静かに嵐(RiA様:メッサーvsキース)




※転生パロ
キースが社会人、メッサーは年下、夢主が高校3年生






何故、何故こんな事になってしまったのか・・・



私には幼馴染がいる。
都会でなかなか近所づきあいが少ない中、我が家は割とウェルカムタイプなので、たとえ隣近所が外国人の一家出会っても気にする事なく仲良くしましょうスタンスなのだ。
なので私の幼馴染のメッサー・イーレフェルト君とは良いお友達をしている。
英語が話せるのかって?

まさか。
年下のメッサー君(16)はおつむの出来が私とは違うので英語も日本語もバッチリなのである。いやー「10年住めば日本語わかるよ」って言われるけど、10年友達やってても英語わからんわ。

幼馴染は同じマンション、そして同じ階、さらにはお隣さんなのである。
なんだか懐かしい響きだ。

懐かしむ気持ちがあると言うことは、だ。
さてお気付きの方もいらっしゃるかと思うが、何を隠そう私は前世の記憶があるのである。そうです。Δ小隊にお世話になってた時のことです。前前前世的なあれです。
あれ?
私って死んだの?て言うかメッサー君も死んだの!?ってパニックになったよねー
そのへん全く思い出せないので割愛します。

仕方ないよね。
思い出せないんだもの。

私はメッサー君が覚えていないようなので私も知らんぷり。新しい気持ちで、現代のメッサー君として仲良くしてもらっている。

メッサーママはラテン系の超美人キャリアウーマンで、パパが日本人なのである。
メッサー君が美形なの頷けるね。
何故か性格は昔と対して変わらないのが不思議な事の一つなのである。
と言っても以前と違う事だってある。
呼び名が「もちこさん」だったのが「もちこ」に変わったのは嬉しい変化だ。
家族ぐるみでのお付き合いだってあるし、なんと高校だって一緒なのである。
あとは・・・うーん、少し細身かな?ガチマッチョから細マッチョになったくらいか。

同じマンション、幼馴染、学校も一緒とくれば登下校も一緒なのである。



さて。問題が起こったのはここからだ。

制服が冬服から割とラフな夏服へと衣替えする時期。季節の変わり目と同時に出産で英語の担当が変わると言うことで、今日がその初日。
高校3年で受験も控えていると言うのに担当が変わるなんてけしからん!産休なら仕方ないね。元気な赤ちゃん産んでくれ。

そんなことを思っていると、教室のドアがガラガラとけたたましく声を上げる。
校舎が古いからかな。

素晴らしく正しい姿勢で教室へと入って来たのは、金髪セミロングのモデルのような男性だった。
あれ?既視感・・・
そう思っているとバチっと青い瞳と視線が重なった。
と、同時に何故が物凄い形相で睨まれた。
何故・・・
いや、私を睨んだと決まってないし・・・

は、はははは


私の心配をよそに授業はスムーズに進み、終了のチャイムが鳴り響き、教室に賑やかさが戻る。

「そこのお前、もちこ・御手洗お前だ。ちょっと付いてくるように」
「えっ、は、はい・・・」
まさかの名指し
メッサー君に引き続きやっぱりΔ小隊の時の知り合いかなぁ
どんな確率だ奇跡か・・・


「お前、あの時の地球人だろう。あの時からお前の風は少し変だったが、なるほどな。こう言うことか」
「ええ、と。会ったことありましたっけ。」
「な、おま、お前っ、あの時の、記憶が無いのか?」
「あ、え、ご、ごめんなさいっあるにはあるんですけど、ちらっと見たことあるな〜くらいでして」

「ふん。まぁいいだろう。ここでは皆平等な様だ。教師と生徒として良き関係を築こうじゃないか。」

「ははは、よろしくお願いします。キース先生」

「ああ。よろしく頼む。・・・今世でのお前は好ましいな。」


適当な挨拶を終わらせ、教室に戻ろうかと思った時、ふいにキース先生が私の髪を撫でる様に触れる。
とっさのことに反応が遅れてしまったが、綺麗な顔をほんのりと緩ませ微笑む姿はまるでどこぞの王子様の様だ。
いや。王子様だったわけだけども。
うっかりそんな顔を間近で見てしまった物だからつい私も顔を赤らめてしまう。
それが滑稽だったのか、気分を良くしたのかさらに笑みは深まる。

