09
グッッモーニン
もちこでっす
こんな軽口を叩けるくらい回復したよ!
というか割と自覚も実感もないまま流れに身を任せていたら、実験開始とともに体が疲れる疲れる。
信じられない事態、信じられない体験に心労が積もりに積もったのかなーと思ってたけど、どうやら歌を歌うとかなり体力が消耗されることがわかった(当社比)。
まだ数日しか経ってないというのに歌を歌った直後の疲労感がすごい
蓄積のしかたがすごい
まぁ、そこは問題ないのだけれど、疲れている時に自分の国の曲を思い出しながら歌うとかなり胸にくるものがある。
しっかり覚えてる歌なんて小さい頃よく歌った歌だったり、学生の時に授業で教わった曲ばかりだ。
それを歌うと、よく夢を見るようになった
とってもとっても
優しい夢
懐かしい。小さい時にお母さん、お父さんと歩きながら歌を歌ったこと。
高校の時に友達に鼻歌を笑われたこと
おばあちゃんと一緒に歌った童謡
全部全部思い出だ
綺麗で暖かくて、でも目が覚めて気がつく
ここは日本じゃない
電車に乗ろうが、飛行機に乗ろうが、宇宙飛行士になろうが、友人や家族に会うことはできない
朝が来ると、窓から見える景色にがっかりするのだ。また絶望がやってきた
今まで体験したことのないような虚無感に襲われる
最初は良かった
夢で会えるなんて嬉しい。ああ、元気にしてるかな。私はあっちではどうなったんだろう。今の時代からいうと過去になるけれど。
心配しているかもしれない
探しているかも
人の記憶は声から消えていくという
夢からどんどん音が消えていくのが怖い
それが不思議なことに
昨晩はぐーっすり眠れたのであります
夢も見ないくらいぐっすり!
気分爽快
朝ごはんもモリモリ食べれそうですわ
と、まあ。
目が覚めてすぐ昨夜のことを思い出し、人前で泣いちゃったなーなんて考えたらアラドさんの時も泣いたことを思い出したため、この羞恥に悶える胸をなだめるために説明してみました。察してくれ。これは無理だ転がりたい。叫びながら。しかしできない。何故なら
ご覧の通り、目の前にはベッドに向かい合う形で椅子に座ったメッサー君
目は伏せられていて寝息が少し聞こえるので寝ているはず。
椅子で寝させてごめん
風邪ひいてないか心配ですほんとごめん
まだ握られている手を見る
人の体温はこんなにも安心させてくれるんだと再確認。
「・・・大きな手」
自分よりも幾分も大きな手をまじまじと見つめニギニギと握ってみる
手を繋ぐなんて、女子同士できゃあきゃあ言いながらふざけあってやった以外にほとんどない
自分よりも大きくて、全然柔らかくない。
余計な肉のない、男の人の手だ。
握手だったり、ふざけてした記憶がもう遠い記憶だ。
男の人の手のひらなんて父親か学校の先生、中学校での同級生くらいなものだ。
起き上がって、空いているもう片方の手で少し浮き出た血管を触ろうかと思ったその時
「・・・・何してるんですか」
「わっ」
ぱっちり目を開けたメッサー君がじっと見ているではないか。
「す、すいません・・・ついつい。ああ、ごめんなさいわがまま聞いてもらってしまって・・・それに椅子で寝かせちゃったし」
「大丈夫です。慣れてるんで」
するり、と離されてしまった手のひらがスースーして、少し、いやかなり寂しい気持ちになった。私は手フェチかもしれない。残念。
メッサー君を見るとびっくりした表情で私を見ている。え、どうした
「えっな、なに?」
「いや、すごく残念そうな顔をされてたので・・」
「えっうそ!そんな顔してました!?は、恥ずかし」
「元気になったようで何よりです。・・・・少し心配になりました」
「・・・お陰様で。ありがとうございました」
眉を少し下げて心配そうな顔で言われてしまった。自分で思うよりも表に出てしまっていたようだ
「俺も・・・・嫌な夢、見ませんでしたよ。お互い様ですね」
「嫌な夢?」
「新統合軍時代の夢・・・ですね。もちこさんと出会ったあの日の事も・・・・」
あの日、私が気がついたら知らない場所にいた日
2人してしんみりしてしまったところで、枕元の棚に置いていた通信機らしいものがピピと可愛く鳴った
「おはよう。そろそろ起きないと朝食食べ損なうぞーメッサーから話は聞いた。もちこは本日から1週間ワルキューレの曲を練習するように。今メンバーの何人かが食堂にいるそうだから音源受け取るように。練習はメッサーに付き合ってもらえ。その時のデータも回収する。以上。」
「わっもうそんな時間!すぐ行きます!」
「・・・・もちこさん、俺も一緒に行きます。すぐ準備しますので待ってて下さい」
「ん?あれ?メッサー・・?えぇっな、な、」
アラドさんの声を遮るようにピっと通話を切るメッサー君。隊長の話を遮って良かったのかな
しかし、改めて本当に不思議な未来だなと思う。こんな小さな通信機見た事ない
こんな景色も初めて
歌から直接何かしらの影響を人体へ与えることができる、というのも初耳だ。
「ねぇねぇメッサー君。手を握るって、結構安心できるんですね。歌がいろんな力を持つならこういった、体温を分かち合う?直接触れるって行為も実は何か力がこう、出てたりとかするんですかね?」
「・・・さぁ?どうなんでしょう」
私が興奮気味に言うと、苦笑気味にメッサー君が首をひねる
「人の体温がメンタルにすごく効くのかな・・・?メッサー君からマイナスイオン出てる?メッサー君白魔法使えたりします?」
「は?白・・?」
使えないらしい
ここは未来であって、異世界的なRPG要素はなかった。
「昨夜も、先ほどもアラド隊長が言っていた通りしばらくの間は休息を取りましょう。
最近からワルキューレとの連携を取り組み始めたところなので、そちらの方がしっくりきてからでも良いそうです。
ワルキューレの歌を練習するように言われていたと思うので、しばらくはそれを練習しましょう。付き合います」
「わかりました」
はぁとため息をついたメッサー君が真面目な顔をした
いや、別にいつもふざけた顔してるとかそう言う意味じゃないよ
急に疲れた顔したなーと思ったら、キリっとしたから。
「あと、アラド隊長がさっきの通信の事・・・茶化して来たら無視して下さい」
「おぉ、わかりました」
おやおやおやなに?アラドさんと仲悪いの?
「別にそんなんじゃないですよ」と珍しく口をへの字に曲げるメッサー君
これあれだなメッサー君が真面目な青年なのをいい事に親父ジョークでちょっかい出してんだなアラドさん。
アラドさんごめん
想像で言ったわ
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