ラスト・サマー(戯言/石凪萌太)










石凪萌太。
肩まで伸ばされた美しい漆黒の髪、大きな垂れ気味の目、白く陶器のような肌、とても15歳とは思えない色気。儚げな風貌。
なのにたくましく美しく勇ましく男の子としても男性としてもとても魅力的。
どこをとっても女である私が敵うものなんてない。

「もちこさんもちこさん。何考えてるの?ひょっとして僕の事?だったら、ふふっ・・・嬉しいなぁ」
「え・・・んっ」

萌太君が私の腰にゆるく回した両手をぐっと引き寄せ、その整った顔を近づけ在ろう事か、ふわふわとキスをしてきた。唇が触れるだけの啄ばむようなキスを数回

ちょっと。
うふふじゃない。

私はもう二十歳であり、成人であり、大人だ。未成年に手を出したら捕まると今まで散々説明してきたはず。こいつ何一つ聞いてなかったな・・・!

「・・・私達、お友達なんだよね?」
「はい。僕ともちこさんはお友達です。」

そう。彼と私はお友達。
私に思いを告げてくれた彼はお友達からと言う事で快諾してくれたはずだ。


「友達はキス、しないよ。」
「そうですね。でも僕はしたかったんです。子供のする事ですよ?許してください」

首を傾げてニコニコと笑う彼はとっても可愛く、とっても無邪気ではあるがいかんせんその口から飛び出す屁理屈に眉を顰めてしまう。
「ふふっ可愛いもちこさん。お顔が赤くなってますよ。」
「なっ・・!あっあたりまえでしょ!早く離して、わっ」
「赤くなったり焦ったりするもちこさんが見れるなんて今日はいい日だなぁ」
「ちょ・・・っと!やっ・・どいてよ」

私がいくら喚こうとどこ吹く風な萌太くんは、なんと鼻歌でも歌いそうなほどに上機嫌に私を押し倒したのだ。
いくら押して見てもビクともしない。
うっとりとした表情の萌太くんが見えるだけで、その行為さえ彼を喜ばせているようだった。

「ねぇ、もちこさん。僕早く大人になりたい。早く大人になって、もちこさんを愛したい。他の人のところに行かないでください。いー兄のところも、他の男のところも・・・僕だけのもちこさんになって下さい。僕ってばすごく愛しちゃってるんですもちこさんのこと。」
こんなに近づくのなんてもちこさんと崩子くらいなもんです

そう言ってジリジリと萌太君との距離が縮まって、サラサラと肌に当たる萌太君の髪がくすぐったい。彼の長いまつげが、鼻が、肌が触れ合うまであと数ミリ

「おーい、萌太くん、こっちにもちこちゃん来てないか・・・な」

無用心にもほんのすこし開かれた扉の隙間からいーくんが固まっているのが見えた
やめていーくん!
違うんだ!私が誑かしたとか思っているんでしょう!目がそう語ってる!!!
「あーあ、残念」
萌太くんはそう言って離れて玄関の扉の方へ足取り軽く向かう
扉に手をかけたところで、こちらを振り向いた萌太くんは、誰もが見惚れてしまうような涼やかな笑顔で言うのだ。

「僕、外堀から埋めるタイプなんです。それはもう、入念に。」

ですから僕も待つので是非大人になるまで待ってて下さいねもちこさん

だなんて

私にまとわりつくタバコの香りも、少年の懐かしい甘い匂いも、気がつくとここに足を運ぶ私の身体も。

きっともうあなたのもの。






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