メルト(カルフォルニア様:連載if)


連載ifカナメ←メサ←夢主←ハヤテ


注意:インコの文才不足、知能不足でリクエストして下さった方の意にそぐわない場合がございます。多めに見てください。申し訳ない。と、先に頭を下げさせていただきます。






知っていた。
別に今更だ。
彼が元々カナメさんのファンで彼女が好きで、責任だけで私に構っていたことくらい。

そんなことは誰もが知っているし、誰もが分かっている事でどうしようもないほどに真実なのだ。どう頑張ってもきっと覆らない。

それなのにどうしてこうも目で追ってしまうのか。彼を、メッサー君を目で追えば追うほどに彼の気持ちが透けて見えるのに。小さな傷がまた増えるだけだというのに。


「まーた鬼教官に何かアドバイスかよ、掃除婦さん」
「・・・ハヤテくん」
「ほら、重い荷物持ってるよー手伝ってあげたらー?とかなんとか言っちゃって。」
「・・・いいの。応援するって決めたから」
「へぇ」
「も、もともと割って入ろうなんて思った事ない、もの」
ふん、とハヤテ君が鼻を鳴らす。
この子は天然のように振舞っているが、いろんなことに気がつき、気を回す子なんだと最近思う。
私が気が回らなさすぎるのだろうか。

「俺、もちこはアラド隊長の事が好きだと思ってた」
「えっな、なんで!?」
「無愛想なのより明るいのが好きだと思っただけ」
「う、うーん?」
「2人で良く酒飲んでるじゃん」
「まぁ。たまにね。良き上司って感じだよ。お兄ちゃん的な」
「へぇ」
「なぁ」
「ん?」
「俺は?」
「えっどういう」
「ポジションだよ。色々あんだろ」
「ああ、そういう事か・・・弟?的な?弟の友達かな?」
「へぇ」
「自分から聞いてきたのに興味なさそ〜・・」
「なぁ」
「ん?」
「もうさ、メッサーのパートナーやめろよ」

ハヤテ君のアーモンド型の目が細まり、鋭く私を射抜く。
一歩、一歩とゆっくり近づいてくるのが威圧的だ。ほんの少し私よりも背が高いせいかより高圧的に感じてしまう。随分と年下なのに余裕さえ感じるくらいだ。
「いいだろ、もう。俺と組もうぜ」
「なん、・・・ダメ、でしょ」
「そうか?もうアラド隊長には伝えてある」

ぎゅっと手を握ぎられ、その手の熱さにどきりとした。

「ダメか?」
目が合って、そこで初めて彼の手が少しだけはねる。

「俺は今の触れてるもの、見えてるもの、感じるものを大事にしたい。俺があんたを大事にする事は悪い事じゃあないだろ?」

ポロポロと頬を涙が伝う
何故だか急に溜め込んだものが溢れ出してしまって、止めたいのに全然言うことを聞いてくれそうにない

「あんたが、あいつとこのまま組み続けて、傷つくのは目に見えてるだろ」

目が合って嬉しい
手が触れて少しドキドキする
言葉を交わして、笑いあえたら心が喜びで溢れる。
すぐに、目線が外れて、違う人へいく
もう、その横顔を見るのも疲れてきた
今はそれが苦しい

近すぎる距離がこの心を握りつぶそうとするのなら、ハヤテ君のいう通りメッサー君とはちょっと離れた方がいいのかもしれない

その方が、メッサー君もカナメさんと居やすい、なんて考えたところで、また気分は憂鬱へと足を沈めていってしまう。
ハヤテ君が話しているのに自分のことばかり考える私は馬鹿か。

「もちこが頷くなら、俺は・・・」

青い髪が私の頬にかかる

自分の足元にやった視線を上へあげると、彼の顔が思うよりも近くにあった。
急に近くなった距離に驚いて少し離れようとすると、私の手を握るハヤテ君の手がこわばった気がした。

「忘れればいい」

ハヤテ君の顔が、苦しそうに変わる。

唇が近づいて、ぶつかりそうなほど近くにある彼の顔はどこか悲しみでくしゃくしゃで泣き出しそうな顔だ

「お願いだからうんと言ってくれ。おまえが、もちこが、頷いてくれないと、おれは俺はおまえを拐ってしまいそうだ・・・」

懇願するように、願うように

どうして俺じゃないんだ、なんて。
そんなの私だって
私だって


ぐるぐる回る罪悪感と私の恋が終わって行く悲しみが溶け合ってああ、なんだかこのまま2人で逃げるのもいいな、なんて。



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