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「さぁ・・・・・わかってるわよね?」

薄暗い部屋の中でニヤリ、そう聞こえてきそうなくらい不敵な笑みを浮かべるカナメさん。三日月に歪められた瞳には情けない顔の私が写り込んでいる。彼女の背後には唯一の出口であり入り口である扉がある。
どうやら逃げることができない様にされた様だ。

「逃げられると思わない事ね。これはもう決定事項なの。何をしても覆らない・・・諦めなさいな」

そっと、しかしがっしりと美雲さんに掴まれた腕を振り払うことは叶わなかった。

グイと引っ張られ美雲さんに引き寄せられ、さらには腰を撫でられてもなお、争うすべもなく立ち竦むしかないのだ。それにしてもいつでもこの人は近いしスキンシップ過多だな。純日本人にはつらすぎ

ああ何故こんな事になってしまったのだろう。かくして私は思考の海に旅立ったのである。






デルタ小隊、ワルキューレ共に順調に下準備が整い、潜入捜査、ワクチンライブ、防衛任務と、毎日多忙に活動している。もちろん私も自らに課せられた業務を行ってはいる。
しかし、私にはケイオスという組織に養ってもらい、お給金まで頂いているのだ。

たとえ寮と裸喰娘娘の清掃業務を毎日やったとしても、この世界の右も左も、さらには上も下もわからない私にはその恩恵は計り知れない。

そして何より私が彼らの言う「実験」に協力すればするほどメッサー君の調子は良くなる上に彼の役に立つのだから、やらないわけがない。

実質現状私はイエスマンなのだ。

そして今日も今日とてケイオスは私に実験という魔法の言葉で無理難題をふっかけて来るのである。


さてワルキューレの活動はご存知、ヴァール発生のリスクを減らす活動、すなわちワクチンライブ。様々な星々に出向きライブをするというものだ。
もちろん護衛でデルタ小隊も出動する。

そして、戦場ライブ。
生身で戦場へ出向きヴァールの暴動を鎮圧するのだ。これももちろんデルタ小隊の出番だ。

訓練時での実験、私の歌がメッサー君への効果がそこそこいい感じで安定して成果を挙げているらしいので、今度は実戦で、という事にことが運んだわけだ。

私がすることと言えば、ワルキューレの裏でメッサー君に向けて歌を歌う、もしくはメッサー君の機体に乗せてもらい真後ろで直接サポート。

なのだが

相席は正直避けたい
とても避けたい

これなんでみんな平気なの?
私は無理だ。

ですが私はイエスマンなので戦場ライブの際は相席になります。うっ

死神の名に恥じない超スリリングドライブに私はもう昇天だよ。ほんとに。死ぬ。死ぬから。

だがしかし私は断れません
何故ならイエスマンだから。イエスウーマンだから。





「さー!もちもち逃げ場はない!いい経験だと思って!」
「そう。潔くあきらめて。」
マキナさんとレイナさんがジリジリと近づいて来たところでハッと意識を戻し、彼女たちに改めて向き直る。

「ほ、本気なんですか・・・」
「本気もなにも。ケイネス本部からの要請だもの。今度の惑星での調査の参加。何かあった時はワルキューレと共にヴァール化した人々の鎮圧に協力してもらうわ」
「み、美雲さん近い・・・で、でも私の歌って、皆さんみたいにいろんな人に効果とかってあるのかな・・」

「それがね。驚くべき事が分かったの。」
説明するわ、とカナメさんが部屋の電気をつけ、何やら書類を渡された。
なんで今まで暗い部屋にいたの?
謎・・と思っているとマキナさんが「雰囲気づくりだよ!」と何故か胸を張った。
確かにちょっとシリアスパート臭を漂わせていたような・・・なかったような
うーんないか

手元の資料に目をやると、ワルキューレメンバーの名前が載ったグラフがのっていた。
ん?私の名前もあるぞ?

「見てわかる通りよ。貴方の歌を近くで聞いたワルキューレメンバーの生体フォールド波の数値が大幅に上がっているの。貴方は言うなれば能力増幅が期待されているのよ。」

「んんん・・・」

「目に見えるものではないから実感はしていないでしょうけど・・・私達と一緒に来てもらえないかしら?」

優しいカナメさんは困った様に私を気遣って聞いてくれる。私がいつも断りやすい様にしてくれているのは分かっていた。

「えと・・・わかり、ました。私は、ここにいる間は何でもします。お役に立てそうなら・・・何でも。」

きっと彼女達が行く場所にはメッサー君も行かなくてはいけないのは知っている。

この何日かで、私がここに来てしまった原因も、きっと帰れる原因も彼が関係するんじゃないかと自分の中で結論づけた。彼と一緒にいる事がきっと色んな意味で1番いい。

それに私はここにいる間は、自分の世界に帰れるまでは彼の役に立てるのなら何でもすると決めているのだ。ならば答えはもう出ている。

「私も調査参加します」

困った様に笑うカナメさんが、嬉しそうにありがとう、と言った。

「そうと決まったらー!もちもちのバストウエストヒップ!スリーサイズを測っちゃうよ!」
「ふっふっふ、お覚悟」
「ぎゃーーー!な、なんでっそんな必要なっ、いやーーー!」
「それそれそれー!脱がせ脱がせー」

「え!?あっちょっと待ってマキナ!鍵閉めてないから!ちゃんと鍵閉めてからじゃないと・・・あっ」

「今悲鳴が聞こえましたがどうかしま・・・え?」
「あ゛」
「え?」
「え?」
「ふふっ」

カナメさん越しに見えたのは、ドアを開けた状態で固まるメッサー君が顔を赤、青、蒼白と変えたのちにゆっくりと視線を外す姿。そして驚くべきスピードで扉は閉められたのだった


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