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「アルシャハル?」
「そうです。任務でこれからアル・シャハルという惑星に行ってきます。何が起こるかわかりませんので、もちこさんはここで待機です」
「・・・・了解」
「・・・大丈夫ですよ。念のためブレスレットは持っていきます」
パイロットスーツを身にまとったメッサー君がすでに腕につけた銀色に光る細身のブレスレットをそっと撫でる。
これは彼の希望でカナメさんにお願いして、あの時、そう、私が初めてこの世界に来た瞬間、メッサー君を救ったあの歌が再生できるようになっている。
録音した歌では効果がないと言われているらしいが、私と彼の波長が凄く合うらしく、多少ではあるが抑制効果があるそうだ。無いよりかは良いという話である。
恥ずかしながらカナメさんとデュエットである。
まさかのワルキューレのリーダー様をコーラスに迎えるという恐ろしさ。
もはや銀河級にぶっ飛んで居る。で、デカルチャー
仕方がないのはわかってるんだが。それでも駄目だろうとは言えなかった・・・
なぜなら一緒に出撃できないポンコツパートナーだからです。何が運命共同体だよこんにゃろっ
ひー
私の声が裏返ったりボリュームが極々小さいのは許してくれ。
なんせプロじゃないから。無理だから。
でも彼は満足してくれて居るようなので良しとしよう(自己完結)確認はしない。
まぁでもちょっと恥ずかしい。
何せ自分の音声を持ち歩かれて居るという羞恥に勝てる気がしない
芸能人すごい
自分の着うたと着ボイス聞いてしまった歌手の気持ちを体験しております
「?どうしましたか?」
「いや、ちょっと・・・」
「?」
そうやって!!!!!
そっとブレスレットにキスとかやめてくれません!?欧米人はみんなそうなんだから!!!異国人も異惑星人もみんなそうだよね!けしからんけしからん
美雲さんもスキンシップ過多だし、チャックさんも投げキッス超するし、アラドさんはハグするじゃん!日本人には・・・・むり・・・
色々通り越してストレス
ストレスフルだわ。どこの社会もストレス社会だよ・・・負ける・・・
「気をつけてね」
「もちこさんも。十分に気をつけて。無理だけはしないように」
「清掃業務で何にも起こらないよ」
「それでもですよ。何が起こるかなんてわからないんですから」
では、と背中を向けて去っていくメッサー君を目だけで追う
デルタ小隊のみんなやワルキューレのみんなが任務で出かけて行くときはいつも不安になる。
私がついていったところで足手まといなだけなのは過去の一件で承知の上ではあるが、みんなが怪我しないようにと無事を祈ってしまうのは致し方ない事なのだ。
お土産買ってくるね!といつも言ってくれるみんなの気遣いはとても嬉しいし、どんなお土産も見たことない物ばかりで心が踊るのは間違いない。
でも、無事に帰って来てくれること以上に嬉しい事はきっと無いのだ。
どんなお土産だって、買ってくれた本人から貰わないと意味なんかないのだ。
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「部屋を、ですか?」
「そうだ。もしかしたらせっかく用意してくれても無駄にしてしまうかもしれないが・・・頼まれてほしい」
「了解です。空いてる寮の部屋を一部屋使えるように、ですね。承りました。チャックさんにも言っておいてくださいね。」
「ああ。すまんな」
「いいえー。こーんなステキなプレゼント貰いましたし」
「はっはっはっは!妹分の事などお見通しってな!良いだろこれ。アル・シャハルで流行ってる酒だぞ」
「お兄さま〜」
うはははと豪快に笑ってガシガシ頭をかき混ぜてくるのも、2年も経てば落ち着くレベルまでくるというもので
お土産も小さな物から大きな物まで色々買って来てくれる。本当のお兄さんみたいになって来て居る
スキンシップが多いアラドさんだからこそなのかもしれないが、どんな任務でどんな時間に帰ってきても、私のところに来てくれる時は大概石鹸の匂いを纏ってやってくる。
きっと、戦場の匂いを持ち帰らないための彼なりの配慮なのだろうと思う。
手渡された可愛らしいフラスコのような形の瓶の中には、昔プラネタリウムで見たような宇宙そのものが入っている。美しい深い青の中にキラキラと輝く金や銀の粒子が天の川のように列を作り狭い瓶の中を泳いでいる。
なんだか飲んでしまうのがもったいないほどだ。
「もちこさん」
「メッサーくん・・・お帰り」
「ただ今、帰りました。」
「何か変わった事あった?」
「いえ・・・少々戦闘にはなりましたが」
「えっ大丈夫だったの!?」
みんないつも通り怪我もなくお土産渡しに来てくれたからヴァールシンドロームが起こってても小規模かと思ってた・・・!
