オブシディアンを指でなぞって4





諸注意:色々と許せる人向けです。
あれ?この人生きてるの?
あれ?この人そんな職業じゃないよね
って思うと思いますが、スルーで!



響く雷鳴、鳴り止まぬ爆発音、同時にビリリと音を立てて飛び込んでくる光の玉

風を裂き、パリリと軽い音をたてるそれは、息をつく間もなく次々に飛んでくる。

かろうじて避けるも、細く伸びる光玉は銃弾などとは違い、補充もなければ底も尽きないらしい。

「ミスター・スターフェイズ!その緑の光に触れないで!絶対絶対ダメですよ!皮膚一枚でも触れたら死にます!」

「なんだって!?」


嘘だろ



「なんとか避けてくださいねー」と遠くなる声に頭痛がする。勘弁してくれ


情けなくも正直泣きそうだ。


あの光に触れると死ぬとはやはりウィッチには関わるものではないらしい。

実に日常的であった穏やかなオフィス街は、この数分で見るも無残に粉々である。

そもそもヘルサレムズ・ロッドにおいて平穏とは一般的なそれよりも大きく異なりはするが、今、この状況になる可能性は低い方だろう。それほどに酷い有様だ。物は浮き、花は砕け、木々は裂けている。ついには空気までも焦げ臭い。

ブラッドブリードも同時に出現していたため、こちら側の応援は期待できない。




駆け回っていたミスもちこが、パタパタと戻ってきたと思ったら、「う、ディメンターも来ました。嫌だなぁ...苦手なのに」と一つため息をつくのを見て絶望した。

「・・・君がそれを言うのかい」


「誰でも得意不得意はあるものなのです!あの見た目が嫌いなんですよ」



今までせわしなく空を裂く音や爆発音、石の砕けるような音がそこらじゅうで鳴っていたというのに、空気そのものが音を無くし、急かされるように空が色を失い始める。

黒い雲が空を覆い、お世辞でも綺麗とは言えないとはいえかろうじて色のある空は瞬く間に不安に覆われる。






「・・・来ますよ」





ぎゅっと握られた木の棒が目の前で構えられ、こちらも息を飲む。

ぶわりと浮き上がった黒い影が、ゆらゆらと、まるでズタズタのゴミ袋が風に揺れるようにゆっくりとその姿を現わす

ピンと張られた糸がギリギリと音を立てるような緊張感が体を駆け巡る





こちらもなにか仕掛けるべきか、そう、動こうとした瞬間。


一筋、猛スピードで雲を切り裂く光の線。

素早く空をかける青白く不思議な光の粒子に囲まれた鳥が黒い影を覆い包み、一緒にふわりと消えた


「んな、なんだ・・・!?」
「こ、これは、この守護霊は」


その直後、ふわり、と頭上で風が凪いだ。




「うわぁ、ここって凄いところだね。遅くなってごめんよ。もちこは無事かい?」




この場に似つかわしくない能天気な声が響く。


「セドリックさん!」


もちこの明るい声が響く
キョロキョロと空を浮遊していた視線がもちこに戻され、穏和な笑顔が降りかけられる

爽やかに微笑んだこの男はいったい何者なのだろうか




いや、分かりきった答えが目の前に用意されているというのに、脳がついていかない。


いったい誰が想像するだろうか。

子供の読む児童書の中に出てくる魔法の箒はあんなにもゴツゴツしてはいないし、そもそもあんなスピードでは飛ばない。
信じられないほど猛スピードで飛び回るこれはもはや紙面上のウィザードやウィッチなんかとは違う生き物だった。


するすると地面に降り立ったその男は、スマートに彼女、もちこの隣に滑りおり、軽くハグを交わしている。

よく見ればイケメンだ。

年若く、顔には笑みが浮かんでいる。この緊迫している状況だと言うのに、まるで同窓会でも開いているかのような穏やかさだ






「おっと」「お邪魔だったかな?」
「!?」





ぼんやりと見ていると突如背後から、いや隣から声が響く。それも左右からだ。
驚いて身を思い切り引いてしまった。格好悪い

「フレッドさん!ジョージさんも!きてくれたんですね!あれ?でもお店はどうしたんですか?」

「ロニー坊やに任せてきたさ。しっかし何年たってももちこは堅苦しいなぁ。」

バッシン、と彼女の小さな背を叩き豪快に笑ったのは赤毛の男だった。

やめてやれ
ジャパニーズにしては背は高いとはいえ、頭数個分違う上に異性からそんな振りかぶってタッチされればひとたまりもない
そらみろ
よろけているじゃないか


「おっ、久しぶりだなセドリック。おいおい嘘だろう。なんで姿現しを使わないんだ?箒なんて時間かかるだろ。」

もう1人の赤毛の男も箒の魔法使いに話しかけている。

同じ顔・・・双子かなにかか?それともジャパニーズ忍者のように分身でもできるのだろうか。しかしミスもちこがそれぞれ名前を呼んだと言うことは否だろう。
前者だ。


若いながらも上質でシックなスーツを身に纏う同じ顔の長身の青年達はニヤニヤと箒の男を見やる


「嫌な質問だな。知ってるだろ。トライウィザード・トーナメントでの事。あれからテレポートとかそういう系の魔法苦手なんだ。でもほら、箒も早かっただろ?」

ふふん、と得意げな彼は片手に持つ箒を指差す。
途中で手が離れたり掴んだりしている間も彼の箒は重力に逆らって空中に滞在していたが、もういい。ツッコミはしない。

いつのまにかこちらの現場に到着していたレオナルドが物陰から口をパクパクさせて何か言いたげにしているが、もう何も言うな。そこに隠れておけ。

「けっ」
「これだからパーフェクトマンは」
赤毛の2人もやめなさい

なんとなく力関係が浮き彫りになったわけだが、問題は全く片付いてはいない。


「いや、もう片がついたさ」
ポツリ、と赤毛の青年が呟いた

次の瞬間、

ドン、という地響きのような思い音が響いたと思ったら、十数人の黒ずくめの人たちが今回の犯人と思われる人物を囲い込み、棒切れを向けて立っているのが見えた

異様な光景である

瞬きをした瞬間にはもう綺麗さっぱり姿を消し、黒い雲が立ち込めていた空はすっかりいつもの調子を取り戻していた

まるで白昼夢のような

ただ見ている間に消えてしまう悪い夢

ぶわりと浮かんだ汗がポタリポタリとえぐれた地面シミを残していく。
しかし、それも今目の前にいるミスもちこがあのステッキを振った瞬間に消えてしまう幻のようで少し虚しい。

今この瞬間にもここに現れたウィザード達によって破壊された地面や建物が治っていく。

頬をかすめていく散り散りになったはずのコンクリート片が建物に飲み込まれていく様子がいかに異様か

もしかしたら

このウィッチ達が1番この世界の敵なのではないか

ゾッとする

胸の奥が、心の臓が、ヒヤリ、と冷たいものに包まれる

「ミスター・スターフェイズ、終わりましたよ。大丈夫ですか?」
蛙チョコ食べます?

くてん、と首をかしげるミスもちこは「お疲れ様です。ミッションコンプリートですね!」
そう言って軽やかに笑うのだ

いやぁ、ほんとうに。
牙狩りが聞いて呆れる。
溶けない氷を操る者としては及第点だ。

疑念を燃やされ溶かされるとは。

まったく。

ウィッチはどうも苦手だ。





5年先輩という設定で闇払いのセドリックディゴリー悪戯専門店のフレッド、ジョージが登場




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