数秒の出来事ではあったが、いくらメッサー君と言う美形と長年一緒にいてもなかなか慣れるものでは無い。タジタジである。
しかし急にキース先生の顔が私の後ろをギラリと睨む。

「・・・なんだ。あいつもいるじゃ無いか。」

喜ぶ様な、怪訝そうな、いろんな色を含んだ声だった。



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「よろしくね」

そう言って10年も前、俺の手を握り返したのは間違いようも無い、もちこさんだった。

俺がなぜ産まれ直したのかも、目の前のもちこさんがあのもちこさんなのかもわからないが、平成という時代、日本という国で俺は今生を受け暮らしている。
あの時の俺やΔ小隊のみんながどうなったのかはわからない。濃い霧が覆う様にその記憶は掘り起こすことができないのだ。
今ではそんなに気にはしていない。何故なら、もちこさんに時たま聞いていた話の中の世界で俺は生きているのだから。


最近思ったことであるが、このもちこさんはおそらく俺のよく知るもちこさんなのだろう。
言葉の端々にあの頃を思い出す様な含みを感じるし、聞きたそうにするときもある。

しかし俺はその事について知らぬ存ぜぬを通す事に決めた。
あの時のことを重ねて俺を見ればきっと弟だと、仲間だという枠にはめ込まれてしまう。
俺はそうはしたく無い。
真っさらな状態で一から関係を築いて見たい。名前を呼び捨てにするのも勇気がいったが、やっと慣れる事に成功した。
あわよくば彼女の人生を預けてもらえる様になりたい。
そんな欲深な心から、打ち明けない事に決めたのだ。


しかしどうだろうか

初夏、真新しい夏服を身に纏い、教室の移動をしている時に目に入ったのは、3年生の階の廊下で男性と話す彼女の姿はだった。
懐かしそうに愛おしそうに手を伸ばすあの男は

息が止まる様な、詰まる様な思いを殴り捨てる様に、思わず足が動いた。

あれは、
あいつは



「もちこさんを離してください。先生」
「あれ?メッサー君?」
めずらしいねここにくるの、と振り向きながらいうもちこさんに「ちょっと用事で」と、息が上がっているのを隠す様に早口につぶやく。

「久しいな。お前も生徒だったか。メッサー・イーレフェルト」

「・・・・3年の英語の教師なのによく俺の名前をご存知ですね。では。行きましょうもちこさん」

ついイライラと返事を返してしまった。別にこれで構わないだろう。なんせ俺は昔のことなんて覚えていないのだから。

「ちょっとまて。お前は忘れて・・・?」
ちらり、と白騎士がもちこさんに確認を取る様に目線をやる。困った様ににこりと笑うもちこさんも随分とお人好しだ。
この人はつい数秒前まで、貴方を自分のものにしようと企んでいたというのに。

それだけでイライラしてしまうのだから、俺も相当だ。

「忘れていようがいまいが、どっちでも良いが。キース・エアロ・ウィンダミアだ。覚えなくても良い。じゃあな、もちこまた英語の授業で。ああ、それ以外の時間も歓迎するぞ」

ふっと見下した様な笑みを浮かべる奴は今世でも何かと突っかかってくる

この男もきっとあの世界で1人、中立的で何者にも支配されない暖かさをもつ彼女に惹かれていたのだろう
しかし、そうやすやすと渡してやれない

「・・・もちこ、帰り教室まで迎えに行くから」

「わ、わかった。まってるね」


ふん。
これくらいはさせて貰わないと困る。
ほんの少し振り返ったあの男の驚きと悔しそうな顔。
付き合っていると勘違いしたならそのまましていてくれ。



横取りなんて、させない。
されてたまるものか。
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