06
「すまない。こんな事、させるはずじゃなかったんだが・・・」
カナメさんから説明を受けたあと、形式上の書類にサインをして、部屋を出た。
誰もいない廊下に出るとアラドさんが私とメッサー君に情けないくらい小さな声で呟いた。
「やめてください。俺は構わないです。身体のデータを取る約束もあるので問題ないです。それに・・・カナメさんには俺のヴァール化を言ってないんですね。」
「ああ・・・俺と、アーネスト、ケイオスの一部の人間しか知らない。言っておいた方が良かったか?」
「いえ・・・・このまま黙っていてもらえますか」
「もちろんだ。もちこは選択権など無いというのに契約させてしまった・・・すまなかったな」
「メッサー君がいいなら、それでいいです。私は保護してもらってる身なので」
「もちこ・・・」
「だからそんな風に悲しそうにしないでくださいよ。私がアラドさんを慰めてどうするんですか」
「それもそうか、今日はゆっくり休め。明日からメッサーは入隊準備、もちこには寮の仕事を任せる事になるそうだからな。忙しくなるぞー」
はっはっは
と笑いながら手を振り去っていくアラドさんを見送り、メッサー君と寮へと続く道を歩き始めた。アラドさんはお仕事の途中だったようだし、おそらく仕事に戻るんだろう。
「あの、もちこさん」
「なんでしょうメッサー君」
「もちこさんって21歳だったんですね。勝手ながら未成年かと思っていました」
お前もかメッサー
仕方ないんだけどね
基本的にみんな欧米人な感じじゃん。アラドさんも31と信じられん
メッサー君もラテン系な感じに見えるしここの基準がもはや顔面年齢プラス5歳じゃんかよ
別に日本じゃ標準だわ
むしろ背は高い方だったわ
遠い目をしてほっぺを膨らますと、フッとメッサー君が笑って「すいません」と謝って来た。
「お姉さんだから許してあげます。お姉さんって呼んでもいいですよ」
「ありがとう、もちこ姉さん」
ふふふちょっといい響きだ
一人っ子だからなぁ
こっちを見て微笑を浮かべていたメッサー君が急に怖い顔をしたかと思うと足を止めて、キョロキョロと人がいないのを確認し、私から視線を外したまま「もちこさん」と話しかけられる。
急にどうしたんだろ
私もメッサー君に習って前を向く
チラリとメッサー君の顔を見ると目線だけが合った
すぐに視線は前に戻され、ゆっくりと歩き出す
どうやら人には聞かれたらいけない内容のようだ。
「もちこさんは別次元の過去から来てしまったのだと聞きました。その事実を知っているのはケイオスの中でもごく一部、さらには実験の内容もさらに限られた人しか知らないと思います。」
「そうですか・・・でも、それがどうかしたんですか?」
「もしもですが、貴方がヴァール化を抑制する力を持っていて、相性が関係なくそばにいるだけで抑えることができると実証されたら・・・そして、貴方だけがその力を保有しているとしたら、ですが、その・・・遺伝子を利用しようとする研究員もでてくるでしょう。非人道的な事なのでありえないと思いたいが、子供を沢山作らせ、その中から力を受け継いだ子孫を、という事が無いとは言えません」
「そ、・・まさか、そんなこと・・・」
「プロトカルチャーは遺伝子を操作して人類を創造している。そういった考えを持つ者も無いとは言えない」
それはちょっと嫌すぎる
私はこんな誰も知らないような場所で子供産むのはちょっと・・・ドン引き
「あまり自身の事を話さない方がいいと思います」
「わかった。言いません」
私がコクコクと頷くと、そうして下さい。俺がそばにいる時はフォローします、と頷かれた。おおお頼もしい。私すぐペロッと言っちゃいそう
「嫌だなぁ。帰れないかなぁ」
「そういう事言わない方がいいですよ」
はっ
もうだめだ
「うわ。無理だわ。メッサー君居ないと私すぐバッドエンドになる!」
「俺が居たら大丈夫ですよ」
「ほんとですね。頼りにしてますよ!メッサー君!」
よろしくっと肩でメッサー君にタックルすると、「うわっ」と言いつつもよろけもしない。ヒョロそうに見えてマッチョかもしれない。
「これなんて言ったらいいのかな運命共同体?同士?秘密同盟って感じ?」
「秘密、いいですね秘密同盟。」
実験って何するんだろうねぇ
痛くないといいよね〜
メッサー君って19歳なんだね
お酒飲めないじゃん
全部そうですねで返された
秘密同盟組んだのに距離を感じました。
*ヒロインは時と場合によって敬語になったり砕けたりします。
基本的には砕けた喋り方ですが、まだまだ打ち解けられないので、人に対しては敬語の表現が多いです。別に敬語キャラじゃないです
ALICE+