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ところで皆様ご存知でしょうか
我がデルタ小隊、ワルキューレは事あるごとに宴会をします。あ、違った。大宴会をします。
民間企業なんで必要な行事というものです。
新入社員歓迎会、寮の入居祝い、昇格祝い、誕生日その他諸々。もちろん私もやってもらってます。私の場合は割と極秘物件という事で、特に小規模だったような。デルタ小隊とワルキューレメンバーで私とメッサーくんの入隊祝いをしてもらったもんです。
祝うというか、みんなで頑張って行こうぜって感じの交流会的な。
出不精なメッサーくんもちゃんと出るよ!
個人的な飲み会は片っ端から断っちゃう系男子のメッサー君も大きな飲み会は参加します。
ここテストに出ますからね!
大学を思い出すよね
あったあった。乗り気じゃないけど出ておいたほうがいい系の飲み会。あのどんどん合コンと化していく流れちょっと苦手だったな〜
ここの生活での飲み会や歓迎会はまさに交流会、親睦会といった感じがして私は好きだ。
本日も賑やかにフレイアちゃんとハヤテ君の大歓迎会が開かれているのである。
やっとね
やっとハヤハヤの運転が安定して来たってミラージュちゃん泣いてたよ・・・
しかしまだ安心しちゃダメだミラージュちゃん
奴は突然不思議な行動に出るから
そういう年頃だから
「もちこちゃ〜ん、すまんがこれテーブル持っていってくれー」
奥の厨房からニョキっと生えた手がひょこひょこと手招きする。最初はびっくりして変な声を出すたびチャックさんに笑われていたが、今では慣れたものでおきまりの呼び方だ。
「はーい。私飲み物当番しばらくするんで、チャックさんも行ってきて良いですよ。注文出たら呼びますね」
「ひゅ〜もちこちゃん気がきく〜」
厨房から出てきたチャックさんの大きい手が私の頭をわしゃわしゃと撫で付ける。
歳はそう変わらないのに幾度も繰り返されるコレは彼の弟たちにするそれと一緒だ。何度もされるこの子供扱いは、彼だから許される雰囲気があると思う。明るい空気の似合うみんなのお兄さん。そう。それだ。ぽかぽかと心を温めてくれるスキンシップは結構好きだ。
子供扱いが決して不服というわけではない。断じて。しかしながら彼らに比べればはるかに年若く見えるらしいので仕方がない。
さらに言えばメッサー君が隣にいることで年齢不詳の出来上がり、というわけだ。
メッサー君には鼻で笑われたよね。
くそ・・・
「23かね!随分と大人やったんやね〜」
フレイアちゃんには感心された。いやいや。もうね。フレイアちゃんが14っていうのもびっくりするから。私の国ではその外見は18でも通用するから。そうやったんかね〜なんや照れますなぁ、とくねくねしてる。フレイアちゃん・・か、可愛い。
「お姉さん、一杯頼むわね」
ふわふわと思考の海へ航海へ出て居ると、すぐ目の前のテーブルの縁をトントンと叩く手が見えた
おっと、そんな事を思い出してニヤニヤして居る場合ではなかった
「お前さん、こんな時にも働いてるなんて感心するが、たまにはハメを外すのを忘れるなよ」
アラドさんは器用に困ったような呆れたような顔でため息をつく。
ハメを外すのを忘れるなって初めて聞くフレーズでちょっと面白い
ふふ、っと気がつかれないように笑ったつもりが思いっきり見られてたらしい。
頭を揺さぶられた
乱暴だ
「お、れ、は、お前が働きすぎて過労死しないか心配してるんだぞ〜?」
「しんぱいしてるひとは頭を揺すりません〜あああ」
「ふふ、アラド隊長、もちこすごい顔になってる」
「お、す、すまんな〜」
「ひどいよ〜さて、何にするんですか?もちろん一番良いの、頼んでくれるんですよね!」
「ふふふ、ご馳走になります!隊長!」
この商売上手め、と悪態をつきながらもお前も一緒に飲むんだからな、と奢ってくれるところはさすがみんなの兄貴!大人!という感じだ。
「お兄ちゃんサイコ〜ひゅーひゅー」って言ったらすごいかっこいい顔されました
大人の笑顔って最強ですわ
パパって呼んでも良いですか・・・
「明日のワクチンライブはもちこも参加しするのはどう?・・・あの件があるから・・一緒には連れて行けないけれど。録音か、本部から通信機を通して歌うのなんてどう?練習室で、ライブを投影して。
そうすれば、フレイアの能力の安定が図れると思うし。」
「カナメさん・・・私なんか居なくってもフレイアちゃんは大丈夫だと思いますよ。私は・・・みんなの力になれるなら参加しても良いかなってちょっぴり思いますが・・・訓練とかならともかく、全宇宙に向けてーなんてとてもとても。は、は、恥ずかしいかな。ははは」
いやぁ
全国ネットで声だけといっても恥ずかしいもんは恥ずかしい。アイドル目指してるかわい子ちゃん達とは違って平々凡々の凡人中の凡人ですし。
歌なんて上手いわけでも何でもないんで・・・
そんな前に前に出ちゃったら間違いなくチャックブラザーズ達はいじってくる。何回も目の前で再生されちゃうんだよ。想像だけで羞恥で泣いちゃう。
この一瞬にして色々想像してしまった。
