メッサーとホワイトデー/メティス様






バタバタと過ぎて行く日々に、特に今が何年の何月何日で何曜日でなんの日だとか考えたこともなかったが、ラグナの人たちは違うようだ。
そりゃそうか。
私だって、何月の何日が何の日なのか気にはしていたはずだ。

ただラグナの記念日なんかは全く知らない覚えて行けないので放置しているだけなのだ。

しかし、このケイオスではその情報すらもお金に変わるというのでほぼ毎週、そして毎月、つまりはほとんど毎日忙しいのである。
お金大事お仕事大事お金大事なワルキューレなのである。








さてさて。
時はあの頃から流れに流れて、もとい、戻りに戻って2017年

春。4月。
春うららかな、桜舞い散る大学でまさかのメッサー君との出会いを果たした訳なのです。そして新入生歓迎会、サークル歓迎会、その他諸々、はじめましてよろしくねの儀式を終え、色めきだった校内が少々落ち着いてきた頃、思い出したかのように彼は言った


「もちこさん。バレンタインのお返しです」
「・・・・バレンタイン?」

はて。

差し出された小さくも上品な小箱に首をかしげる。バレンタインデー、それは2月の中旬にある、日頃の感謝をチョコレートに込め見たり、愛を込めて思いを告げて見たりする行事の1つだ。

しかし今は4月。
そしてホワイトデーも3月なのである。

傾き続ける私の首をそっと元の位置まで戻してくれるメッサー君・・・

いや、違う。違うよメッサー君
私はここで貴方に会ったのは4月なんだよ

「ああ・・・、すいません。昔に、貰ったでしょう・・・チョコレートクッキー」

「え、あ・・ああ!あの時!で、でもメッサー君あんまりバレンタインとかそういうのは知らないって言ってたから」

「いえ・・・その、あの時は何もせずすいません・・・知らなかったんですが・・・せっかく貴女に、もちこさんに会う事が叶ったのでお返しをしたくて・・・」

もらっていただけますか
そう言って差し出された小さな箱を恐る恐る受け取る。
チラリとメッサー君を覗き見るとホッとしたような表情だった。自分で言うのもなんだか物悲しいが、こんな平々凡々の象徴であるような私になにをそんなに良くしてくれているのかわからない。

メッサー君と言う人物をよく知っているが故に本当によくわからないのだ。

手のひらに収まる品がいいばかりか何故か手触りも良い小箱を開くと、そこには惑星のデザインをしたシンプルなペンダントが鎮座していた

鎮座とはなんぞと思うかもしれないが、こう言うプレゼントされ慣れてない私にはいい表現が浮かばない。

今まで見たことのある惑星のデザインのアクセサリーのどれとも違い、細かく彫られた模様が美しい。こんな小さな物だというのにどうやって作ったのかと思うほど。
それはもう本物を小さく小さくしてプレゼントしてくれたのかと思うほど。

そんな事出来るはずないのだけれど、なんとなく、未来の人間であったメッサー君ならやってしまいそうだな、なんて思ってしまう。

「ありがとう、メッサー君・・・でもこんな、こんな素敵な物貰っていいのかな・・」

「・・気に入って頂けたなら嬉しいです」

一体私はどんな顔をしてたというのだろうか。
私の顔を見たメッサー君は、ふ、と眉を下げて目を細めて微笑んで、私の手からペンダントを掬い上げるとあっという間に私の首に飾り付けていた。

「わ、な、慣れてるね。さすがは長身イケメン・・」

「は?言ってることがわかりませんね」

め、メッサー様が怒っておられる
恐ろしいであります
ほっぺを潰すのやめてくだひゃい


「・・・こんな事をするのは貴女だけですから」

頬を握っていた手を離し、スルリと私の頬を下から上へ撫で上げ、彼はふわりと笑った。
では、と颯爽と去って行ったメッサー君の背中を見つめていると急にかぁ、と顔に身体中の熱が集まってきた。


