番外編/ハヤテ
ハヤテとの会話
「お前はたいがい情緒不安定だなぁ。フレイアをみならえよフレイアを」
もはや日課となった寮のオープンスペースでぼうっと空を眺めていた私にハヤテ君が肩を並べて体重をかけてきた。地味に重い
「あいつはいつでも能天気で楽天家だぜ。真逆だな」
「そうかな・・・そうかも。これはなんというか・・・思春期かな」
「あほか。おっそい思春期だな」
「ちょっと!振動が!笑わないでよ〜」
ふるふると彼が笑いをこらえるたびに私の肩にダイレクトに振動がくる。もういっそ盛大に笑ってくれ
「なんっかよくわかんないけどさ。
しっくりこないなら探せばいいんじゃないのか?俺は自分の足でここにきたぜ。
きっかけはフレイアだったけど・・・お前にはお前の空があるんだろ。
だったら飛んでけばいいんじゃないのか?飛べば飛べるっ!・・・てな」
「私の・・・空、ねぇ」
私の空、望んでいるもの。あれから2年たった。それでも夢でしか自分の欲しいものが手に入らない現状に心が着いて行けてないのだろう。実感もなければもう2年も経ってしまったという焦りすらない。
なんとなく時間がすぎてしまって、予言の事も相まって2年も生きれているラッキーな感じだ。
自分の世界を諦めかけている私の記憶はどんどん色薄く、音さえも無くなってきた。
もはや私は一つ一つ、自分が望むものを数えるのが億劫なのだ。
とんだかまってちゃん繰り返してきてしまった私が言うのもなんだが、ぶっちゃけなるようにしかならない。
私の空、とは。
私の世界じゃない、私のための空
来たくて来た場所じゃないここで、それを探すのはとても困難な気がする。
私には今の所掴めるものを探すのではなく、掴んでくれる誰かを探す方が最も重要で最優先事項になってしまった。
自分を保つために自分を好いてくれる人を引き止め繋ぎ止めることに必死になって来た結果だ。
デルタ小隊、ワルキューレ
メッサー君
私の空は、メッサー君なのだ。きっと。
私の始まりはメッサー君で。
きっと終わりも彼なのだ。彼を基準に回り始めた世界は、なかなかに止めることが難しい。
コツン、と私の肩にハヤテ君の頭が寄せられる。ぼんやりした思考がキュッっと引き戻される。
「・・・・俺が連れてってやろうか?行きたいとこ。」
行きたいとこ・・・
肩口に軽く乗せられたハヤテ君の頭が、その意外にもサラサラな髪が風にのって首筋を撫でてくすぐったい
クスクスと笑っていると、「えいえい」と言いながら頭をグリグリ押し付けられた。
この子は本当にパーソナルスペースの狭い子だな
不思議と嫌な気分にならないのは人柄のおかげなのだろうけど
「もちこは・・なんかうまく言えないけど、見ててやらないと・・消えちまいそうだ。」
「なぁ・・2人で、どこか行ってみるか?ここから抜け出して、違う惑星に行って旅して・・・たまに働いて金が溜まったらまた違う星に行くんだ。きっと色々みれる・・・感じられるんだ。一緒に」
びっくりしてハヤテ君の方を見ると彼は私の肩に額をくっつけ、私に体を預けたままだ。髪飾りがキラキラと光を反射させ、音もなく笑っている。
顔は彼の艶やかな髪に隠れて見えない。
見えない。
「・・・なーんてな」
ばっと顔を上げたハヤテ君はいつもの笑顔だった。
ほんの少しだけ、困ったような笑顔だった。
「あいつのそばにはお前が居なくちゃいけないのは見てたらわかる。・・・いつか、、いつかもちこから誘ってきたら、そしたらさ、その時はどこまででも連れてってやるよ!」
じゃーな、そう行って踵をかえしひらひらと手を振りながら彼はお店の中に入って行った。
「私の空、か」
彼が言うように、全てを捨てて、全てを裏切って、全てを諦めて、逃避行というのも良いのかもしれない。そうすればきっと与えられるばかりじゃなく、自分で掴めるものもあるのかもしれない。
彼の熱が残る肩にそっと触れるとほんのり温かくて、何故だか少し泣きたくなった。
番外編
意外ともちこの心配をしているハヤテくん。彼はもちこの事を自由にしてあげたいし、デルタ小隊にとらわれ過ぎていて窮屈に見えて仕方がないのです。
この人はどう見ても一般人なのにどうしてここにいるんだろう?と彼は思ってます。
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