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日差しも良好

空を見ればビルや空を走るカプセル状の電車、高いビルへと伸びる虹のように空へかかる道、地上を歩けば様々な露店がずらりと道沿いに並ぶも。まるで神社などで行われるお祭りのような雰囲気だ。
本日は雨も降らないらしい。
路上のお店に置かれたスピーカーから流れるニュースを読み上げる陽気な声がそう告げていた。

まさか森を抜けた先にこんな大きな機械都市がそびえ立っていようとは考えもつかなかった。
ラグナとはまた違う、カラフルでお菓子のように可愛い。
まるでおとぎ話のおもちゃの国に迷い込んだようだ。
そして私が今、席についているこの喫茶店もかなり可愛い。お城のような建物は内装も外装も上品でいて非常に可愛いデザインなのだ。

なぜ、任務で来たのに私がこんなところに居るのかというと・・・・

「お嬢さん、おまたせ。これが名物のキャロットドリンクだよ」

理由はこれだ。

目の前に置かれたジュースを見ると、そこには丸いグラスにオレンジ色のジュース、その上には可愛く添えられた生クリームと人参型のチョコレート。もちろんカラーはオレンジだ。写真に収めたい衝動に駆られるが、あいにく手元に愛用の携帯はない。
こんな事に自分も女子だったのかと改めて思った。

ありがとうございます、と言うと「どういたしまして。素敵なお嬢さんと出会えた記念だよ。俺の奢り」とにっこり微笑まれてしまった。

ううっ好青年かつイケメンだ。
うさ耳が生えて居ると言うのに爽やかイケメンをキープして居るだなんてすごいな。

さて、いったいこの男性は誰なのか。
私も知らない。
なぜ私がこんなところでこの好青年と2人名物を囲んでお話しているのかというと、ひとえに私が流されやすく、押しに弱い。これに尽きる訳である。

今から約数十分前の事である

「もちこさん。ここで着替えていきましょう。先にどうぞ」

森を少し進むと小さな小屋があり、メッサー君が中を確認するも、住んで居る様子はなさそうだった。おお、身のこなしが軍人ぽいねメッサー君。
地図が壁に貼ってあり、現在地が示されていた。
どうやら何かしらの理由で間違って森へ迷い込んだ人への案内所のようだ。
メッサー君が見張りをしてくれて居る間にマキナさんが用意してくれたと言う服に着替える。

この星に溶け込むための変装だとメッサー君が言っていたけど、なるほど。

この星の服装の傾向はシャツにベストと、スーツスタイルと言うわけか。
薄い空色の縦ストライプのプリーツスカートが可愛い。
良くテレビで見かけた大勢のアイドルがお揃いで着ていた制服もこんな感じだったなぁ。
あ、そうか。なんだか着なれた感じだなと思ったら制服に近いのか。
ふむ抵抗感が無いのもなっとく。まぁでもこりゃコスプレだなぁちょっと恥ずかしい。

「メッサーくーん着替えたよー」
「はい。今は近くには誰もいませんが、もし誰かが来たら、隠れて下さい。もし見つかってしまったら抵抗せず、頃合いを見計らって逃げてくださいね。」
「私にできるだろうか・・・」
「できるかできないかじゃ無いです。して下さい」
「わ、わかった。」

では急いで着替えて来ますので。

そう言うとメッサー君はさっと小屋の中に消えていった。

小屋の中にメッサー君が居るといえど、異国の地、ましては異世界、さらには異星の地の森の中で1人佇むと言うのはなかなかにスリル満点。というか恐怖だ。
そんなことを言うとラグナでの生活もかなり異色かつ異様であったわけだが、それ以上に不安でいっぱいだ。それだけ私はラグナの生活に慣れてきていたのだろうと言うことだ。

ラグナでは元の世界に戻るための情報は得られなかった。ならば他の国で他の星でならば。そうアラドさんが提案してくれた事だろう。彼はとても忙しい人だけど時々私の事を気にかけて相手してくれる優しい人だ。

ここでトラブルを起こして彼の顔に泥を塗るわけにもいかない。
特に注意して見つからないようにしないと・・・・

「あれ?こーんなとこに女の子がいる」

ひっと息が止まった。吐き出し損ねた二酸化炭素が喉を行ったり来たりするのでうまく呼吸ができない。この短時間で私は息の仕方も忘れてしまったようだ。

「迷子?」

ついに息がかかるくらい近くまで近づかれてしまった。首に息がかかった

「田舎から来たの?こっちは1人で歩くにはちょっと危ないと思うよ」

それとも誰かと一緒なの?

そう聞こえて、びくりと肩が動いてしまった。もしメッサー君も一緒なのがバレたら良くない。きっと。彼に迷惑をかけちゃダメだ。

そう思って振り返ると、私よりも幾分も背の高い青年が思いの外至近距離にいた。近すぎて顔もよく見えない。

「おっと、ごめんよ。こんなに近づいて不躾だった。1人?みたいだね。街まで送るよ。お嬢さん」

一歩下がりにこりと笑んだ青年

そう。この青年に手を引かれついていくと到着したのがこのカフェだったと言うわけだ。

いや、
わかってる
私が悪い
どうにかしてメッサー君と早く合流しなくては。とっさに1人かどうか聞かれて頷いてしまったのが悔やまれる。しかし田舎娘として認識されたのはおそらくこの変装のおかげとも言えるだろう。
マキナさん様様だ。


「あ!そうだ。これは内緒なんだけど、君には特別。いい事教えてあげようか」

「いい事、ですか?」

「そう。いい事」

「あー、何か後から要求しません、よね?」

「うわ。信用ないな。するわけないよ。こう見えて俺、警察官なんだよ」

「け、警察!?」

「そ。今は休憩中。あー、そっか。警察官のトレードマークのジャケット置いてきたからわからなかったんだね。珍しいなぁ。大体はこの服装してたらわかるはずなんだけど・・・」

「えっ、い、いい田舎者なもので・・・」

「ふーん・・・」

急に青年の目が細まり、男性にしては白い指が私の手をとった。急な事にとっさに振り払おうとするが、流石に男性の力には敵わず、ぎちり、と少し嫌な音を鳴らしただけで無駄な抵抗に終わってしまった。

確かめるようなそんな風に見てくる彼の瞳はこんな色だっただろうか。
彼の雰囲気が変わった気がする

絡ませてくる指から逃げようとすればするほど、自分の意思とは関係ないと言わんばかりにがっしりと絡まって行く

「俺の目、ちゃんと見て」

まるで催眠術にでもかかったように、今までそらしていた顔が、視線が、青年の瞳に誘われて行く

瞳の色はコバルトブルーだったはず
それが今は、血のように真っ赤に染まっていた



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