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「ほんとすいませんでした」

夕刻、夕飯時。ワイワイガヤガヤと賑わう裸喰娘娘のカウンター席の隅。
目の前、いや、隣で私はひたすらに謝られている。
口を開けばすいません
こちらが何を言おうとすいません
もはやすいません製造機と化したこの男、メッサー・イーレフェルトを止めることはできないよ。かっこいいクールな男メッサーはどこへ行ってしまったんだ。

どこか一点を見つめて病的なまでに謝り倒して来られるとなんかもう辛い。
何が辛いってこれがすでに30分経ってるってことだ。
誰か来てくれ
私を救ってくれー

というか私的には別にそこまで思うところはない。見られたと言っても、マキナさんに上の服を取り上げられ、下まで脱がそうとしていたところを一瞬見てしまっただけだ。
ちなみにいうと、半裸だったわけでもない。
ちゃんと下着も来ていたし、マキナさんで見えてなかったのでは、と思っている。

さらに言うならば、よくよく周りを見ていただきたい。

みんなびっくり豊満ボディな上に、水着みたいな服の人多いよね。

と言うことで私から思うところは特に無いのだ。何せお互い事故だ。巻き込まれ事故も良いところである。


「おー、珍しい。なんだなんだ?いったいメッサーはどうしたんだ?」

ふらふらとやって来たアラドさんがよっこらせと私の隣に腰を下ろした。

・・・オヤジ臭いな

「うるさい」とデコピンされた。
何にも言ってないのに!

「もちこは顔にすぐ出るからな」

「・・・なんと。気をつけます」
私はどうやら顔でおじさんと言っていたらしい。

「で?何かあったのか?」

「まぁ、ちょっと・・・私が被害者と言うよりかはメッサー君が被害者な感じかな」
ははは
と笑って言うと「なっ!?いえ・・・俺が悪いんです。すいませんでした」

メッサー君の言葉を聞いて、一瞬キョトンとしたアラドさんがブフっと吹き出したかと思うと、こちらに向き直りにっこりと笑みを作った

「もちこは酒は行けるか?なんでもこの店で女子に人気のカクテルがあるらしい。美味いらしいぞ」

「お酒はまぁ好きですけど・・どんなのですか?」

「クラゲエキスの入った甘めの酒さ。メッサーに好きなだけ奢ってもらえ。それでこの件はチャラだ。どうだ?」
メニュー表を指でちょいちょい触りながらアラドさんはニヤリと目を細める。

「えっいやぁ、私は嬉しいけどメッサー君に悪いですよ。ねぇメッサー君」

同意を求めてメッサー君の方に向き直すとアラドさんにコクっと頷くと早速バーカウンターに居たチャックさんの妹さんのマリアンヌさんに注文を通して居た。

「もちこさん。これで許してもらっても良いでしょうか」

「ええ〜逆に悪いなぁ」

「いえ。何杯でもお代わりして下さい」

「へへへじゃあ・・いただきます」

「アラド隊長も一杯どうぞ。すいません助かりました。ありがとうございます」

「なに。いいさ。俺もちょっと飲んで見たかったんだよ。男が1人で飲むには格好がつかんからな」そう言ってウインクを飛ばす。
ナチュラルな仕草とスマートさにちょっとだけ、ほんのちょっとだけキュンときたのは秘密だ。

どうぞ、と渡されたのは華奢なグラスにブルーのグラデーションがとても可愛らしいカクテルだった。

確かにこれはアラドさんが1人で飲むには可愛らしいすぎる。

「ありがとう。メッサー君」

「・・・いいえ。」

口に含むと爽やかな甘さが口の中に広がる。
飲んだことあるようで、初めての様な味がするのはクラゲエキスのせいだろう。
ほわりとアルコールの心地いい酔いが体を巡って気持ちがいい。
なんともこのラグナにぴったりな感じがした。
美味しくてつい頬が緩んでいく。

「確かに美味いな。ちょっと甘いがそれがまたいいな。すまんなメッサー。お前が飲める様になったら奢ろう。」

「・・・はい。ありがとうございます」

そう言ってメッサー君は手元の水を少し飲む。

お酒が入ったふわふわとした頭でふと彼の水を飲む横顔を見る。

なるほど。カウンターにいる彼女が頬を赤らめるのもわかる。
ゆっくりと水を流し込んでいく形のいい薄い唇。しなやかで筋張った男らしい指。上下する喉仏。19という歳にしてはミステリアスな雰囲気と色気。いろんなところで人気を集めているのも頷ける気がする。

じぃ、と見ているのに気がついたメッサー君が、首を傾げてこちらを見てくる。
なんだかそんな姿も魅力的な気がしてくる。

「どうしましたか?」

「や、なんでもない・・・このお酒とっても美味しい。飲める様になったら一緒に飲もうね」

「・・はい。もちろん」

ふわり、とメッサー君が微笑んだ

ほんの少しだけ、ほんの少しだけ。
もしかして彼にとって自分は特別なんじゃないか、私にとって、特別、なのでは
そう思ってしまう
そう期待してしまう

いけないなぁ
きっと私は酔ってる。酔っている故に勝手な妄想に取り憑かれているんだ

そう言い聞かせて、アラドさんへと視線を移す。

甘すぎたのか、違うお酒を注文して飲んで居た。普段のしっかり者はどこかに行ってしまったようで、ふにゃふにゃした顔で美味しそうにつまみを口にして居た。ふと目が合うとふわふわとした笑みでへへへと笑ってくる。

なんだかかわいいな
おっさんとか思ってごめんね
可愛いおっさんだったわ。

「アラドさん・・・なんだか可愛い酔いしてますね。お酒弱いんですか?」

「ん〜?あまり強い方じゃないが・・酒は好きだな〜なんといってもつまみのクラゲが美味い!」
クラゲに酒が合うんだ!と目をキラキラさせて言うところがまた可愛いくて31だなんて思えない

「ま、もちこもなかなかいい顔してるよ。美味いもの食って美味い酒飲んで。新しい物はワクワクするだろう。それでいいんだよ。一緒に行くワクチンライブもきっと新しい物、新しい事、楽しいさ。仕事ではあるが・・・一緒に楽しもうな」

くしゃり、と頭を撫でてくるアラドさんは兄のような父のような、そんな優しさを含んで微笑んで居た。

「メッサーもだ。あまり気負うな。」

じゃあな、そう言って代金を置いて席を立ったアラドさんはメッサー君にも優しく肩を叩き店を出て行った。

「気を、使わせて居たみたいですね。」

「そうみたいだね。おかげで仲直りできたけど」
「そもそも喧嘩はしてないですけどね。まぁでも、普通に話せるようになって、その・・・嬉しいです」

「・・・私も。一緒に頑張ろうね。」

きっとアラドさんが言うように、何事にも悲観的ではいけないのだろう
小さなことを楽しめる余裕を持たなければ、生きていけない事をきっと彼は知っているのだろう。

ほんの少しだけ。
義務や諦めではなく、好奇心と期待を持って挑めそうな気がした。

帰りたい、帰れないと悲観するより帰るまでの間にできる事、感じる事を考えた方が有意義だと
そういう事なのだろう。


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