なんだ
なんだあれは
なんだ私は

まるで、まるで

ぐるぐると熱が回って思うような答えにたどり着けない
軽口を叩いていた口は息を吸いたいのか吐きたいのか迷子になってパクパクとどっち付かずの動きを繰り返してしまう。

彼の手のひらが触れた頬が熱い
彼の
メッサー君の体温がまだ頬に残っているような。

ざわざわと落ち着かない胸はどうしても落ち着いてくれない

上下する胸に触れる金属の冷たさに目をやれば、さらに上昇する体温に、どうにも支配されていく。

しばらくはこのペンダントのおかげで騒ぎ立てる胸を押さえつけるのは無理そうだ。






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「うわぁ〜、もちこやるなぁ〜」
「ひひ、ひゅー見ちゃった〜」

「え!?な、ち、ちがっなに!?」

「この大学の有望株はもちこに夢中とはなぁ〜出水くんびっくり」
「もちこちゃん見かけによらず手が早いな。この面食いっ」

「見てたの!?」
「って思うじゃん?」

「え?なんだ見てないんじゃん」
「ぜーんぶ見てましたー」
「なんだよ!」

「お前・・・見られたくないなら他所でやれよ」
「ほんとほんと俺らはそのおかげで面白いもん見れたけどねー」


はっ
そうだった!
ここは大学の学食だった!!

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正直言って、御手洗もちこという人間を美化していたと思う。

自分の中で絶対的に守らなくてはならない存在で、か弱く少しでも力を入れれば粉々に砕けてしまうほど脆いのだと。そう、決めつけていた。

実際はどうだろうか

あまりにも焦がれて
会える事を夢見ていた
この19年間で忘れたことなんてない
ずっと、ずっとずっと気がつくと探していた。いつでも。いつだって。

そしてやっと気が遠くなるほどの時間の中でやっと会えた

一目でわかった
思い描いていたよりかは、もしかしたら平凡な容姿だったかもしれない
思い描いていたよりも普通の人間だったかもしれない

それでもやはり
その瞳、その唇、その表情
1つ1つがじわじわとしかし急激にその存在を浮き彫りにし、その存在を感じられた時、確かな幸福感が胸を満たして行くのがわかった

痛いくらい胸が高鳴って
走り出した足は止まってくれない
息の仕方を忘れたように呼吸はできない
掴んだ腕はやはりしっくりと馴染むのだ

やはり彼女は、彼女で間違いない
俺が求めていたのは彼女で間違いなのだと確かにこの体が教えてくれる。




飲み会では少し、やりすぎてしまったかもしれない。

あの時はお酒なんて飲んでいないし、まさか酔ってなんかいるわけがない。それなのに紛らわしく、わざとらしく、ノンアルコールカクテルなんて頼んで、酔ったふりして、近づいて、迫って

反省の意味も込めて贈ったあの時のバレンタインデーのお返しであるペンダントは気に入ってもらえただろうか。

ペンダントだなんて重苦しいと思われただろうか。

彼女は優しく、意思は弱い方だ。
贈られたものをきっと捨てはしないだろう。

こんな事を考えているなんてバレたら、なんと意地の悪く計算高い卑怯者だと思われてしまうかもしれない。反省の色なんて全然無いと怒られるだろうか。

今しがた出た食堂を少し振り返れば、彼女の周りにはもう他の男が2人。
俺の知らない彼女の生活がここにはある。

アクセサリーは重い?
ペンダントは首輪か?

その光り物1つで彼女につく虫を払えるなら、どう思われたっていい。

彼女の胸元に光るペンダントについ頬が緩んでしまう。

自分が贈ったものを身につけてくれる幸運と幸福でジワリと身体が温まった気がした。

あのペンダントをもちこさんはどう思っただろう。小さな惑星を模したそれは、ラグナやあの時を思い出すのだろうか
ほんの少しだけの思惑は上手くいっただろうか。

嬉しそうにしてくれたあの顔を思い出す
涙が出るほどに、ふわふわとした暖かい幸福が纏わりついてくる。

昔を思い出し、悲観するよりも今を噛み締めるのに忙しいだなんてなんという幸福
柄にもなくせわしなく動く心臓に合わせるように、次の講義の部屋へ向かった。




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って思うじゃん?

でおなじみのワートリ槍バカこと米屋と弾バカ出水を出して見ました

本編とは全く関係ないです
なんならこの2人は高校生です

ワートリ好きすぎてつい。

知らない方はオリキャラと思っていただきたいです。
ALICE+