しいんでしょう。一応もちこさんの保護管理者はアラド隊長になっているのでどういう関係なのか気になったのでは」

やっぱり珍獣だったか
ALICE+