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いつからだろうか
彼女は悪夢にうなされるようになった
彼女の思い出が、彼女の記憶が、優しさと温かさを持った、ふわふわとした綿菓子のように甘やかな懐かしい日々が彼女の弱い心をギリギリと見えない糸で縛り付け息をできなくしてしまうのだ。




説明を受けたあの日からいく日かが過ぎ、全てが整い出した頃。

アラド隊長の元でまた戦場へ戻る事になったが、戦闘訓練や操縦訓練、戦場へ出向く事で受ける極度の緊張や興奮に日常的にさらされることで、ヴァール化の引き金になることもあると言う。

そのストレスを感じた時、彼女、もちこ・御手洗が近くにいて何か決まった言葉や歌を歌う事で落ち着きを取り戻せるかどうか、興奮にさらされ高ぶった神経が細胞レベルで通常の状態に戻るかを見て行く実験だそうだ。幾度か繰り返した後、どんな言葉や歌であっても効果が出るかどうか見て行くものだ。

非常に緩やかで、緊急性の見られない実験内容ではあるが、それはきっと彼女の首を緩やかに締めて行くのだろう。
終わりのない実験
これでいいのか、悪いのか。早急には結果の出ない内容にきっと誰もが疑問を持つだろう。
まだ彼女が危険な要素を持っているかどうか判断しかねる状況だからこそ、生かさず殺さず、ケイオスは彼女をこの惑星に縛るのだ。



「メッサー君にかける言葉、う、歌ですか?」
カナメさんが説明すると、彼女はギョッとしたような表情を浮かべた。
実験内容はこうだ。
俺や他のデルタ小隊のメンバーが期待に乗り込みデモ演習を行う。
毎日一回は機体の調子を見るために必要な事だ。
体につけた装置で数値を割り出し、数値が上昇したタイミングで声をかけるか歌を歌う
ワルキューレとそう変わらない役目だ。
ただ、ワルキューレとは違い、行動範囲は本部内やワルキューレ部隊の背後までだ。


「歌の方がデータが取りやすいと思うから、歌で行きましょうか。何か知ってる歌はあるかしら。今度ワルキューレの曲も貴方に渡すから、それもおいおい。練習してみて」
カナメさんがもちこさんに向けてウインクをして肩を叩く。


「えぇぇ、じゃあ、」

もちこさんは聞いた事のない、でも懐かしいような曲を歌ってくれた


ささやくような小さな歌声だったけれど、機体につけられたスピーカーから聞こえる声が急速に体に染み渡って行くのがわかった

訓練中に同じ歌を歌ってもらって1週間が過ぎた頃だっただろうか。


彼女の様子がおかしいことに気がついた。

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