メッサー君が怪我していないかついつい確認してしまうのは許してくれ。
彼は1番に飛び出すタイプでさらに言うと幸運度は低いタイプと見た。
幸運Eかな
メッサー君の周りをウロウロしていると、ぽん、と頭に暖かな軽い衝撃がきた。
視線をあげると、メッサー君が困ったように目を細めて笑っていた。
「心配いりませんよ。傷はないです」
「そ、・・・・っか。良かった」
なんだか彼は最近ずっと働きっぱなしで少し心配なのだ。
なんとなく、だけれど。
なんとなく、メッサー君は誰よりも誰かを、デルタ小隊を、ワルキューレを守ろうとしてるんじゃないかと考えてしまうのだ。
いつもこの笑顔に誤魔化されている気になって仕方がない。
「もちこさんの方は何もありませんでしたか?」
「うーん・・・そういえば、男子寮」
「男子寮?」
「アラドさんが1部屋使えるようにしておいて欲しいって言ってたけど、誰か入るの?知ってる?」
「・・・いえ。そうですか・・・」
「そして、じゃじゃーん。今日はアラドさんにお土産にお酒もらいました〜一杯行く?」
「良いですよ。俺も少しですが、もちこさんの好きそうなお菓子を買って来たのでそれで一杯しましょうか」
「やったー!」
この時代、というかこの世界はほとんど知らない食べ物ばっかりで超興味ある。
こう、なんというか携帯はないけれど、小型のピアス盗撮機みたいなのとか、サングラス盗撮機とかがあって、機械を再生すると溜め込まれたデータが空中にハガキサイズでばばばばっと映し出されたりするのだ。
いや、普通にカメラとか無いんかい。って思ったけれどこれはこれで未来感すごくあって楽しいので良いです。今ではそれも楽しみの一つと言っても過言では無い。潜入捜査というだけあって某名探偵が使うような機械ばかりで興味深いです。
最近の楽しみといったら、メッサー君がちょこちょこ撮ってきてくれる外の星の風景や食べ物を寝る前に見ることくらいですわ。
お分かりになっていただけると思いますが、そりゃあなた。こんなとんでもない未来に来てりゃ興味ないわけ無いでしょうよ。
おそらく相当興味津々なのが周りにバレていたのか、アラドさんには笑われ、チャックさんには「子供だなー」とからかわれたし、さらにチャックさんの弟達には「俺たちよりガキだなー」とゲラゲラ笑われ、マリアンヌさんには睨まれた
び、美人こわいよ・・・
寝る前にアルシャハルの映像を見せてもらっていたら、うっかり「この写り込んでる女の人メッサー君のタイプ?」というささやかな心の声がつい口から出てしまった。無言で頭を叩かれたので、勝手に図星かと思っていたら2回目が飛んできたので、急いで口を閉じました。
ついでにこれ以上失言が飛び出さないように目も閉じた。
そろそろメッサー君は私の頭の中に侵入できるスキルを身につけたのではないかと疑うレベルでツッコミが的確だ。私たちフュージョンできるんじゃない?え?実はもうしてる?
またもや小突かれる気配を察知したのでそっと意識を手放したのだった。
ALICE+