無理無理〜と手も首も振っていると、バタンという音と共に目の前には艶やかな茶色い髪の毛がふわふわと揺れる。視線を泳がすと、滑らかに艶めく髪の中にはぷくっと頬を膨らませムスッとしたカナメさんの顔が潜んで居た。
むすりとしていても美人だなんてなんて事だ
「そんなこと!貴方だってちゃんとしたメンバーで、素晴らしい能力を持ってるのよ!貴方がチームに居てくれたら心強いのは本当の事よ・・?」
「まぁまぁ、カナメさん落ち着いて。」
ははは、と苦笑してアラドさんがカナメさんを席に落ち着かせてくれた。
「どちらの言い分もわかるが・・・まだあの件も落ち着いていない。予言自体が無くなるまで、と言うと難しいが急ぐ事じゃないですよ。今回のライブをしてから様子を見つつでどうでしょうか。もちこもそう心配するな。映像を飛ばすから、それほど効力はないかもしれないが鎮圧ライブと言わずとも、ワクチンライブには十分な効力だろう。顔もでないから安心だぞ?カナメさんも。それで良いですかね?」
「ごめんなさい。レディMからフレイアの能力安定を待ってる時間はないと言われて焦ってたみたい・・・」
「なるほど、な。レディMが。・・・カナメさん、フレイアにフォールドレセプターの話は?」
「まだ・・・彼には?」
「こっちもまだだ。今は操縦やフォーメーションで手一杯だろうしな。」
「それは・・・確かに」
日々満身創痍なハヤテ君を見ているから納得。
最近はサボりもマシになってきたようで寮に帰ってくる時間はマチマチだがどんどん遅くなってきたと思う。真面目で結構結構。
特別サービスでお部屋まで食事を運ぶ事もしばしば。そこで聞くのはミラージュちゃんの鬼っぷりくらいだけど。
慣れてきたらきっとハヤテ君にぴったりといって良いくらい楽しいのだろうと思うけど、もう少しかかりそうだなぁ。
私なんて生活するだけで慣れるのに2年っすからね。何度も言いますが。
うんうん、と過去の自分を走馬灯のように思い返していると「あの」と低い声が聞こえてくる
メッサー君だった。
「ん?・・・戻るのか?」
「はい。もちこさんはどうしますか、と聞きたくて」
「じゃあ私もそろそろ」
ふむ。
まだまだ宴は終わりそうにないが、あまり表立って活動も業務もこなして居ない私がいるのもアレだし、ちょっと居心地が悪いのも本心だ。気疲れしてしいたのかも。毎度いいタイミングで声をかけてくれるのありがたいよ。
メッサー君いつもありがとう。
私も共に離脱します。
「たまにはゆっくりしていったら?」
「いえ・・・もちこさんを部屋に送ったら時間まで基地で待機して居ます」
「では私も失礼します」
ちょうどチャックさんも帰ってきたので帰る事を伝えると、長い時間ありがとうな〜とかわいいウインクをいただいた。お茶目だな〜いいと思います。
「もちこ、ゆっくり休めよ。お疲れさん」
「無理言っちゃってごめんなさいね。でもまたおいおい話をしましょ」
おやすみ、と手を振られ見送られ、寮へと続く廊下を2人でゆっくりと進んでいく。
「もちこさん、さっきのアラド隊長が言っていた事って・・・まさか明日の任務同行するわけではないですよね」
難しい顔をして何を考えているのかと思いきや、その事だったか
「俺は反対ですよ」
「そ、即答」
「当たり前でしょう。明日は新人デビューライブと聞いて居ますが、ヴァール発生率の上昇した惑星に行くんです。そういった話は許可は下りないはずかと」
断固拒否の姿勢だった。
ゆっくりと進んでた足まで止めて、整った顔をひくつかせながら、眉間にシワまで発生しだした。
「ち、違う違う、今後ライブの時はラグナから映像を送って補助はどうだって話だっただけ。明日はちゃんとお留守番させてもらう事になったみたいだし」
「・・そうでしたか」
難しそうな顔をしていたメッサー君がそれを聞いて明らかにホッとした顔へと表情を変える。
立ち止まっていた足もまた軽快に進み始めた。
メッサー君のせいではないと言うのに、あのマティルドでの一件が彼をさらに過保護へと進化させてしまったのだろうおそらく。
この勢い、私は知ってるぞ
まさにモンペ
いや、ちょっとモンペは言い過ぎか。
「メッサーくんが歌に合わせて演技するって聞いたから見たいなーとはちょこっと思ったけどね。どんな感じか気になる!」
「ふ、もちこさんらしいですね。今回も資料の一つとして映像は保存されるはずですので、帰ってきたら一緒に見ましょうか。夜には帰ってこれるそうなので。」
明日の準備と待機時間が終了したら戻ってきます、と、いつのまにか着いていた部屋の前でメッサー君はまた元来た道を帰って言った
なんて事ない、いつも通りの日常なのに、いつも見送っている背中なのに。
こんなにも胸がざわざわとするのは、どうしてなんだろう。
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原作沿いになって来ました。
ここからは原作の流れに沿っていきます。
セリフなどは少々変わっていきます。ちょっと違うくない?って思ってもスルーして下さい。御都合主義全開で行こうと思います。
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