休み時間




はたして彼女の正体は。



隣のあの子は 03








「ふっところ!ガラ空きだよー!」





わからん

つい眉がピクリと反応するが、致し方ないと思う。自分で自分を許そう。

この美少年は何故かよく彼女に飛びつき正面から胸部に飛び込むというなんとも大胆なスキンシップを働いているわけだけれども。

そんなの俺やクラスメイトがやろうものなら裁判にかけられてもおかしくない。

いや、瞬時にして鉄槌が下されるだろう。

別に飛び込みたいとは言っていない。
断じて。

目の前で繰り広げられているけったいな現象は現状俺以外には見えていないのだからさらにたちが悪い。

しかしながら彼女、御手洗もちこさんはびっくりするくらい無視し、その上普通にしているため誰も気がつきはしない。

よくもあんなにも過剰なスキンシップを図られているというのにシカトできるなと感心さえする。

あの日、あの時
教室で2人きりとなった放課後で聞いた事は今でも信じられない。

まとめるとこうだ

御手洗もちこさん
審神者という職についている女性で、あのちょこまかとよく動く元気な赤髪の美少年が、実は妖ではなく名のある古き名刀が長い年月を経て付喪神へと召し上げられた存在なのだと言うこと。

付喪神とは

にゃんこ先生は付喪神とは人間をたぶらし、化かす。しまいには人間をも取り込んでしまうとも言っていた。

妖に近づくなかれ神となれば、見るなかれ

神を見ることなどそうそうあるものではないけれど、先生のあの言いようでは本当のことなのだろうとも思う。

悪いもの・・・のようには見えないのに。
自然すぎて、自分の知らないものに見える。

普段妖だったり、神様だったり。そう言うものを見てしまった時は決まって嫌な空気がジリジリにじり寄ってくるような、梅雨に入る前のあの重苦しく締め上げられるようなじっとりとした気配が俺の体を支配しようとざわめき出すのに。

あまりにも自然で、あまりにも普通。
あまりにも無害で空気のように当たり前に存在して居た。

それもそれで嫌に気にはなってしまう。
用心深い迂闊者とはきっと俺の事だ
故意ではない
事故に近い。

きゃっきゃと人間たちに紛れ、生徒の持ち物や教科書にいちいち歓喜を上げる姿を見るとどうにも勘ぐりすぎだったのかなと思ってしまう。

そもそも。
そもそもだ。
審神者とはなんなんだろう。
神を使うとは一体どういう事なのだろう。

あんなか弱そうな女子が?
いくらか細い俺でも押せば飛ばされそうな彼女が、一体何を背負っているのだろう。





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